見出し画像

腹の痣

「地図みたいでいいと思う」

妹が何気なく言った一言でわたしは酷く傷ついた。
妹が言う地図とはわたしの腹の痣の事である。言った本人が覚えているかもわからないような前向きな言葉がキュッと刺さって痛い。

《痣/あざ》
皮膚の一部が、周囲と異なる色だったり状態が違っていたりするものを一般的に痣という。

みんなと違う部分があるというのは想像以上に辛い。
本当のコンプレックスって口に出して言えない。コンプレックスはある?と聞かれても、ちょっと嫌だなと思うくらいのコンプレックスしか言えないものだ。

生まれつきある腹の痣は思春期のわたしをあらゆるシーンで苦しめてきた。体育の授業で着替えるときは絶対に見られないように、健康診断のときはできるだけスカートを上げて痣が隠れるようにした。ビキニも着れないし、へそ出しのお洋服も着れない。今まで何度もプールや温泉に誘われたが断る理由は上記の通り言えなかった。恥ずかしいだの日光アレルギーがあるだの(これは本当)理由をつけて絶対言わない。18のときに親にも言わず韓国でタトゥーを入れてそれらを断る理由を作った。

今の美容外科の技術ならレーザーで消すこともできるのかもしれない。ただ非常に残念なことに、わたしは卵巣に腫瘍ができてしまいちょうど痣の下を手術したのでレーザーで消すことに不安がありさらに酷くなったらどうしようとも思う。痣だけじゃなく傷だらけになったお腹はさらに誰にも見せたくなくなった。

きっと誰もがコンプレックスを持っていて辛い思いをしているんだと思う。でも当時のわたしにはそんなこと考えられなかったしどうでもよかった。自分のことしか頭になかったから。

でも、人生には傾向や気付きがある。わたしの場合は

・恥ずかしいもの程、知ってもらうといい方向へ動く
・たとえ自信があっても、謙虚な姿勢は貫くべし
・剥き出しのものじゃないと人は動かせないということ

色んな人と会い、沢山の成功と失敗を繰り返してこういう考えがキラキラと蓄積されていった^^

そして最近、素敵な写真家の方に被写体になってくれないかと依頼されたのでこの機会に痣を写真に収めてもらうことにした。他の人には何それくらいと思われるかもしれないがわたしにとっては大変な覚悟や勇気がいった。人生最大のコンプレックス。

しかも、撮ってもらうのがゴールじゃない。怖い。でも見せるべきだと思ったよ。認めてもらいたい。誰かを救おうとかじゃなく、認めて救ってもらいたい。

ミスiD2021を受けてからリアルで繋がりのない人達とツイッターやインスタグラムで関わることが多くなったということもあり(勘違いだったら本当に恥ずかしいけど)わたしのことを応援してくれる人も増えたように思う。
わたしの大嫌いな部分を好きだと言ってくれたり、綺麗だと言ってくれる人がもしいたら_!

わたしが大嫌いな痣を誰かは好きになってくれるかもしれないという邪な考えと、唯一無二のものはどんなものでも強いということを証明したい、同じようにコンプレックスを持つ人の視点が少しでも変わればと思う。

いつか妹がくれた言葉のように、この痣が人生の地図みたいになりますように。コンプレックスを超えて、わたしをどこかへ連れて行って。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?