梅の開花前線北上中 生物気象観測について

1月終わりの1年で最も寒い時期ではありますが,西の方から梅の開花だよりが聞こえてくるようになりました。2022年1月28日現在で下表のようになっています。

2022.1梅開花

全体的に平年よりやや早めといった感じでしょうか(一部にかなり早い地域があります。四国瀬戸内側早いな~)。

梅のゆっくり咲いていくさまは桜とは異なり,いかにも早春という感じを与えてくれます。そう!梅はゆっくりなんです。1月にスタートした梅の開花前線はゆっくりと北上し5月に北海道まで到達しますが,3月にスタートした桜に最終的には追いつかれてしまいます。

下表は梅開花日と桜開花日の平年値とその日数差を地点別に示したものです。九州で50日程度あったものが大阪では40日,長野・新潟あたりで20~30日(東京の梅は早すぎですが・・),秋田で10日くらい,青森・札幌ではほぼ同時です。


梅ー桜開花日差

気温で見ると梅が開花する鹿児島の2月上旬の平年値が平均8.8℃/最高13.5℃/最低4.7℃,青森の4月中旬が平均8.5℃/最高13.7℃/最低4.0℃とほぼ同じです。このことから梅は気温が一定程度になったら開花するということだと思います。ですから桜が追いつくというよりも,桜のスタートが遅いとうことです。

梅や桜はある程度の低温にさらされて休眠して初めて開花準備が整う仕組みを持っています。桜はその低温要求量が多く,北の地域ほど準備万端整っていますので一気に咲くようになります。
桜のようにエネルギッシュに咲き誇るためには,きちんと休んで力をため込んでおくことも必要なんだなと感じます。

このような梅や桜の開花に関する情報は気象庁が「生物気象観測」として発表しています。僕がこの秋追いかけていたいちょうの色づきについても同様です。

この生物気象観測ですが,2021年より大幅に削減されました。

植物生物気象観測

動物生物気象観測

植物で現在も残っているのはは梅,桜,あじさい,すすき,いちょう,かえでの5種のみ,お花見や紅葉狩りやお月見などどちらかといえばレジャー的な性格で我々の生活に根付いているものです。動物に関しては現在はどれも行われていません。

この廃止については批判の声も上がりましたが仕方がないのではないかと思います。正確な観測機器のなかった時代,特に農作業の指標としてこれら生物は気象状況を正確に伝えてくれるものでした。例えば梅が咲き,ひばりが鳴いたら春が来た証拠だから畑の準備を始めようとか,その土地に住む人たちにとっては重要な情報だったでしょう。

しかし今では気象状況はリアルタイムで誰でも手にできます。そもそもひばりの鳴き声ってどれ?でしょう。そのような時代にリソースを割いてこのような観測を続けていくことは,気象庁にとっても難しいことだと思います。Webサイトに広告を掲載するほど(こちらにも賛否ありますが)限られた気象庁の予算の中で求められていることは防災対応など現在の社会生活により密接に関連することです。

一方で学術研究的には長年継続してきた観測は1年でも途絶えてしまうとデータとして信頼性が大きく落ちてしまいます。そこで,この生物気象観測の廃止が発表された後からにはなりますが,国立環境研究所が広く一般に調査員を募集する形で観測の継続を図っています。気象予報士の団体気象予報士会の中でも有志グループが観測を継続しようとしています。

気象庁によるオフィシャルの観測が廃止された生物気象観測ですが,SNSが広く発達している現在,ネットワーク上のデータを収集することで調査員がいなくてもできるようにならないでしょうか。
実はいちょうの色付きについて調査している時,SNS上のデータ収集を試みたことがあったのですが,一般的なSNSは位置情報は主体的に発信しないと載りませんから,その場所がどこかわからず整理できませんでした。

でもなんだかできそうな気もします。できたら面白そうです。詳しい人教えて下さい!

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