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プロダクトが業界に歓迎されなかった1~2年目。そして売上爆発からのサービスの崩壊まで【ノインの歴史①】

「ノインってどんな会社?」「どんな歴史があるの?」「創業したばかりの頃はどんな感じだったの?」ノインに興味を持ってくださりありがとうございます。過去の話って気になりますよね。今回は、ノインの第1号社員であり、現在、総務人事部の部長を務める土屋 輝章(つちや てるあき)さんにお話を聴きました。入社の経緯、創業時に考えていたこと、サービスが大きくなるために経験した困難についてなど、創業以来の歴史を聞きました。3回シリーズでお届けする「ノインの歴史」シリーズの第1回です。



第1号社員から見た創業期のNOINとは

――土屋さんのご経歴を教えて下さい

前職は転職を支援する人材紹介会社に新卒で入社しました。現場のコンサルタントを経験したのち、管理部の経理チームに異動し一連の経理業務を担当しました。その後は予算や開示などを担当しており、管理会計が得意分野です。JASDAQ(ジャスダック)から東証一部に市場変更する際のプロジェクトのリーダーの経験もあります。ノインに入社してからは4年半、借入や資金繰り、採用や給与計算など管理部全般を担当してきています。

その会社からノインの創業当時の第1号社員として入社しました。初めての転職がノインということになります。

初代のオフィスはこちら。恵比寿の小さいマンションの一室。トイレの音が筒抜けでした。

1枚目

――上場企業の管理部門から設立間もないスタートアップであるノインにジョインしたということになりますね。いわゆる「大手からスタートアップへ」という決断ですが、どういうきっかけがあって入社したのでしょうか?

創業者であり代表でもある渡部とは、もともと大学時代からの知り合いでした。渡部がGREEで新規事業をいくつか経験したうえで、フリーランスとして独立する時点から起業の話を聞いていました。

彼はGREEを辞めて会社を登記するまでの2年間、スタートアップの取締役だったり、上場企業の新規事業担当だったり、色々な仕事をしていました。その時代の彼の経理をお手伝いしていたので、小さな会社を経営する程度の収入があることは入社前から知っていたので安心感はありました。

そのなかで「やりたい事業が決まったから一緒にやらないか」と声をかけてもらったので、ジョインを決めたというかたちです。創業は2016年11月ですが、個人的には2017年4月に入社することになります。

――転職を誘われた際に断る選択肢もあったと思いますが、断らずにジョインした決め手は何だったのでしょうか?

「イチから会社を作るプロセスに携われる」というのに憧れがあったというのもありますが、一番大きかったのは渡部の存在です。出会った同世代のなかで渡部が一番仕事ができると思っていました。一緒に働いたら自分の成長につながりそうだな思ったのが最大の決め手ですね。

コスメ市場に参入。最初に取り組んだのはコスメの購入をサポートするアプリ

2枚目

2代目の六本木一丁目オフィス(マンション)はこちら。引越し初日で机散らかってます。

――最初にノインが取り組んだのはなんだったのでしょうか?

2017年の夏ごろからコスメ版の価格比較アプリの開発に着手しました。そのアプリを初めてリリースしたのが同年の10月です。

商品の購入をサポートするという発想からアプリを作りました。楽天、Amazon、Yahoo!の商品データを比較し、ほしい化粧品が今、いくらで購入できるかがリアルタイムにわかるというサービスでした。

――最初にアプリに取り組んだのはどういう理由からでしょうか?

コスメ業界においては、ユーザーとブランドの情報のギャップが非常に大きい、言い換えれば情報のコミュニケーションがうまくいっていないという問題があるという風に分析をしていました。この市場は渡部の今までの経験の強みである「スマホアプリ×情報最適化×コンテンツ」が生かせる領域と考えました。

またコスメのオンライン市場の大きさと将来性というものを強く意識していました。業界全体の市場規模が大きいにもかかわらず、化粧品といえばこれというようなECサービスがない。ファッション業界と比較しECがかなり遅れているように見えました。しかも大手フリマアプリの売買のなかでコスメの流通量はかなり上位に位置しており、コスメのEC市場は必ず作れるし、その規模がとても大きいと確信してサービスをスタートしました。

――アプリをリリースした後の反響はどうだったのでしょうか?

ユーザーさんからの反響はすごく良かったです。ダウンロードの初速の伸び方もすごかったですし、プロモーションコスト(CPI)も驚くほど低い数値が出ました。一般的な数値の1/5~1/10くらいの価格でユーザーが獲得できていて、これはすごいことになると社内はかなり沸きました。数字が間違っているんじゃないかとFacebookに問い合わせをしたくらいです。この時にオンラインでも化粧品は売れるという確信を得ました。


ユーザーとブランド双方にとって良いサービスを作ることが大切

――それほどの反響のあった価格比較アプリですが、現在はECアプリに形が変わっています。どういった経緯で変えることになったのでしょうか?

化粧品のECというのは最初から構想にはあったものの、いきなりは商品の仕入れができないことは分かっていたので最初は価格比較アプリを始めました。

NOINのアプリ経由で多くのユーザーさんがこれだけ商品を買っているという実績が作れれば、ブランドさんとのお付き合いができて、商品の仕入れができるようになると考えていたのです。この戦略は半分正しくて、半分間違っていました。ただ、この道がなくてはNOINのECがスタートできなかったのは事実です。

ユーザーさんが集まってDL数が100万を超えたあたりで、2018年8月にEC機能をリリースします。当初考えていた戦略通り、ユーザー数が一定数いることと、NOIN経由での別ECサイトでの売上が1億近くあったこともあり、ブランドの開拓は一定数できました。メディアを運営しているだけなら、そもそもお付き合いできないようなブランドさんの開拓ができました。しかしながらその後、ブランドの獲得は難航していきます。

難航した理由はブランディングです。価格比較アプリという形でNOINがそこそこ市場に浸透してしまったことがネックになっており、ブランドさんとしては許容できないサービスになってしまっていたのです。化粧品はブランディングが非常に大事な商材です。どこで安く買えるというセール情報と一緒に、大事な商品を並べるというのは、ほとんどのブランドさんにとって許容できないサービスでした。

本質的には我々が目指しているのは化粧品の安売りサービスではないものの、ユーザーやブランドさんからはそう見えてしまっていることが大きなネックとなりました。ブランドの責任者の方とお会いして我々が目指しているビジョンだったり、ユーザーへの想いを聞いていただくことで、「それならいいよ」といってくださるブランドさんは徐々に増えていっていたものの、開拓に時間がかかる状態だったのは事実です。当時よく「責任者のアポイントさえ取れて、直接お話しできればわかってもらえる」と言ってたのを覚えてます。

当時そんな中でも将来のNOINのことを信じて大事な商品を預けてくださったブランドさんにはとても感謝をしております。
結果として、我々はECリリース1年後に、価格比較という機能を全廃して、ブランドさんが参画しやすいUI/UX機能に変えていくという意思決定をすることになります。

――価格比較の全廃によってどのようなことが起こりましたか?

一部のユーザーさんにはこの意思決定は不評で、「昔のほうがよかった」というお問い合わせをいただいたのを覚えています。

ただ、ユーザーさんの声ももちろん大事なのですが、化粧品業界においてはブランドさんが何を大切にしているかというのをきちんと理解して、それに寄り添ったサービスを作ることがすごく大事です。

業界の中で認められてきちんとサービスを続けていくためには、ブランドさんとユーザーさんの双方にとっていいサービスを作らないと成り立たないということを学びました。今も経営陣全体で常に重要視しているポイントです。


注文が殺到して大変な状況に

3枚目

新宿御苑の3代目オフィスはこちら。年末には一面段ボールで荒れはてた姿へ…。

――少し戻りますが、実際にECをリリースしたことで売上はどうなりましたか?

結果としては想像をはるかに超える勢いで売上が伸びました。
EC機能をリリースしたのは2018年8月なのですが、その年の11月から12月にかけて3倍になり、12月から2019年1月にかけて3.5倍になりました。流通量でいえば、たった2か月で10倍に増加しています。

――売上が急激に伸びたことで問題も起こったそうですね

売上増加はもちろん目指していましたが、そんなに急に激増するとは思っていなかったため、配送周りやオペレーションに関するシステムが不完全で、効率化できる状況ではありませんでした。結果、配送の人員の手配や配送協力会社との体制作りなどが完全にパンクしてしまったんです。

大変申し訳ないことに、2019年1月は10日間程度の配送遅延を起こす状況になりましたし、送るべきものが入っていないというミスも発生し、キャンペーンの事故も重なり、ユーザーさんに大変なご迷惑をかけてしまいました。

社内的にも、配送にどれだけ社員を回してもまったく回らない状態になってしまいました。配送以外にもやらないといけないことはたくさんあったため、社員も休みなく働いて、組織としても崩壊していき、ノインの歴史の中でかなり辛かった瞬間です。

編集部から:
ノインの創業当時のお話を聞きました。いくつもの局面を経て、今があるのですね。次回は具体的にどう持ち直していったのかについて土屋さんに引き続き伺います。

続きはこちら↓

サービスと組織の崩壊を乗り越え、そして売上を7割捨てる意思決定から躍進の礎を築いた3年目【ノインの歴史②】


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