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たね袋の裏を読み解く 寒冷地・温暖地・暖地 うちはどこ?

野菜や花の種を買うと袋の裏に栽培ごよみが書いてありますね。種まきはいつ頃で,収穫はいつ頃でという表です。これを参考にして栽培の計画を立てることと思いますが,日本列島は縦に長いので同じ月でも場所が違えば気候条件が大きく異なります。

ですから大抵栽培ごよみには,暖地・温暖地・寒冷地などと気候区分ごとに記載されていることが多いですが,はてさて自分の土地がどの区分に入ってる?袋の裏に日本列島の絵があるけどだいぶ大雑把で標高差もあるからはっきりと分からない,という方も多いのではないかと思います。

野菜の作型に関する気候区分は以下のような定義です。

年間の平均気温によって区分されています。

具体的な地名で見てみるとどうなっているでしょうか。以下の表は気象庁の気象官署における平年値(1991年~2020年平均値)で分類したものです。

主要都市で一番多いのは暖地です。気候的にも生活しやすい暖地の人口が必然的に多くなるのでしょう。東京はちょうど真ん中あたりの15.8℃です。
また各都市はだいたい北から順に並んでいますが,標高もかなり影響していて,寒地はほとんど北海道ですが,軽井沢日光も入っています。そして九州にある阿蘇山は寒冷地に分類されています。
温暖地はよく見ると雪が多く降る地域も含まれておりほんとに温暖?という感じですが,夏はかなり気温が上がるので平均的に見ると温暖という区分になるのでしょう。気温の差が激しいところとも言えるかも知れません。
亜熱帯は南の離島は分かりますが,四国・九州の一部地域も含まれることになります。

上の表は最近30年間の平年値ですが,その平年値は10年に1回更新されているとうことは以前の記事でご紹介しました。


古い平年値(1981年~2010年)を使った場合の各都市の気候区分は下の表のようになります。

赤字の都市は10年間で気候区分が変わった都市です。
寒冷地~暖地の中間地域の境界線付近の都市がいずれも高い方にシフトしており,札幌は寒地から寒冷地となり,秋田・山形は寒冷地から温暖地に,そして金沢は暖地になりました。
温度の変動幅を見てみるとおおよそ0.2~0.3℃程度上がっていることになります。この10年間でもこれだけ変化しているのです。この傾向が続けば10年後には宮崎は亜熱帯に入っているかも知れません。

0.2℃の変化であっても野菜や花の栽培にとっては大きなものです。種袋に話を戻せば,気候区分が違えば栽培ごよみが月単位でずれてきますから,同じものを同じ場所で同じ時期には作れなくなります。産地が変わってくるのです。

このいわゆる温暖化は地球規模で起こっておりすぐに止められるものではありません。そこで種苗会社ではより高温に対応できたり,より栽培期間が短い品種が開発されており,この気候シフトに対応しようとしています。農業の現場でも栽培作物の見直しは常に行われています。

気候区分から最後は温暖化の話になりましたが,やはり気候の変化に一番敏感なのは植物ですから,適地適作という言葉があるように,きちんと育てるためには適した気候条件である必要があります。今いちど自分の住む土地はどんな気候なのか調べてみましょう。

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