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ヒューマニスト・梶

先日録画の整理をしていて、「人間の條件」が撮れていることに気付きました。
何故か第1部第2部だけ。

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超名作と知りながら、実はまだ一度も観たことがありませんでした。
なんせ全6部、総上映時間は9時間超えという恐ろしい作品。いつか観ようと思ってはいても、なかなか手が出なかったんですが…

とりあえず2部までだし、ってことで重い腰を上げてみました。

召集免除を受けるために満州の鉱山労務管理職に就いた梶(仲代達矢)
しかしそこで待っていたのは、現地の工人が奴隷のように扱われ、現場監督らの不正がはびこるような劣悪な労働環境だった。
梶は同僚の沖島(山村聰)や現地事務員の陳(石浜朗)と協力して少しでも環境を良くしていこうと努力するが、陳が娼婦(淡島千景)の色仕掛けにコロっといってしまうなど、なかなかうまくいかず…

と、いうお話。

戦場が出てきたり戦闘シーンがあるわけではないのですが、「これが戦争だ」っていうものを見せつけられたような気がします。
映画の中でも「ヒューマニズム」って言葉が何度も出てきたと思いますが梶こそヒューマニズムの塊のような人間で、最悪の状況下であってもそれを貫き通そうとする。
だけどそんなものは通用しない。人間が人間らしく生きることが許されない。
戦争ってそういうものなんだと。

梶の立場になってね、自分ならここまで出来るだろうかって考えてみるけど、まあできるはずがない。そういう意味では梶も、私からしたら理解し難く(もちろん気持ちはわかるし何も間違ってないのだけど)なかなかぶっ飛んだ人間なんですよね。最悪殺されてしまってもおかしくないし、実際殺されそうになってたし。

悪く言えば融通がきかないというか、頭カチカチというか…真正面から壁にぶつかっていっちゃうから。
嫁の新珠三千代はそれに振り回される形になってしまって気の毒になった。だけどこの状況で、夫についていくしかないよなあ…
寿司の差し入れには泣かされ、その後山村聰が梶の元から去るとなった瞬間は絶望感MAXでした。


私的この映画の一番のインパクトはなんといっても、列車にすし詰め状態でやってきた大量の捕虜たちがダッシュで食べ物に群がるシーン。
捕虜の大群衆に対し「すぐに食べたら死ぬぞ!!」と叫びながらガンガン蹴とばす山村聰と、そんなの聞いちゃない捕虜たち。ある意味人間のリアルな姿を見たという気持ち。
山村聰も見た目どっしりしてるからね。いかにも強そうで。
ここはすごい迫力だったなあ。

この山村聰が演じた沖島がかっこいいんだ!
現実的で客観的で、梶の言うことに右ならえではないけど相棒として梶をしっかり支える頼れる男。時折感情的になるところも人間臭くて好き。
梶についていくのは怖いけど(笑)沖島にならついていきたい。

現場監督の小沢栄太郎や憲兵の安部徹、所長の三島雅夫、悪い意味でずるい声の三井弘次など、「敵役」のキャスティングも秀逸。小沢栄太郎はこういうクソな演技が毎度上手すぎませんか。
どいつもこいつも憎々しくて、正直言って勝てる気がしません。

1959年、中国との国交がほぼなかった頃の作品ですから当然中国ロケなんてできないし中国人俳優を使うことだってできない。
現地の工人や娼婦も全て日本人俳優が中国語を喋って演じてますが、私が全然中国語がわからないせいもあるかもしれませんがほとんど違和感がなかった。
特に工人のリーダー的存在・王享位役の宮口精二はほんとに現地の人にしか見えません。

第1部第2部は、シリーズ全体として見たらまだプロローグの段階。
それでこれだけ重たいのだから、第3部からは…
続きが気になりつつ、メンタルゴリゴリに削られそうなので次の休みの日にでもチャンレンジしようと思います。




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