見出し画像

【物語】昨日、こんな夢見て泣いてしまった。

昨日はなかなか寝付けず、いろんなことを考えなら眠りにつきました。


男の子は女の子が好きでした。
女の子はもっと男の子のことが好きでした。

彼女には特別な力があります。
それは、未来を見る力です。

その力で、男の子がもうすぐ病気でここを去ってしまうこと、それからすぐに自分も同じ病気で彼の後を追うという未来を知っていました。

とてもとても苦しい気持ちのまま、未来に見えた通りに彼と会うことになりました。


男の子は、自分が病にかかっていることをまだ話していません。

どうしても今は彼女を悲しませたくなかったからです。それよりも、彼女が安心してキラキラした作品を作り上げて欲しかったのです。


刻一刻と未来は近づいてきます。

太陽の輝きに恵まれた美しい場所で、大変な作業をしなければなりません。それは彼女にしかできないことです。彼は、それを作る一生懸命な彼女の姿が大好きでした。

彼は作品を手伝いながら、ぽつりと聞きました。

「これが出来上がった後、君はどうするの?」


「……え?」

ふと、自分の力で見た未来を思い出しました。

作品が完成するとすぐ、彼は砂の様にさらさらと消えてしまうこと。その後すぐに、彼女も同じ病で作品を残して消えてしまうこと。それはとても穏やかで、胸の奥がツーンと苦しいままに溶けていく気持ちがしました。


男の子は、彼女が話し出すのを優しい笑顔で待っていました。彼女が未来を知っているとは知らずに。

彼女はどうしようもなく、切なくなって、大きな瞳から涙がひと粒こぼれ落ちました。
すると、こらきれない想いがどんどん溢れ出てきます。

二人は恋人同士ではありません。
お互いの想いを伝えきれないまま、美しい砂となって消えてしまうのは、あまりに心苦しくて受け止めきれませんでした。どうしてこういう運命なのでしょう。

彼は、彼女が下を向いて涙を拭う姿に、もう一度優しい声で話しかけました。

「大丈夫。僕も作品を手伝うよ、君なら最後までやり遂げられるよ」


彼女は、一度うつむくと強く頷きました。

彼の覚悟が聞こえたような気がします。もう少しで彼が消えてしまうとは思えないほど、穏やかで愛しい気持ちに包まれていました。

そして、二人は残りの時間を使って、何千年も何万年もたくさんの人を魅了させた作品を作り終えました。 


彼女は彼の姿を見送った後、幸せそうな笑顔を残して、さらさらと消えていきました。


                 🌙




2020.5.26
イラスト:のはら

この記事が参加している募集

スキしてみて