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Pink Floyd, "The Dark Side of the Moon" (1973)

ロック史上最高の完成度を誇る「狂気」な名盤。

ピンク・フロイドはその時期によって音楽性を変えるバンドで、1stアルバムはサイケ、その後はプログレへと進化していくのだが、やはり1作品ごとにコンセプトがしっかりしており、本作は全作作詞を手掛けたロジャー・ウォーターズの作家性が大爆発している。

4曲目の「Time」では、モラトリアムな時間に対する後悔のような歌詞、6曲目の「Money」では拝金主義に対する批判のような内容になっており、アルバム全体として歌詞に社会批判的な側面が多分にあり、邦題タイトルでもある人間のまさに「狂気」的な側面に疑問を提示するようなアルバムコンセプトとなっている。

では音楽的な側面を見ていこう。アルバムとして評価するには、その没入感が重要だと個人的に思うのだが(一気に全曲聴けてしまうような物語性)、まずは4曲目の「Time」に至るまでの前奏とも捉えられる様な1~3曲目の果たしている役割は大きい。「Speak to Me」「Breath (In the Air)」でリバーブを聴かせた空間的な音像から、次第にその輪郭を現し始め、「On the Run」では16ビートを刻むハイハット、エレクトかつサイケデリックな表現でどんどん聴き手を引き込んでいく。。。そこからの「Time」はまさに圧巻。。。

「Time」の後に「The Great Gig In the Sky」という曲が入るのだが、これがまた「Money」へのトランジションを上手く運んでいる。物悲しい雰囲気とソウルフルなヴォーカルでハイになった後、場面はベトナム戦争と高度経済成長(拝金主義)の1973年に引き戻されるのである。

こういうコンセプトアルバムは是非、全曲通して聴いてほしいところだが、このアルバムのポイントともなっている「Time」と「Money」が注目トラックになります。

ちなみにこのアルバムが録音されたのは、あのアビーロード! 初めてコンセプトアルバム的な手法で製作された「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」のビートルズへのリスペクトも見られますね。

2022/1/24(Mon) 2022年音楽レビュー#7

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