おとおとの 血の惨劇の話
どうもこんにちは。
試練のスクール編も無事に終わり、あの頃ストックを入れている棚の底板がうっすら見えてきそうな今日この頃なので、今回は元職場の上司のあの頃の話。
おそらく現在50代になっているだろう元上司は
弟と2人兄弟。
シングルマザー。
まあまあ貧乏。
お母さんは保険の営業をやっていて忙しい毎日。
いつも家では自分と弟の二人きりでいることが多く、慣れっこではあったがたまに寂しい日もあった。
しかし母が自分たち兄弟の為にに毎日身を削って働いていることも、彼女の年齢の割に多い白髪を見て幼いながらにわかっていた。
そんなある日。
母が目をキラキラさせて小さな白い持ち手のついた箱を持って帰ってきた。
「今日はあんた達にお土産よ」
箱を開けてみると中には小さないちごのショートケーキが2つ入っていた。
「え!ケーキ!!なんで??」
聞くと、会社のお得意さんが立ち寄った際に差し入れてくれたそうだ。
ひとつ余ったので所長さんがお子さんにとくれた。
母は息子2人にひとつずつ食べさせるために自分のケーキも食べずに持って帰ってきてくれたのだ。
誕生日でもないのにケーキが食べれる!!
嬉しくて嬉しくて
夕食の前だが食べていいか母に聞いた。
「ちゃんと晩御飯も食べるのよ」
と
特別に許可してくれた。
箱からいちごのショートケーキをひとつ出す。
真っ赤ないちご。
綺麗に飾られた生クリーム。
2人は包まれたビニールを手荒く剥がし、クリームとスポンジを口に運んだ。
口いっぱいに広がる甘味とミルクの香り。
思わず目を閉じてその口内に広がるケーキに集中した。
しばらく夢中でケーキを格闘していた。
すると突然。
「ちょっとあんた達!!」
と母が夕食準備の手を止め、こちらに近づいてきた。
彼らはなにかまずいことをしてしまったのかとギョッとしてみると母は、
「あんた達はほんとケーキを食べる作法も知らないのね。」
と物言いをつけてきた。
そらそうやろ。ケーキなんて誕生日の時に母が作ってくれた市販のスポンジにバタークリームと缶詰のフルーツで作った手作りケーキしか食べたことがない。
ましてや切られてフィルムが貼られたショートケーキヘタすりゃ初めて食べる。
無粋と言われても困ってしまう。
続けて母が、
「ケーキは本体に行く前にこのフィルムのクリームを味わうのよ!!」
と、彼らのケーキ皿の端に無造作に置かれたフィルムを取り上げた。
※上司談
『きっと母もケーキの作法なんかわかっていなかったと思う』
そしてフォークでクリームをと…らずに全部口に入れた!!
兄弟「!!!!」
モゴモゴと口を動かし
口から出てきたのはフィルムの端。
すると母はそのフィルムを両手に持つと
しゅるスパン!!
とてつもない速さでいっきに口からフィルムを出した。
兄弟「!!!!」
そんな作法見た事がない。
いくらものを知らないと言われても、
絶対にそのやり方は普通じゃない。
※上司談
『あとからわかることになるんだけどうちの母ちゃん天然というか、不思議な人だったよね』
フィルムにこびりついたクリームがいっきに口の中に広がったであろう母は、目を閉じ天を仰ぎ一言。
「あぁ.…おいしい.…」
すると天を仰いだ母の口角からいちごよりも濃い真っ赤なものがタラ~っと流れた。
上司談
『あまりにも早く引き抜いたからフィルムが刃物みたいになったんだろうね』
だろうね
じゃねえわ笑
以上。
あまりに面白いエピソードで飲みに連れていってもらう度に話してもらってた話でした。
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