![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/27317234/rectangle_large_type_2_6429a038e9fcd81c9da6055623a853f1.png?width=1200)
ルクアオーサカの店員さん
私はモノが買えない。
詳しく言うと、必要なモノは買えるのだけれど、「欲しいモノ」が買えない。
私の「モノを買えない」レベル
モノを買えないって、どんな感じに買えないの?と想像がつかない人もいるかもしれないので、私の買えないレベルについてお話しておきます。
そっちの方が、私に商品を購入させた、
店員さんの凄さもきわだつはず……
🌼
ではさっそく、
服屋で気に入った服を買うのを想像して欲しい。
さて、あなたならどうするのだろうか?
自分の手持ちの服と合うか考えてから買う?
気に入った!と何もためらわず購入しちゃう?
値段と質を見てから買うか判断する?
私の場合はこう。
「3回この店に来て、それでも欲しいなと思うなら買おう!」
3回も来るんかい!と思うかもしれない。
しかし、私はウィンドウショッピングが趣味なので、短期間で同じ店に3回訪れるのはザラにある。
そこは心配ないのだが、問題はこの後で……
(この時点で十分深刻なのかもしれないが)
なんと3回、訪れても買わないのだ!
愚かな私は3回目に
「次に来たときに買おう」と言いだす。
4回5回目も、これを永遠にループし続け……
そうやって購入を先延ばしにしている内に、品が売り切れたり、店が潰れたりして取り返しがつかなくなる。
そのときに初めて「あのとき買えばよかった」と後悔する。
実に愚か、おバカすぎる。
「モノを買えない症候群」の私に購入させた接客術
舞台はルクアイーレの2階、Biju mam(ビジュマム)。
天然石のアクセサリーを取り扱う店である。
そこにはそれはそれは可愛い私好みのバンクル達があった。
(バンクルがわからない方はブレスレットに置き換えて読んでください。最近のファッション用語って小難しいですよね。私は"ズボン"を"パンツ"という風習に本当困っています。)
「これとこれ可愛いな。でも、どっちかになんて決められない。次に来たときにまだ欲しいなと思うやつを買おう!」
と思いながら通い続け、
気がつくと1年半以上が経過していた。
(自分で書いて思ったけど、長すぎ。どんだけ悩むの。)
購入を決めたその日も私は相変わらず同じようなことを考えながら、商品を眺めていた。
🌼
「何かお気に入りのものはございましたか?」
明るい調子で店員さんが私に話しかけた。
「欲しいのが5個ぐらいあって、悩んじゃってます。」
と私は苦笑いをしながら返事をした。
いつもなら、
「試し全部につけてみますか?」
「はい、お願いします。」
(全部試着)
「どれが一番気に入りました?」
「うーん、悩みますね、もう少し考えてみます。」
という流れで一人でしばらく考えた後、店を出る。
しかし、彼女の接客は少し違った。
「試しに全部つけてみますか?」
「試し全部につけてみますか?」
「はい、お願いします。」
(全部試着)
「どれが一番気に入りました?」
ここまでは同じ。
そうして私はいつものように、選びきれないですと笑った。
ここからこの店員さんのナイスプレイが始まる。
「じゃあ勝ち残り戦にしましょう!」
そういって、店員さん5つあるバンクルのうちの二つを取り出した。
そうして突如始まった、「バンクル勝ち残り戦」
ここで再び店員さんが私に話しかける。
「こっちとこっちどちらがいいですか?」
「どちらかというと、こっちですかね。」
私が答える。
すると店員さんは、私が選んだ方をそのまま、選ばれなかった方を他のものと入れ替えると再び同じことを問いかけた。
「こっちとこっちどちらがいいですか?」
「うーん、これならこっちかも。」
こんな感じでバンクル勝ち残り戦は進み、最後には全てのバンクルに勝利を収めたバンクルが私の手元に残った。
「決まりましたね!」
そう店員さんは言った。
私は心底驚いた。
超がつくほど優柔不断な私が何か一つを選べるなんて思いもしなかったからだ。
「あの……これ買います。」
もうこれは買うしかなかった。
ここで買わなかったら確実に後悔すると思った。
なぜなら、その最後に残ったバンクルは全てのバンクルに勝利を納めた最強のバンクルなのだから。
こうして、私はめでたく1年半も購入を渋っていたモノを手に入れた。
あっぱれ、店員さん。すごい、すごすぎる。
あんなにモノを買うことができない私が、まんまと買ってしまった。
後日談
あの日バンクルを買って、半年弱。私は今でもこのバンクルを買ってよかったなと思っている。買い物であんなに興奮したことも、買ったモノにこれほど愛着が湧いたことも私にとって初めての経験だった。
あの店員さんの正体は魔法使いだった。
彼女は、優柔不断な私に決断をさせ、そのうえ、このバンクルが私にとっての最強のアイテムだと思わせるという強力な魔法を私にかけた。
買った私はハッピー、大切に扱われてバンクルもハッピー、商品が売れてお店もハッピー。なんて素敵な魔法なんだ。
ルクアイーレは6月1日から営業を再開するそう。あの店員さんはもう働いているのだろうか。彼女は今日もまた誰かにあの強烈な魔法をかけているに違いない。
例の最強のバンクル
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?