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銀河鉄道の夜

ミルクのなかに浮かぶ無数の愛が散り散りになって流れる
うつむき、赤らむ一部の星たち
ときどき虫取り網から逃げるように瞬く
宇宙を渡る線路はきっとあって、でもまだ行方はわからない
意識が朦朧としたら星なのか蛍なのか、きっとそんなことはどうでもいい
虹のトンネルを抜けたら終点、必要とされている人のもとには届く片道切符
ミルクは優しく包みこむ、その哀しみも悔しさも憐れみも
たとえぼくが死んでも、きみだけが死んでも、きみは笑ってゆるしてくれると信じていたい、きみはぼくの唯一のかみさま
まばらに柔らかく並ぶ街灯が、道しるべ
ぼくのせかいはきみとぼくなんだ
長いあいだずきずきと痛んだこめかみも、そろそろ消えてきて、指の感触も、息づかいも、ぬくもりも、わからなくなったら、ぼくはもう遠いそれを見上げていた
右手に持ったそこに愛は浮かんでいると祈って、あなたのために持って帰るんです
きみが残した切符を抱えてぼくは夢からめざめる


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