【ショートショート】「部下に託す思い」/入浴委譲
「お前にはまだ早いと言っているだろう!」
「私はこのためにこれまで頑張ってきました。必ず成し遂げてみせます。ですからお願いします!」
「ワシがどれだけ苦労してこれを手に入れたと思っているんだ!お前のような若僧にはまだ早いわ!」
「そこを何とか!お願いします!」
深々と頭を下げて頼み込んだとき、はずみで小脇に抱えていたカバンから中の書類が散乱してしまった。
「あっ!」
「何をやっとるんだ!これだからまだ早い……と……」
散乱した資料が社長の目に止まった。
「こ……これは……君がすべて集めたのか?」
「そうです。ずっと前から調査していました。だから……」
社長は目を閉じ、言葉を手で制した。
次の瞬間、部下を見るその目には穏やかな笑みが浮かんでいた。
「……行ってみるか」
部下の眉はパッと開き、表情は希望に満ち溢れた。
「はい!ありがとうございます!」
社長は部下の手をギュッと握り、思いを託す。
「頼むぞ。全制覇してして来い!」
「もちろんです!」
終
(410字+画像)
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