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大企業との事業提携が成功し、NOINの売上を10倍にした4年目【ノインの歴史③】

ノインの第1号社員であり、現在、総務人事部の部長を務める土屋 輝章(つちや てるあき)さんに聴く、「ノインの歴史」シリーズの第3回です。今回はコロナの直撃を受けた2020年に決まった、2つの大きな事業提携についてです。売上を10倍に伸ばしたこの1年間の活動がよく分かります。


前回のあらまし:
激動の2019年を振り返りました。組織づくりの課題が続出するなか、ひとつひとつ解決することを通じて少しずつ組織が出来上がっていきました。他方、将来の成長を考えた意思決定として、プロモーション施策を取りやめ、主力商品の取り扱いも中止した結果、成長スピードの鈍化や売上の減少に苦しんだ1年でした。
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2020年4月から様々なことが大きく動いた

――2019年の下半期は売上の減少が続いたというお話が前回のインタビューでありましたが、そこからどのように回復していったのでしょうか?

売上は年が明けて2020年の1月に底を打ったんです。ここからはもう上がるしかないという状況になったので、お取引していただけるブランドさんの開拓と、プロダクトの機能面の改善、そしてユーザーさんに丁寧に向き合うことの3点に注力しました。

ブランドさんの開拓に関しては、2019年の年末に資生堂さんとKOSÉさんとのお取引がスタートしたのは前回のインタビューでお話した通りですが、2020年3月にオルビスさんとのお取引も開始することができました。

2020年の2月3月は「資生堂やKOSÉと取引しているなら」「並行輸入品なくなったなら」と有力ブランドさんとの交渉も進むようになり、取り扱い商品のラインナップが劇的に伸びていったタイミングでもありました。

化粧品業界のトップブランドさんたちに認められるサービスになったことを肌で感じながら仕事ができている、そんな2020年のスタートでした。

――2020年は3月4月頃からコロナ禍で色々な影響があったのではないかと思いますが、どうだったのでしょうか?

ノインはECサービスなので、コロナ禍で劇的にECが伸びたという側面はあります。一方でコロナの直撃を受けた瞬間は一歩立ち止まり「これから本当にどうなるか分からない。事業的にも必ずしもプラスばかりではない。冷静になろう」という話をしたのを覚えています。そこで、「EC事業を圧倒的に伸ばそう」「非連続的な成長を実現するようなミラクルな事業提携を決めよう」「そしてコスト構造をさらに改善しよう」という目標を決めました。

編集部メモ:
それまでの延長線では達成できないような成長をのことを「非連続的な成長」と言うそうです。スタートアップの世界ではよく「非連続的な成長」という言葉が用いられます。

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――具体的にはどのようなことをしたのでしょうか?

まず足元の売上を伸ばさないといけないのでキャンペーンを企画するのですが、この時に生まれた施策が「ニコニコNOIN」です。毎月25日、26日はNOINのアプリからお買い物をすると最大25%のポイント還元を受けられるというキャンペーンです。ネーミングにもこだわりました。千葉曰く、ちょっとこダサい名前のほうが記憶に残るとのことです。

ストーリーとユーザーのマインドを捉えたうえでのキャンぺーン設計が、これまでで一番うまくいったのがこの「ニコニコNOIN」です。毎月25日になった瞬間に「そうだNOINの日だ」と思い出すタイミングを作れるようになり、そこを軸に他のキャンペーンを組んでいくことが戦略的にできるようになりました。ノインのマーケティングのレベルがひとつあがった瞬間だと思います。

また、役員である渡部と千葉、とくに渡部が非常にうまかったのが非連続な成長を実現するための事業提携の交渉です。結果として、大丸松坂屋さんとの提携が決まりました。

資金調達で伊藤忠さんに参画していただいたのも4月のことです。この出資を機会に伊藤忠さんからご紹介いただいたファミリーマートさんにプライベートブランドの提案をさせていただいてうまれたのがsopoです。このsopoの開発も渡部が中心になっています。

このあたりは事業としての最高の種まきができたと思います。


ホームラン級の2つの事業提携に全社を挙げて奔走

――大丸松坂屋さんとの提携について、詳しく教えて下さい

大丸松坂屋百貨店との提携はノインにとって社運を賭けたプロジェクトになりました。

化粧品業界のなかでEC事業者がお取引を実現するのが一番難しいのがハイブランドさんです。百貨店で販売されているコスメのことですね。デパートでしか売られていないから「デパコス」と呼ばれます。百貨店または百貨店が運営するオンラインにしかないこと自体も価値であるため、こういったハイブランドのアイテムは本来、ドラッグストアや通販に存在してはいけないわけです。

そのようなハイブランドさんに認めていただき「NOIN」で取り扱えるようになったということで、本当に風向きが変わったと感じています。我々はハイブランドさんとのお付き合いを始められるまでにあと1~2年はかかるだろうと考えていたのですが、そこが実現できたのは多少なりともコロナの影響があったからだと思っています。よく決まったなと今でも思います。

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5代目原宿オフィス。二大ホームランの背後で移転プロジェクトもやりました。

――事業提携が決まってからの社内の動きを教えて下さい

大丸松坂屋百貨店が運営するオンラインコスメセレクトショップ「Amuse Beauté Online(アミューズボーテオンライン)」のタブをNOIN内に設置して、そこから「Amuse Beauté」で取り扱っているハイブランドの商品を購入できることになったのですが、このプロジェクトのスケジュールが本当にタイトで、ノインとしての大きな山場を再び迎えることになりました。2020年の夏のことです。

会社中のすべてのリソースをこのプロジェクトに投入して、ほかにどんなトラブルが起こっても一旦目をつぶるしかないくらいのつもりで臨みました。コロナ禍で先行きが見えなかったため積極的な採用もできず、限られた人員でのプロジェクトです。一番身を粉にして働いてくれたのは開発部やディレクターのメンバーですが、ロジもCSもデータ整備チームも頑張りました。交渉やプロジェクト管理に管理部門まで駆り出してまさに総力戦でした。

全社を挙げて取り組んで、「10月にリリースしたら休もうね」と言いながら、なんとか漕ぎつけた10月リリースでした。

――そのような状況の中、ファミリーマートさんへのプライベートブランド提案の話も同時進行されていたのですか?

Amuse Beauté Onlineのプロジェクトと同時進行していたのが、化粧品のプライベートブランド「sopo」のプロジェクトです。これも関係者とっては本当に大変なプロジェクトだったと思います。

化粧品の開発というのは普通は構想段階も含めると1年かけたりします。ところが、ファミリーマートさんとの提携が決まってから、sopoのリリースまでは6か月を切っていたという状態でした。社内的にも大変でしたが、製造してくださったOEMの会社さんにとってもとんでもないスケジュールで、無理矢理お願いして叶えていただいた面があります。社内だけでなく社外の協力者の方に対しても感謝しかありません。

――しかもその裏では、広告売上が最高記録を更新したと

はい、そんなめちゃくちゃ状況の中、2020年10月は広告事業としては当時の過去最高記録である売上を達成しました。前月までの平均の3倍以上の受注に成功し、まさに大量受注。この対応で営業チームやコンテンツの制作サイドも大忙し、あっちもこっちもてんやわんやの状況でした。

大丸松坂屋さんと提携したAmuse Beauté Onlineのリリースが2020年10月で、NOIN史上初めてデパコスを販売できるようになりました。
ファミリーマートさんと提携したsopoの発売が2020年11月で、全国のファミリーマート16600店舗にsopoが並びました。
この2本の特大ホームランと広告事業の躍進はノインにとって本当に大きな結果につながり、最高の年末を迎えられました。


事業提携が成功し、売上も上昇

――大丸松坂屋さんとの提携の成果はどうですか?

結果を簡単にまとめると、いまNOINで売れ筋の上位10ブランドのうち半分はこのとき大丸松坂屋さんから入ってもらったデパコスで占められている状況です。NOINは若い世代の女性ユーザーが多いですが、NOINをはじめたころから我々が言っていた「NOINでプチプラ買って貯めたポイントでデパコス買えたら超いいよね」「初めてデパコス買ったのNOINなんだよね」を叶えることができています。

百貨店が家から遠い。百貨店の列に並ぶのはハードルが高い。そのような女性の方はすくなからずいらっしゃいます。そういう方に手軽に憧れのアイテムを試せる場を用意できるようになったと思いますし、数字にもその成果が表れています。

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――sopoのほうはどうでしょうか?

sopoも異例の大ヒットを記録しています。化粧品業界では、100万本売れれば誰もが知る、ロングセラーということになるのですが、発売初月で10万本を記録しました。2021年6月時点で50万本を突破しており、今も売れ続けています。このまま1年間売っていけば100万本が見えてくるという状況です。sopoはおそらく数年間化粧品業界で残っていけるブランドになるだろうという好調なスタートを切り、非常に大きなニュースになりました。化粧品業界を取材している記者さんからは「このコロナ禍で一番びっくりしたニュースのひとつ」と言っていただきました。

初速がとんでもなくよかったことで、次の商品のリクエストを発売間もない2020年11月にいただきました。再び6か月を切った状況でのプロジェクトスタートでしたが2021年3月末に新商品を出すことができ、大成功と言えます。

――これらの展開を通じてECの売上が10倍になりましたが、改めてその要因を振り返るとどのようなことが言えますか?

キャンペーンの精度があがったことで、NOINを使って毎月お買い物してくださるユーザーさんを多く獲得できるようになったことが土台にあります。そこに新商品、とくに人気アイテムの取り扱いを増やすことができたというのが大きかったです。

また採用もかなり寄与していると思います。優秀な、事業の核になるような方にどんどん入社してもらえたので、組織としての力のようなものも大きくアップできたことが結果として表れていると感じています。

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6代目、代官山オフィス(現在)。初めてのがっつりオフィスビル。綺麗でめちゃ嬉しい。


IPO、海外展開...夢は大きく持って

――これからのノインの姿をどんなふうに考えていますか?

まずIPOはしたいと考えていて、社内の重要なマイルストーンのひとつに組み込んでいます。

なぜIPOかと言われれば、現状にまったく満足していないということが前提にあります。2本の事業提携は確かにうまくいきましたし、事業も売上も伸びたことは事実です。数字を見れば喜ばしい状況ですが、我々が目標としているところの10%にもきていないんじゃないかというのが正直なところです。

化粧品業界の今後を考えていくと、今はオフラインでの販売が94%と大きな割合を占めています。資生堂単体で見るとコロナでEC化が進んで通販の割合が25%程度まで上がった例もあるのですが、EC化がまったく進んでいないブランドが大半です。マーケットの状況が整っていないというのが現状です。しかしながら今後、個人的にはEC化率は現状の6%から、25%くらいまで上がるだろうと思っています。

つまり、化粧品業界のマーケット全体のサイズは変わらないものの、オフラインだったものがオンラインに移っていくと思うのです。オンラインに移行していく部分の金額規模は数千億円くらいあるので、そのマーケットをノインでしっかりリードしていきたいと思っています。

ビジネスチャンスが大きいのはいいことですが、基本的にはノインがどれだけ素晴らしいサービスをつくれるか、そして多くのお客様を集客し「オンラインの買い物楽しい」と思っていただけるかが勝負です。そのためには「優秀な人材の確保に必要な人件費」「ユーザー獲得のためのプロモーション費用」「海外進出や新規事業の初期投資」などの資金が必要なため、資本市場から大型の資金を調達する必要があると思っており、IPOを目指してます。

ちなみに渡部は、2021年の1月からグローバル展開が口癖のようになっていて、「日本一になるのは当たり前。世界を目指すんだ」とずっと言っています。ノインとしてもグローバル展開は来年か再来年、もしかしたら今年(2021年)中に着手するかもしれませんが、いずれにしろ事業戦略としてしっかり視野に入れて目指していきたいと思っています。

――3回に分けてノインの歴史を教えてくださりありがとうございました。最後に読者の方に一言お願いします

ノインの社員1号として創業当初から見てきましたが、スタートアップは本当に大変だと思っています。つらいことしかないくらいです。でも年に1回か2回ほどものすごく嬉しい瞬間が訪れます。私自身それが楽しくて病みつきになって続けているようなところがあります。

過去でいえば、自分の会社でアプリが出たこと、CMを打ったこと、資生堂やKOSÉの商品が入ってきたこと、デパコスが入ったこと、プライベートブランドが全国のファミリーマートに展開したこと、などです。ファミリーマートに行って本当にsopoが並んでいるのを見たときは嬉しかったですね。そういうことがあるのがスタートアップの醍醐味です。

そして、今まで以上に嬉しいことがこれからも毎年必ず作れるので、それを一緒に体験してほしいと思っています。私自身もまだまだずっとノインでがんばっていきたいと思っていますし、若かったらもっと早く入社したかったというくらいの良い会社だと思っています。

スタートアップなので自分に合う合わないというのはあります。ハードな体験をしなくていいと思えば、また別の道があります。スタートアップは経験しなくていいくらいつらい体験をすることも確かにあるんですが(ここに書けないハードなこともいっぱいありました)、その反対側ですごく嬉しいことも稀にあります。それを顔の見える数十人でやり遂げた達成感はとても大きいです。そしてそれを経験するなかで驚くべきスピードで成長できます。そういうジェットコースターのような人生を歩みたい方は、ぜひカジュアル面談やってますのでご連絡ください。


編集部から:
社員第1号として入社し、創業当時からすべての歴史を知っている土屋さんに、3回に分けてノインの歴史をお聞きしてきました。いいことと悪いことが交互に訪れる、本当にジェットコースターのようなノインの歴史ですが、大変な場面をひとつずつ乗り越えてきた経験を聞いていると、これからもどんなに大変なことが起こっても乗り越えていけるという前向きな気持ちが湧いてきます。こういう環境で働きたい方はぜひエントリーしてください。

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