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令和最初のひとめ惚れ

出会いは突然訪れるもの。
贔屓との出会いも、やはり突然訪れるものです。

例えば、なんでもない脇役で出ていた俳優さんが何故か気になり、気付いたらファンになっていた…
そんな経験ありませんか?

私も、今年は久々にそんな出会いがありました。
ところがちょっと相手が悪かった。って言うとすごく失礼な言い方になりますけど、好きになってもどうしようもなかったのです。

出会いは1932年の「金色夜叉」

男が女を蹴とばすあのシーンでおなじみの名作「金色夜叉」
貫一を林長二郎(のちの長谷川一夫)、お宮を田中絹代が演じた1932年松竹版を観た時のことでした。

映画の冒頭、貫一と学友たちの宴会シーン。
その学友の中に、一人シュッとした顔立ちの俳優さんが映っていた。

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向かって右側の人ね。

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このシーンを見た瞬間、頭に雷でも落ちたかのような衝撃が走った。「誰ですかこの人は!!」と。
この笑顔がどストライクだったんでしょうなぁ。

その後はポイント様よりもこの人に目がいってしまって話が頭に入ってこなくて困った(もちろんポイント様が美しかったのは言うまでもありませんが)

しかし初めて見る顔だ。名前もわからない。
わりと男前じゃないかと思うし、これまでに他の作品や古い雑誌で見かけていてもおかしくないはず。
とはいえ、サイレント映画はさほど数多く観ているわけでもないし、戦前の雑誌はほとんど持ってない。

見終えた後でキャストを確認してみたけど、本編には役名がほとんど出てこなかったので主要キャラ以外はどれが誰だか一致しない。
すぐにわかったのは江川宇礼雄くらいなもんである。

とにかくキャスト表の名前で片っ端から検索して、やっとこの人ではないかというところへ辿り着いた。
やはり初めて聞く名前だった。

鹿島俊策という俳優

「金色夜叉」での役名は「風早」
演じているのは、鹿島俊策という人だった。

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1902年生まれ、本名は恵良俊二郎。
鹿島俊策という名は1931年に松竹へ移籍して以降の芸名。その前は「鹿島陽之助」という芸名で活動していた。この名前で検索すると、わずかながら映画のスチール写真を見ることもできました。

経歴を読むとちょっと面白い人で、日本飛行学校の出身だったり高級船員の経験があったり。バイクとダンスも得意だったらしい。

そんな基本情報でウキウキしたのも束の間。
フィルモグラフィーを確認して絶望することになる。

出演作品がほとんど観れない

松竹以前は東亜キネマ、マキノ映画、河合映画、東京シネマ商会と渡り歩き、いくつか主演もこなしていた。

新撰組の映画で沖田総司を演じた経験もある。
やはりイケメン扱いだったか…(実際の沖田が本当にイケメンだったかどうかは謎)

しかし彼の活動期間は1927年から1937年。サイレント時代から、トーキーが主流になってきた頃にあたる。
戦前の作品はフィルム現存率が低い。
運良く残っていても断片的にしか観れなかったりする。数十分とか…

鹿島俊策の出演作品も当然、観れないものばかりなのである。

今回の「金色夜叉」の他にどうにか観られそうなのは「踊れ若者」「黒白双紙」「蛮骨漢」「非常線の女」「若い人」くらいか。

あれ!?「非常線の女」はもう観てるんだけどな…と思って確認したら、いたいた!

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でも全然雰囲気違うなぁ。気付かないわけだ。
しかも出てくるのはここのシーンだけだし。

「若い人」は視学官の役ということでVHSを入手したが、画質が粗過ぎてどこに出てんだか全くわからなかった。
アップもないということは端役の端役だったのでしょう。まあとにかく大日方傳がかっこよかったですよ。

こんな感じで、好きになっても観れる作品がほとんどないんじゃあね…
っていう意味の「相手が悪かった」ということです。

「没年不詳」の寂しさ

上記の「若い人」が鹿島俊策最後の映画出演。
その後の消息は不明です。

「若い人」は1937年の作品。
1937年といえば、日中戦争開戦の年。
召集されて映画出演が途切れたのかどうかはわからないけど…

Wikipediaに書かれていること以外はほとんど何もわからない。
どんな性格だったのか。
俳優としてどういう評価を受けていたのか。
結婚していたのか。子どもはいたのか。

いつ、どこで亡くなったのかさえわからない。
昔の俳優さんは消息不明とか没年不詳とか珍しいことではないけど、いざいいなと思った人がこれに当てはまると、ものすごく寂しい気持ちになる。
もしかしたら戦争で亡くなったのかもしれないとか、そんなことを考えると余計に。

それでも12年俳優してたんだから、俳優仲間や映画関係者の誰かが何か知ってるんじゃないかと思い古雑誌などいろいろ探してみてはいますが、未だにこれといった情報を得られない。
国立国会図書館のサイトで名前を検索しても、ひとつも引っかからないんだもん。

とにかく当時の雑誌を片っ端から見ていくしかありません。
ちょっと気が遠くなるなぁ。

情報お待ちしております

彼のことを調べて、知ったところでどうするってわけじゃないんです。
「ああ、そうなのかぁ」で終わるだけなんです。

だけど、出演作品がちょびっとしか観られなくても、好きになった人のことはやっぱり知りたい。
映画に出なくなった後、どうしていたのか…もちろん、映画に出ていた頃のことも。

誰か、古い映画に詳しいとかで、彼のことを詳しくご存知の神はいらっしゃいませんか?
もちろん今後も自力で資料を探していくつもりですが、もし何か情報をお持ちの方がいましたら、是非是非教えていただけたら嬉しいです。

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