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ジョンの夢

今まで、思い出した事もなかったジョンの夢を見た。
ジョンは、ぼくが四歳か五歳の頃に家で飼っていた 耳の後ろあたりがふさふさとした黒っぽい犬で、一緒に遊んだ記憶は残っていない。
犬が笑うというと変な言い方だが、ジョンは笑う事も はしゃぐ事もなく、
とにかくもの静かで穏やかな犬だったという記憶だけが残っている。

そうして不思議な事に、そのジョンと小さなぼくが並んでいる光景が目に浮かぶのだが、そのような写真に覚えはない。
もしかしたら小さい頃にはその写真があって、それが映像記憶として残っているのかもしれない。 それとも… 
やさしい目をした無口な中型犬が寄り添っているその姿は 、ぼくの心のどこかで描き出されたものなのだろうか。
ジョンとはどういう別れ方をしたのかも、記憶には残っていない。

声に出して「ジョン…」と言ってみる。
何度も何度も「ジョン」と声に出して言ってみると、
涙がにじむ懐かしさが、胸の奥底からこみ上げてきた。

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