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サービスと組織の崩壊を乗り越え、そして売上を7割捨てる意思決定から躍進の礎を築いた3年目【ノインの歴史②】

いつもノイン公式noteをお読みくださりありがとうございます。今回の記事はノインの第1号社員であり、現在、総務人事部の部長を務める土屋 輝章(つちや てるあき)さんにお話を聴く、「ノインの歴史」シリーズの第2回です。

前回のあらまし:
2018年8月に化粧品ECプラットフォーム「NOIN」内でEC機能をリリースしました。同じ年の11月以降、注文量が対応のキャパシティを超えるほどに急成長。オペレーションが完全に崩壊し、社員総出で対応をしたものの、次々と入ってくる注文に組織が崩壊してしまったのでした。
前回の記事はこちら↓



人員の採用と仕組化で大量の配送を捌けるように

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年末に足の踏み場もないほど荒れたオフィス。唯一残ったソファでお昼休憩…。

――ECの急成長時、社内はどういった様子だったのでしょうか?

流通量が2か月でシンプルにほぼ10倍になりました。売上は、2018年11月から12月にかけてほぼ3倍に、12月から2019年1月にかけておよそ3.5倍になりました。

本当に嬉しい悲鳴ではあるのですが、その状況に対応できるだけの用意が整っていなかったため、結果的に1月は多くのお客様に商品を買っていただいたにも関わらず、最長で10日前後の配送遅延が発生することになってしまいました。

「なぜ届かないんだ」「なぜ発送されないんだ」といったクレームのご連絡も多くいただきました。できる限りお詫びはしたものの、大量の発送遅延を起こした事実は組織の苦い経験として残っています。そういえば、急に配送料増えたので郵便局からクレームをもらうという事件もありました。毎日、営業時間終了ぎりぎりの時間に大量に荷物を持ち込んでご迷惑をおかけしました。

――そこからどのように立て直していったのでしょうか?

その時まではCEO渡部のひとり役員体制でやってきたのですが、2019年3月にCOOの千葉がジョインして役員がふたりになり、渡部と千葉のふたりで会社を立て直していきました。

まずCSとロジスティクスの人員を採用していき、物量を回せるようにしました。一番の課題は発送のスピードでしたので、発送を担ってくれるアルバイトの方を積極的に採用し、かつオペレーションルールを整えていくことで効率化していきました。

また、ロジスティクスのシステムの基盤も内製していたため、まだ機能が足りない部分はエンジニアも手作業でデータを直接修正しなければいけない状態でした。人員リソースを手当てすることと、オペレーションを作っていくこと、そしてシステムを修正することを同時並行でかなりテコ入れしました。

組織づくりが会社の成長に効果を発揮

――CS・ロジ組織の立て直しが落ち着いた後は、大きな事件はなかったのでしょうか?

またすぐに事件が起こりました。これはお客様に迷惑はかけていないのですが、商品の発注数を間違える、大量発注事故が発生します。

注文数を一桁間違えて、しかも複数回発注してしまい、売れてもいないのに毎日大量の商品が届き、商品で倉庫が溢れかえるという事件がありました。商品が届くまで誰も気づかず、気づいた時には商品の搬入が止まらず呆然としました。

これは後任の方に引き継ぎのタイミングで起きました。担当者に依存することでオペレーションが成り立っているというのは、スタートアップあるあるかもしれませんが、この当時は商品の発注に限らず、全社的に担当者任せで成り立っていたことがほとんどでした。管理部門なんて簡単に人は増やせないのでしょうがないですが、私自身も自分が倒れたら会社の経費支払いと給与が止まるリスクを抱えていました。

こういった点についても仕組みやオペレーションのルールを整えていきました。発注はWチェックを入れる、一定の金額以上を発注する時には承認をとるというような、当たり前のことを当たり前にやる仕組みを作っていきます。

――オペレーションの整備のほかにもやったことはありますか?

劇的な成長が始まって将来のスケールが見えてきた頃に、直近1年間の人員に関する計画を渡部や千葉としっかり作りなおしました。

具体的には、このビジネスが本当にスケールしたら、どういう人をどういう順番で取るべきなのかについてきちんと考え抜いて、過去に考えていたことを見直しました。また採用の専任担当を採用し、HR系のプロフェッショナルに業務委託で入ってもらってHRの組織作りに着手しました。

その流れの中で課題として挙がったことが、「幹部層が足りない」ということでした。そこで、大手ゲーム会社の事業責任者や、外資系コンサルティング会社出身の方、監査法人→コンサルの経験を持つ会計士などに入社してもらい、組織を強化していきます。

あとこのタイミング(2019年4月)で新卒を採用したのですが、2021年の今になって最高の一手になっています。

――組織づくりの過程で難しかったことや壁になったことはありますか?

この時期の率直な実感としては、目の前に壁しかないような状況でした。ただ、いま振り返ると、初めて会社という組織を作っていく一歩を踏み出した瞬間だったのかもしれないと思います。

担当者に任せきりにしないでWチェックする、重要なポジションに経験豊富な人材を置く、15名から30名に規模が拡大していく段階で、初めて組織づくりがやるべきこととして挙がった年でした。2019年のこの時点でこういった組織づくりをやっていなかったら、2021年の今もぐちゃぐちゃしていたと思いますし、スケールもしなかったと思います。

組織づくりをしたメリットは、会社全体として仕事のクオリティが向上することと、役員である渡部や千葉、とくに代表の渡部が、中長期的な戦略づくりや重要な交渉ごとに注力できるようになったことです。渡部を現場の業務から多少なりとも解放したことがその後のノインの成長に効いたと思っています。このころまで渡部が動画の編集とかCSの返信とかもたまにやってました。結構カオスです。本当にどうでもいい情報ですが、私は今も「当社で動画の編集が一番うまいのは渡部」だと思っています。


「会社全体を見る」ことを意識したある出来事

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新宿御苑の4代目オフィス。ここではオフラインイベントなども行いました。

――2019年の年初に一度組織崩壊が起きたというお話がありましたが、社員数が増えていく過程でトラブルはなかったのでしょうか?

事業がスケールして組織規模が拡大する過程で本社を移転しました。

何かを販売するためには、仕入れた商品を保管するスペースと梱包スペースが必要です。それなりの面積が必要な状況でしたので、本社は移転したものの、倉庫だけ切り離して別スペースにしたんです。

この体制でうまく回っていると思っていたのですが、いざ蓋を開けてみると倉庫で働いていたメンバーの中でのトラブルが深刻化してました。当時を振り返って「あの時はお互い本当に大変だったね」と話せるまでに関係性は回復しましたが、当時は最悪の状況でした。

倉庫の様子に関する検知が遅れたことが組織としては良くなかったと反省しています。規模の大小にかかわらずどのような会社でもトラブルは必ずおきます。物理的に完全に切り離したことで目が届かなくなったにも関わらず、目が届かなくなったことをどうカバーするかについて考えていなかったことがこのような事態を招いたと思っています。会社全体をだれかがちゃんと見るということが改めて意識された瞬間でした。

――この件はどのようにリカバリーしたのでしょうか?

業務自体の改善と働く環境の改善をおこないました。

やったことを具体的に列挙しますと、まず倉庫機能を本社に無理やり集約して全員が本社に出勤するようにしました。また部を二つのチームに分けてそれぞれ別のマネジメントを付けました。任せきりで負担になっていたオペレーションでも、やらないことを決めたり、効率的なフローに変えました。曖昧なまま進めてしまっていた仕事をきちんとルール化しました。

2019年の後半から年末までに徐々に回復していったと思っています。この当時大変な思いをしたメンバーが今すごく活躍してくれています。


事業のスケールを信じておこなった2つの重要な意思決定

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――組織に関する話以外に、事業面についてはどうでしょうか?

いま話した倉庫の問題は年末まで残ったものの、2019年の1月から6月までの半年間で組織の、特にリソースの課題は一旦解消しました。そして組織の課題が落ち着いた頃から、キャンペーンや施策周り、売上、EC周りを抜本的に変えるチャレンジをしました。またブランドさんとの交渉を大きく進めていくことになります。

その時やった大きなチャレンジの一つは、プロモーションの一環としてCMを打つことです。CM自体は物凄くうまくいきました。もしもう1回CMをやることがあれば同じものを踏襲する可能性があるというくらいの成功です。これは、もともとToCの女性向けサービスの経験がある千葉が、マーケティングの観点でかなり良いものを作れたことによります。彼はグノシーで細かい修正も含めて、CMを100本以上制作しているのでこの道のプロです。

この時もちょっとだけ発送がパンクしかけました。でも今回は狙ってやってたので前回ほどの混乱はなかったです。アルバイトさんと入社したばかりの千葉がいすを並べて梱包してました。社長だろうとCOOだろうと必要があれば梱包に入るのはノインの文化です。「商品の横で飲食するな」とアルバイトさんに千葉が怒られてて笑いました。(2021年の現時点では、配送作業は外注してます)

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COOの千葉(写真右)が梱包をしている写真です。

ただし、CMのパフォーマンスが良かったこととそのプロモーションのタイミングが正解だったかは別問題です。結果として我々はこのタイミングでプロモーション全般(SNS広告含む)をやめます。

――どういった理由からでしょうか?

当時は今と比べると取り扱っている商品が少なかったんです。その段階でプロモーションをしていたため、瞬間的には売れるのですが、その後一部の熱狂的なユーザーを除いてユーザーが購入があまり続かないという課題を抱えていました。マーケティング用語で言えば「LTVが高くない」状態です。

買い物をする時に自分の好きなブランドの無いファッションビルやデパートには人は行かないですよね。お目当ての商品を買いに行ったついでに他の買い物が発生するので、欲しいブランドがどれだけNOINの中にあるのかが、再来訪のためには重要です。まだまだ商品を取り揃えられるはずなので、今プロモーションを打つよりももっと後のタイミングで打ったほうが間違いなく効果の高いものになる、という発想がありました。後でプロモーションしたほうが投資効率が良いというのは、どんなサービスでもだいたい一緒です。

一方でユーザー数が一定規模存在しないサービスに、ブランドが参画するメリットがあるかというとNOです。ユーザー数とブランド数の関係は鶏と卵の状態にあります。そのためプロモーションをしながら、高速でサービス改善をし続けるということをこの時まで続けてきたわけですが、200万DLを超えユーザーさんにもブランドさんにも認知を取れたこの時点で、一旦プロダクトとして完成しきっていない、サービスとして完成しきってない現段階でのプロモーションは中止と判断しました。広告ではない方法できちんとユーザーを獲得できる体制を作るために、事業方針を大きく変えて、プロモーション以外に予算投下を全振りする意思決定をこのタイミングでしています。2019年8月のことです。

――事業方針を大きく変えるということですが、どのようなことをしたのでしょうか?

ふたつあります。
まずこのタイミングでWEBをリリースしました。我々がもともと強みにしているコンテンツの発信力とSEOで、WEBをきちんと育てて検索による自然流入でたくさんのユーザーを囲い込もうと考えました。これは時間がかかりましたが翌年ぐらいからかなり結果が出てきています。

もうひとつは年末に着手しました。1年以上交渉を重ねてきていた資生堂さんとKOSÉさんから遂に商品を仕入れられることになりました。それと引き換えに、それまで主力商品にしていた並行輸入品の取り扱いを全廃したのです。

編集部メモ:
並行輸入とは、海外ブランドの海外で流通している正規品を、国内の正規代理店を介するルート以外のルートで(つまり海外で購入して)輸入することです。

――並行輸入品の取り扱いを全廃したのはどういう理由からでしょうか?

並行輸入品は当時我々の売上の7割を占めていました。それを捨てる意思決定は経営的には非常に重いものでした。しかしながら、我々が大きくなっていくためには、ユーザーさんに素晴らしい体験を提供するだけでなく、化粧品業界のブランドさんとの関係がとても大切になると考えていました。

我々がどんなにいいユーザー体験を提供してお客様との良いお付き合いがあっても、並行輸入品の販売をしているということが化粧品業界にとってはネックだったのです。かなり痛みを伴う意思決定でしたが、将来我々がきちんと成長するために、足元の売上を捨てる決断をしました。

――いま、この当時を振り返ってどのように感じていますか?

プロモーションをやめたことと並行輸入品を全廃したことは、結果的に良い意思決定だったと思っています。

ですが当時は、プロモーションをやめたことでユーザーが減っていき売上も減少、さらには主力商品も捨てたわけですから、大変な痛みを伴いました。ノインのこれまでの歴史で最も成長が鈍化したタイミングだったと思います。鈍化どころか前月比割れがどこまで続くのかがわからず、かなり苦しかったです。

2019年はこういった波乱に満ちた年でしたが、一転して2020年は売上を10倍にしていく1年になりました。次回はその華やかなストーリーをお話できればと思います。

編集部から:
2019年は本当に大変な1年であったことが伺えます。難局を迎えるたびにひとつひとつ解決し重要な意思決定を繰り返して、着実に歩みを進めてきたからこそ今があるのだと感じました。次回は2020年の躍進についてお聞きします。

続きはこちら↓

大企業との事業提携が成功し、NOINの売上を10倍にした4年目【ノインの歴史③】


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