あなたが読める字を書きたいはなし。

最近は中学高校とは違ってOneNoteを使っているおかげで字を書くことが減ってしまいました。私の字は変遷が激しく、一目見ただけでいつ書いたものかおおよそ検討が付きます。小学生のころは最初は楷書の教科書みたいな字体が褒められるのでそれを目指していて、途中から可愛い字を書くと憧れられることに気が付いて丸い字を書き始めます。中学生に上がってしばらく丸い字を書いていたら丸時のお手本のような字を書くTちゃんに出会い、私の丸字化は加速を極めます。それからしばらくしてインスタグラムが流行り始めると、筆ペンできれいな字を書いた投稿を目にすることが増え、憧れてまたきれいな字を書こうと字の矯正を始めます。そこで私がぶち当たったのが自分の字の癖があまりに強くなりすぎていて、直しようがなくなった現実です。

さて今回は私の字についてお話していくことといたしましょう。先述の通り私は小学生の頃は先生に褒められるようなはっきり丁寧な字を書いていました。幼稚園である程度はひらがなカタカナをマスターしていたこともあって、字を書くのに大して苦手意識もなく、読みやすい字を書いていたと記憶しています。

しかしながら小学生の二年生から少女漫画雑誌「ちゃお」に出会って私の字は変わり始めます。私は重度のちゃおっこでありましたから、絵やストーリーを楽しむのはもちろん、コマの中に書かれている漫画家さんの字すら愛していました。私が特に大好きだったのが八神千歳先生の字です。オレ様キングダムには大変にお世話になり、白馬凌くんに全生命をささげようと幼心から思ったこともありました。一色先生に全部持ってかれたこともありました。話がそれましたがそんなことからコマ中に書かれた八神先生の字をじっくりと見るようになり、

「あたしもやがみせんせいみたいな字がかきたい!」

と思ったわけです。そこから綺麗で力いっぱい書いていた字を丸みのあってかわいらしい字へと変えていきました。

そんなこんなで小学五年生になって、可愛い字を書く子が周りにはたくさん増えました。小学生から他人の字を見ることが好きだったので、展示物をガン見して自分の好きな字を見つけることを楽しんでいたある日、同じクラスの良く話すキスマイが好きなAちゃんの字が猛烈に好きだと気が付きます。それはもう読みやすいのにかわいらしいという何という欲張りハイブリットな字でありまして、次の目標はAちゃんの字となりました。放課後遊ぶことも多かったAちゃんからはかわいい字を書くコツを盗ませていただいたりなどしました。

そんなこんなで中学生になり、Aちゃんのおかげでそこそこ読める字を書きつつ生きていたらなんとAちゃん越えする可愛い字を書くTちゃんに出会います。Tちゃんはあまりにもキャラとして強い子だったのでその話はまた今度することとして、その子の字はあまりに私の好みをドストレートに刺激する字でありまして、私の字の指針というのはそこへと向かわれたわけです。途中仲の良かったMちゃんから紹介してもらった目黒あむ先生のhoneyという作品を読んであむ先生の字にもはまり、もう私の字のアイデンティティは完全に拡散して誰かの字によって構築されたキメラフォントが出来上がってきました。まるくて、「ま」とか「る」とかの丸い部分をつぶして、すこし斜めった私の字は先生を大変困らせるようになりました。それはもうひどく読みにくくなってしまっていたようで、私は気が付いていませんでしたが先生方は非常に苦労していらっしゃったそうです。私は理想の字を手に入れたつもりでしたが、どうやらそんなことはなかったようで、私の字は整形に整形を重ねて変な字になってしまいました。

やっと指摘されたのが高校二年生のころに修学旅行の文集のページを提出したときでした。先生は困ったように

「これ書きなおせない?あんたの字すごく読みにくいし詰まってるし小さいし、直した方がいい」

とバッサリ言われてしまいます。なんと!最高の字が完成し、自信満々となったマッドフォントイストだった私には非情すぎる一言でありました。大変困惑し、家に帰って一人で泣きました。「何が悪いんだこの字の~~~!!!!」と心の中で叫びつつ、Yちゃんに相談したところ、私の字が好きだと言ってもらえてなんだか鼻が伸びてしまったわけなんですが、冷静になって自分のテストの答案を見てみると、こりゃ読めないなと落胆するレベルで癖字になっていたこと漸く自覚したわけです。大学受験を控えていた私は大変に焦りました。そこで勉強垢として利用していたインスタグラムを見て綺麗で読みやすい字を探して、それはもう指摘するところのない手帳垢さんの字を参考にし、「あなたが読める字を書こうプロジェクト」が始まったのです。

しかしながらこのプロジェクト、簡単ではありませんでした。

キメラフォントは癖が強すぎたせいで直せど直せど斜めになります。打ちたいところに点が打てなかったり、綺麗にはねること、しんにょうを書くことができなくなっていました。困りました。そんな中で自分の字とはかけ離れた綺麗な字を書く子がいると気が付きました。それは中学一年生の頃に部活動が一緒で仲良くなったAちゃんです。Aちゃんはもう理想オブ理想の字を書く、OLさんみたいな字を書く子でした。

「これは勝った!!!!!!(何に)」

と勝手に確信し、ノートを借りたり話したりしながら字を凝視する生活を始めました。幸いこのころ高校三年生となり、字を書く機会はもう嫌というほどありましたから字を練習しながら勉強する毎日となりました。受験のことに関してはまたほかでお話しすることにいたしますが、このころの私は理想の読みやす字を書こうと奮闘するあまり頭に入っていなかったという失敗談をここでしておきます。二兎を追う者は一兎をも得ずでありました。まあそんなこんなでそこそこ読める字が書けるようになってきました。斜め字は直りませんでしたが、誰に見せてもそこそこ読まれるようになり、安心して受験して無事学力で撃沈いたしました。それから一年間は字を綺麗に書くよう気を付けなくてもそこそこの字が書けるようになっていたので勉強に集中してこう、大学生になったわけです。

大学生になって字を書く機会が減ってしまって悲しいですが、漢検の勉強で何とか字を書き続けることができています。いつか結婚式とかで自分の名前を出席で書くときに綺麗で素敵な字で書きたいなと思いながら、今日も字をまっすぐ書くよう奮闘する私でありました。


今回の見出し画像はみんなのフォトギャラリーから u_photooo さんの写真をお借りしました。雰囲気が素敵な写真でイメージぴったりでした。ありがとうございます!

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