![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/121225873/rectangle_large_type_2_eff9e42998ad44f58e4ddd2ded90d820.jpg?width=800)
百人一首復習ノート:現代語訳、英訳、解釈とその感想(四五、四六)
普段、現代語で短歌を詠んでいるのであって、文語に親しみたいわけでも、文語で短歌を詠みたいわけでもない。けど、永く日本人の体に染みついたリズムで、教養ある人が一度は親しんだ(無理やり覚えさせられた)歌に接することには、意味があることかもしれない。
教養としてではなく、自分の作歌の養分と作歌のテクニックという実利を期待して、いまさらながら百人一首を復習してみようと思う。情報は、手元にあった百人一首の本三冊から(『百人一首がよくわかる(橋本治)』『英語で読む百人一首(ピーター・J・マクミラン)』『百人一首 (平凡社カラー新書)(馬場 あき子)』)。
だいたい週一回、まとめている。一つのnoteには、2首ずつ取り上げる。2首ずつ取り上げる理由は、百人一首が、二人ずつのペアが50組あるという作りだから。どうせなら意味のあるペアの形でインプットしたい。歌をまとめて取り上げる作業は、連作を作るアイデアにもなるかもしれない。
四五.謙徳公(けんとくこう)
あはれとも 言ふべき人は 思ほえで
身のいたづらに なりぬべきかな
(あわれとも いうべきひとは おもほえで
みのいたずらに なりぬべきかな)
現代語訳
「どうした?」と 聞く人なんか いてくれない
このままむなしく 死んじまうのさ
英訳
"I feel so sorry for you."
No one comes to mind
who would say that to me,
so I will surely die alone
of a broken heart.
I feel so sorry for you / とても気の毒に思う
No one comes to mind who would say that to me. / 私にそんなことを言う人は誰も思い浮かばない。
I will surely die alone of a broken heart. / 私はきっと失意のうちに孤独に死ぬだろう。
解釈
謙徳公は一条摂政とよばれた伊尹(これただ)のこと。「いみじき御集つくりて豊景となのらせたまへり」と『大鏡』にあるように、自歌集を仮名をつかって物語ふうに編んでいる。この歌はその巻頭歌で、「親しくしていた女が、疎遠になり、ついには逢うこともなくなった」という時の歌としている。「身をいたづらに」云々は、思いに屈して死んでしまうことだが、一首の中では諦めきれぬ未練な恋に対する詠歎が、上句の哀れな訴えを受けて深まっている。
感想
謙徳公が聞いてくれる人がいないのは、身分が高貴なためだが、そんなことは下々の私でも感じることはあった。自分に聞いてくれる人がいない時期は身に染みるのかも。今は、聞いてくれる人がいるということを嚙み締められる。意味をわかりやすくすることも大事だけれど、聞く人の状況によって、感じることが変わる歌というのはおもしろい。
四六.曽禰好忠(そねのよしただ)
由良の門を わたる舟人 かぢを絶え
ゆくへも知らぬ 恋のみちかな
(ゆらのとを わたるふなびと かじをたえ
ゆくえもしらぬ こいのみちかな)
現代語訳
由良の門(と)を 進む船頭 舵がない
行方不明の 恋の道だよ
英訳
Crossing the Straits of Yura
the boatman loses the rudder.
The boat is adrift,
not knowing where it goes.
Is the course of love like this?
straits /strets(米国英語), streɪts(英国英語)/ straitの複数形。海峡、 瀬戸
rudder /rˈʌdɚ(米国英語), ˈrʌdɜ:(英国英語)/(船の)かじ、(飛行機の)方向舵(だ)、指導者、指針
adrift /ədríft(米国英語)/漂って、漂流して、あてどない、さまよって、的がはずれて、調子が狂って、ゆるんで
Is the course of love like this? / 愛の行方はこのようなものなのだろうか?
解釈
歌枕の由良は、紀伊海峡の高波の海である。一首はその海漕ぐ舟人が波に梶を失い漂う不安を、恋の行方のあてどない不安と重ねてうたっている。
感想
激しい海に舵がないというのは、どれだけ怖いことだろう。身の不明感が強い。こういう例えを見つけ出して、詠みたいなぁ。
※引用図書の紹介
『百人一首がよくわかる』
国語の教科書にあるような、文法的に正しい訳ではなく、短歌の長さ程度の軽妙な日本語訳と、短い解説書。
『英語で読む百人一首』
百人一首の英訳。古語や現代語訳より、歌の情景が浮かぶものも多い。
『百人一首 (平凡社カラー新書)』
馬場あき子先生の著作。ただし、教養としての解説であって、歌の解釈は短め。
いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。