「開発力」を提供する事業を繰り返す

開発力を提供する、という事業は基本的には短期・単発事業なんだろうと思います。
ですから、資本主義経済下の事業体としては資本は短期の収益改修を望むでしょうし、短期であるがゆえにやや大きめの増殖を期待するかもしれません。そうしないと短期事業で資本が集まらないように思われます。そうなると経営者に与えられる選択肢は近視眼的なものに限られる。また経営者を含み、執行に携わるひとたち、なかんずく技術者の報酬は割高にならざるを得ないでしょう、身分保証が短いわけなので。まあ、そのあたりは契約上の力関係によるのでしょうけれど。
そして、対象事業が終了したら精算して解散する。
「開発力を提供する事業」の場合、利益が事前の想定を上回ることは「ありません」。
開発力を提供する事業そのものは売上上限が事前に定められています。なので支出が予定通りなら利益を上振れさせる売上の増加が見込めない。
いや、そうと断言すると語弊がありますね。事前の想定を上回る利益を出すには支出を抑制すればよい。健全な理由だと「開発資材の調達価格が事前想定を下回った場合」などですが、当業界の場合は「人件費」です。経営者として、この費目で事前想定を下回る健全・誠実な方法がとれていれば良いのですが…。
でも、狙ってそんなことできるでしょうか。最初から狙ってできたとすればそれは事業見積の段階で「執行部門が経営部門を」「経営部門が資本部門を」騙していたということでは?支出が事前想定とぶれるのは為替や紛争など不可抗力的な外的要因でしょうし、経営者としては自身そうあるべきかと思います。
当業界の商慣習についてここでも何度か触れたのですが、「開発」について見積もりから発注まで大きく時間が空いていても先行した見積もりを変更することは想定されていない、また「開発後」つまり事業清算時に支出の変動を売価に転嫁することもほとんどありません。単発・短期の事業としても損な役回りな気がします。まぁ開発に後続する、継続事業のようなリスクを負わない、いわば確定売上のためにする事業なのでそこは割り引かねばならないということにはまったく同感ですが。

さて、開発力を継続的に保有して繰り返し開発力を提供する事業体、というのは成立するのでしょうか。そうして四半世紀になる私が言うのもなんなのですが、考察を深めるほど無理筋に思えてきます。
ですが四半世紀続けてこられました。
「開発需要」というものが無尽蔵であることは疑いがない、一方、その需要に適応する供給体制というのはたいへん難しいものがあります。とくに現在広く普及し世界標準となっている経済構造では。
さてさてどうしたものか、と考える日々です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?