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百人一首復習ノート:現代語訳、英訳、解釈とその感想(六七、六八)
普段、現代語で短歌を詠んでいるのであって、文語に親しみたいわけでも、文語で短歌を詠みたいわけでもない。けど、永く日本人の体に染みついたリズムで、教養ある人が一度は親しんだ(無理やり覚えさせられた)歌に接することには、意味があることかもしれない。
教養としてではなく、自分の作歌の養分と作歌のテクニックという実利を期待して、いまさらながら百人一首を復習してみようと思う。情報は、手元にあった百人一首の本三冊から(『百人一首がよくわかる(橋本治)』『英語で読む百人一首(ピーター・J・マクミラン)』『百人一首 (平凡社カラー新書)(馬場 あき子)』)。
だいたい週一回、まとめている。一つのnoteには、2首ずつ取り上げる。2首ずつ取り上げる理由は、百人一首が、二人ずつのペアが50組あるという作りだから。どうせなら意味のあるペアの形でインプットしたい。歌をまとめて取り上げる作業は、連作を作るアイデアにもなるかもしれない。
六七.周防内侍(すおうのないし)
春の夜の 夢ばかりなる 手枕に
かひなく立たむ 名こそ惜しけれ
(はるのよの ゆめばかりなる たまくらに
かいなくたたん なこそおしけれ)
現代語訳
春の夜の 夢みたいだわ 腕枕
それで噂に なったらごめんね
英訳
I would regret losing my good name
for laying my head upon your arm
offered as a pillow
for a moment as fleeting
as a spring night's dream.
fléet・ing /‐ṭɪŋ(米国英語), ˈfli:tɪŋ(英国英語)/いつしか過ぎてゆく、つかの間の、はかない
解釈
春月のおぼろに明るい夜、関白教通邸に集う女房たちは、春の夜のなつかしい雰囲気にひたりつつ物語をして夜を更かした。大納言忠家がふと御簾のもとに倚ってきくと、話し疲れたのか、「枕もがな」という声がする。風流の貴人はとっさに御簾の下からその腕をさし入れつつ、「これを枕に」と申し入れた。その時即詠をもって応じたのがこの歌である。忠家もすぐに返歌を詠んだ。「ちぎりありて春の夜ふかき手枕をいかがかひなき夢になすべき」。周防がその淡々しい情を拒んだのに対して、「かひなき夢」になどはしないと、真情を訴えたもので、双方とも「腕(かひな)」と「効(かひ)」とを掛けことばにしている。春の朧夜の妖艶な応酬は、そのまま、文学であり、物語であったといえよう。
感想
腕を差し出されても詠めないし、詠まれてすぐに返歌もムリだ。でも、歌の楽しみ方の一つではあるんだろう。ちょっと試してみたいところだけど、即興で詠む機会もないしなー。自分一人でやろうと思っても、すぐにもうちょっと、もうちょっと、っていつまでも引っ張れそう。もっと時間はかけるけど、前の反応を受けて、歌にするというのは、歌仙(連歌の一形態)もそうだな。またやってみたいな、歌仙。
六八.三条院(さんじょういん)
心にも あらでうき世に ながらへば
恋しかるべき 夜半の月かな
(こころにも あらでうきよに ながらえば
こいしかるべき よわのつきかな)
現代語訳
生きたいと 思わずこのまま 生きてけば
いつかは思い出 夜半のこの月
英訳
Though against my wishes,
I must live on in this world of pain.
But when I look back
I will surely recall you fondly,
Dear Moon of this darkest night.
re・call /rɪkˈɔːl(米国英語), ˈri:ˌkɔ:l(英国英語)/(…を)(意識的に)思い出す、思い出す、(…が)思い出す、(…を)思い出させる、思い出させる、(…へ)呼び戻す、(…へ)(解任するために)召還する、回収する、リコールで解任する、リコールする
fónd・ly /ˈfɑndli(米国英語), ˈfɑ:ndli:(英国英語)/優しく、かわいがって、甘く、盲信的に
解釈
三条天皇は重く眼を病んでいた。摂政道長は陰に陽にその病いをたてに退位を迫っていた。長和四年十二月十日余りの明るい冬の月が、まだ時々は物の形をうつす天皇の眼に明るく明るく映っていた。中宮妍子(けんし)とともにそれを眺めていた天皇の暗澹とした行く先の思いもこめて、ふと口をついて洩れた歌であった。三条天皇は翌年一月退位、出家。次の年亡くなられた。沈痛な内面のにじむ一首である。
感想
前の人の言動や歌を受けて、すぐに返す歌もあれば、ついこぼした歌とはいえ、日頃の思いを景色に乗せて詠むこともある。思い×花鳥風月はよくある組み合わせ。毎日詠むことをしていても、普段の思いまで、毎日消化しなくてもいい。普段から思っていることと、琴線に触れた景色の組み合わせはきっとその人だけの歌になるだろう。そして、本当に、視力が失われてしまっても、歌は詠めるのだろうか。そうなりゆく人を知っているだけに、無関心ではいられない。
※引用図書の紹介
『百人一首がよくわかる』
国語の教科書にあるような、文法的に正しい訳ではなく、短歌の長さ程度の軽妙な日本語訳と、短い解説書。
https://www.amazon.co.jp/dp/4062200104
『英語で読む百人一首』
百人一首の英訳。古語や現代語訳より、歌の情景が浮かぶものも多い。
https://www.amazon.co.jp/dp/4167908417/
『百人一首 (平凡社カラー新書)』
馬場あき子先生の著作。ただし、教養としての解説であって、歌の解釈は短め。
いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。