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カワイイ子供服が着たかった

(約1,300字)

 私の身長は165㎝くらいなので、女性としてはやや長身といったところです。しかし、子供の頃は大柄なのがコンプレックスでした。

 とにかく体の成長が早く、小学校の高学年の時にはほぼ今くらいの身長になっていました。
 遠足の集合写真を父に見せたら、この女の先生はどこの担任かと指さした先には私が。親すら写真の中の自分の娘が子供には見えなかったくらい、デカかった。私は規格外の身体を持て余し、いつも窮屈でした。

 「大きいことはいいことだ」と無邪気に言っていられる時代は終わっていました。

 第二次オイルショックの影響で、エネルギーの節約が求められていたのです。私の身長が急速に伸びた頃、大平正芳首相は省エネルックを着用して省エネを呼びかけていました。

省エネルック姿の大平正芳首相
産経新聞(1979年6月6日)の写真
結局半袖の背広は普及しませんでした

 性能が同じなら、消費するエネルギーは小さいほうがいい。燃費の悪い大きな車よりも小型車が望ましい。なんか、「大きいことはよくないのだ」という空気を肌で感じました。大きさに見合った能力がなくてごめんなさいと、いつも肩身の狭い思いをしていました。

 それに、小さい子が頑張るとほめられますが、大きい子は何でもできて当たり前。大きいのに人並み以下のことしかできないのは恥ずかしいことでした。何かしくじったり、期待されていた結果が出せなかったりすると、「図体ばかり大きくて」と怒られました。別に好きで大きくなった訳ではないのに、そんなことを言われても困るのですが。

 少しでも自分を小さく見せたくて猫背になりました。今でも猫背のままです。

 しかし、一番困ったのは「着る服がない」ということです。昔はトールサイズの子供服などありませんでした。
 仕方がないので母がミシンで縫ってくれたこともありましたが、私の成長が早くてすぐにつんつるてんになってしまうからと面倒くさがられ、結局スーパーの衣料品コーナーで買ってもらった大人向けの服を着ていました(ユ◯クロや無◯良品など、年齢や性別に関係ない服が安く買えるチェーン店が広がったのはずっと後の時代です)。
 通学の時もおばさんぽい服装。で、ランドセルを背負って、髪はツインテール。そんないでたちの大柄な小学生なんて、傍目には相当不気味だったかもしれません(男子からは「ウルトラの母」と呼ばれていました)。

 だから、私が子供らしいカワイイ服を着ていた期間はかなり短かったのです。

 中学生くらいになると、同世代の身長が追いついてきて、体格で浮きまくることはなくなりました。制服がありましたから着るもので頭を悩ませることも少なくなりましたし。 
 着るものを全て自分で選べる立場になった時には、カワイイものへの憧れはなくなっていました。

 最近人形の服を買いに行きました。
 どの服もちっちゃくてカワイイ。

 ふと、着るものに困っていた少女時代を思い出しました。子供の時にこんな洋服着てみたかったな。
 歳をとって、それまで気に入って着ていたものが急激に似合わなくなってきました。自分も久々に服を買おうかと思います。

ピンクも色味を選べば大人も似合うかも




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