普段、現代語で短歌を詠んでいるのであって、文語に親しみたいわけでも、文語で短歌を詠みたいわけでもない。けど、永く日本人の体に染みついたリズムで、教養ある人が一度は親しんだ(無理やり覚えさせられた)歌に接することには、意味があることかもしれない。
教養としてではなく、自分の作歌の養分と作歌のテクニックという実利を期待して、いまさらながら百人一首を復習してみようと思う。情報は、手元にあった百人一首の本三冊から(『百人一首がよくわかる(橋本治)』『英語で読む百人一首(ピーター・J・マクミラン)』『百人一首 (平凡社カラー新書)(馬場 あき子)』)。
だいたい週一回、まとめている。一つのnoteには、2首ずつ取り上げる。2首ずつ取り上げる理由は、百人一首が、二人ずつのペアが50組あるという作りだから。どうせなら意味のあるペアの形でインプットしたい。歌をまとめて取り上げる作業は、連作を作るアイデアにもなるかもしれない。
九三.鎌倉右大臣(かまくらのうだいじん)
世の中は つねにもがもな 渚こぐ
あまの小舟の 綱手かなしも
(よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ
あまのおぶねの つなでかなしも)
現代語訳
英訳
解釈
感想
世の中・社会のこと、未来のこと、遠いことと、身近なことを対比するやり方。どんな状態? を初句と「つねにもがもな」の二句だけで表現できたので、三句四句、五句の途中までかけてゆっくり表現して、その様子が愛しいとまで言えちゃう。短く表現できたから、生活・暮らしを丁寧に表現できる。
九四.参議雅経(さんぎまさつね)
みよしのの 山の秋かぜ 小夜ふけて
ふるさと寒く 衣うつなり
(みよしのの やまのあきかぜ さよふけて
ふるさとさむく ころもうつなり)
現代語訳
英訳
póund・ing / ˈpaʊndɪŋ(米国英語)/強打(の音)、ひどい打撃、大敗
chill・y /tʃíli(米国英語), ˈtʃɪl.iː(英国英語)/(寒くて震えるほど)冷え冷えする、うすら寒い、ひんやりとした、寒けがする、冷淡な、冷ややかな、ぞっとさせる、スリラーの
解釈
感想
一度、吉野に行ったことがあります。きっと万葉の頃と変わらない山と川がそこにありました。
実際に行ったことがある人以外にも、その風景があるものを詠むと、三十一音を超えた情報量を盛り込めますね。そこに視覚情報以外の音まで加えちゃうとか、贅沢な感じ。
※引用図書の紹介
『百人一首がよくわかる』
国語の教科書にあるような、文法的に正しい訳ではなく、短歌の長さ程度の軽妙な日本語訳と、短い解説書。
『英語で読む百人一首』
百人一首の英訳。古語や現代語訳より、歌の情景が浮かぶものも多い。
『百人一首 (平凡社カラー新書)』
馬場あき子先生の著作。ただし、教養としての解説であって、歌の解釈は短め。