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百人一首復習ノート:現代語訳、英訳、解釈とその感想(一、二)
普段、現代語で短歌を詠んでいるのであって、文語に親しみたいわけでも、文語で短歌を詠みたいわけでもない。けど、永く日本人の体に入ってきたリズムで、教養ある人が一度は親しんだ(無理やり覚えさせられた)歌に接することには、意味があることかもしれない。
教養としてではなく、自分の作歌の養分と作歌時のテクニックという実利を期待して、いまさらながら百人一首を復習してみようと思う。情報は、手元にあった百人一首の本三冊から。
noteで書くことに困った時にまとめようと思う。一つのnoteには、2首もしくは4首を取り上げたい。2首ずつ取り上げる理由は、百人一首が、二人ずつのペアが50組あるという作りだから。どうせなら、意味のあるペアの形でインプットしたい。それが連作を作るアイデアにもなるかもしれない。
一.天智天皇
秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ
わが衣手は 露にぬれつつ
(あきのたの かりほのいおの とまをあらみ
わがころもでは つゆにぬれつつ)
現代語訳
秋の田の 刈り入れ小屋は ぼろぼろで
わたしの袖は 濡れっぱなしさ
英訳
In this makeshirt hut
in the autumn field
gaps in the thatch let dewdrops in,
but it is not dew alone
that moistens my sleeves...
makeshift / ˈmeɪkˌʃɪft 間に合わせの, 当座しのぎの
hut / hˈʌt (掘っ建て)小屋、あばら屋、(山の)ヒュッテ、仮兵舎
thatch / θˈætʃ(米国英語) (屋根の)ふきわら、屋根ふき材料、草屋根、ふさふさした頭髪
dewdrop / déw・dròp dewdropの複数形。露のしずく、 露滴
mois・ten / mˈɔɪsn(米国英語)/ moistenの三人称単数現在。(…を)湿らせる、 潤す、 ぬらす
sleeve / slíːv(米国英語), sliːv(英国英語) sleeveの複数形。(衣服の)そで、 たもと
解釈
この歌は他の作品と比較しても天智天皇の歌とは考えられない面が多く、「秋田刈る仮廬を作りわが居れば衣手寒く露そ置きける」という『万葉集』の作者のない歌が一般に口誦流布するうち、変化したのか修正されたのか、冒頭の歌のようになって『後撰集』に収録された。
冒頭の天皇歌が稲刈の歌であるというのも真摯な情感があり、農耕とその祭祀の民族が、王朝を経つつ風流化してゆく過程もみえる。
感想
この歌は、天智天皇の歌とは考えられてないらしい。しっかりと日本の歴史を確認できそうな天皇の歌から始めたいという意図があるらしい。質感、生活感を感じる歌として覚えておきたい。
二.持統天皇
春すぎて 夏来にけらし 白妙の
衣ほすてふ 天のかぐ山
(はるすぎて なつきにけらし しろたへの
ころもほすちょう あまのかぐやま)
現代語訳
春すぎて 夏来たみたい 真っ白な
衣干すのね 天のかぐ山
英訳
Spring has passed,
and the white robes of summer
are being aired
on fragrant Mount Kagu---
beloved of the gods.
aired:乾く
解釈
初夏のみどりに飾られた香久山の薫風が、白い衣のなびきとともに伝わってくるようなこの歌は、原型は「春過ぎて夏来たるらし白袴(しろたえ)の衣乾したり天の香久山」で、情景は想像ではなく目前のものとして歌われている。
感想
一首目の天智天皇の娘である持統天皇の歌。英訳がとてもよく雰囲気を伝えていると思う。ただし、嗅ぐ(fragrant)とKaguが、ダブルミーニングになっていることがわからないのが惜しい。きっと翻訳には付きまとう問題だろう。英訳でよく理解できた歌。
※引用図書
『百人一首がよくわかる』
国語の教科書にあるような、文法的に正しい訳ではなく、短歌の長さ程度の軽妙な日本語訳と、短い解説書。
『英語で読む百人一首』
百人一首の英訳。古語や現代語訳より、歌の情景が浮かぶものも多い。
『百人一首 (平凡社カラー新書)』
馬場あき子先生の著作。ただし、教養としての解説であって、歌の解釈は短め。
いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。