モバイル格安プランに思うこと

ソフトウェア開発がいかなる業種にとっても不可欠な事業要素だと考えていることは折に触れて書きました。
しかしながら、日本ではおもに初期開発としてのソフトウェア開発は「内製」されません。おそらくそれは「雇用法制」のためで、「外部委託」か「派遣」人員で賄うという形態をとる、とも考えています。
これは需要家(発注者)側からすれば開発チームをプロジェクト型で回転させていくので雇用契約の様式の違いこそあれやっていることに代わりはないように思えます。が、受注側、玉突きで行きつくところまで行くと「開発技術者」にとって、また現状ここにはらむ矛盾を吸収している「ソフトウェア開発事業者」にとっては大違い、です。
「ソフトウェア」には、「絶対的に」保守行為が伴いますから、保守となると「なおさら」です。これはいくら強調してもしたりないので何度でも書きますが「ソフトウェア保守においては、この "矛盾" はエコシステム全体にとって深刻な問題でその持続性を毀損しています」。

「矛盾」について記しておきます。
日本の雇用法制上、事実上解雇はできないのでプロジェクト型開発に必要な「属性選択型」とでも表現すべき開発人員の手配は業者または派遣人員の選択で行われますけれど、その「属性」を具えた人材の雇用の持続性は「事業者側」または「個人」が担保せざるを得ない、ですし、はたして担保できるのか?という課題があります。
この課題(疑問)について私は「懐疑的」な立場です。なぜかというと、「ソフトウェア開発におけるスキルの変遷の速さ」にあります。
これは「ソフトウェア」というものが本来的に持っている「相互依存の複雑さ」と「規格・標準化の難しさ」によると思います。OSや処理に適した言語の流行りは数年に一度起こります。新技術の登場、古い技術の陳腐化が早い。そこに生じる教育的なコスト、事業性維持と知財蓄積や雇用に生じるリスクはもっぱら専門事業者や個人が負っています。
これに対しては「雇用法制の修正」に向けてロビー活動を進めるべきだと考えています。(ロビー活動に対して、ソフトウェア開発業とくに通信業のそれはまとまりが極めてよくないのが問題だと考えています)
内製しないので保守できませんし、保守しようにも保守を担える事業体は体質がぜい弱であるか個人であるか、なので体系だった保守ができません。
さきほど述べたように、「開発したソフトウェア」が「正しく動く」ことを支えているのは「複雑に絡み合った複数のソフトウェア」でそれらはそれぞれが数年に一度、なので全体としてみれば一年に数度といった頻度で「変化し」「動かなくなっている」のです。これが「保守」ですがそれができないわけです。
これほどまでに重要な「ソフトウェア」技術ですが、それに見合う市場評価がされておらず、技術者確保ができない、というのがラスボスです。
とくに「設備から、薄利を多売するモデルの、通信業界」ではきわめて顕著です。

それともうひとつ、とても大事なことなので付け加えておきたいのですけれども、キャリアさんには「ユニバーサルサービス」という概念が存在します。これを法制度として負担するのは一部の回線事業者さんだけですが、業界全体がその矜持を持っていますし、顧客もそれを当然として回線事業者を評価する基準にしているように思います。ですが、ユニバーサルサービスを維持するにはとてもコストがかかりますし、コスト負担も不「平等」に見えてしまいます。ユニバーサルサービスを維持できるかどうかは結局市場の成熟度に関わる問題だと考えています。

日頃こう考えている私は、昨年後半から活発になっているモバイル事業者さんたちの「格安プラン」の報道をとても複雑な気持ちで見ています。

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