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あにの バイトの話

 どうも。
 相変わらずサンタさんが次男にくれたマインクラフトが面白くて、のはなしの更新が滞りがちなあにです。
 近頃はレッドストーンパウダーの使い方を覚え始め、電卓づくりに精を出しております。最近子どもたちが一緒に遊んでくれません。

 さて。バイトの話です。
 みなさま御存知の通り、怠惰と安寧を愛するあに。『アクティブ、ハンサム、社交的』を担当するおとおとと違い、高校時代はバイトなんてすることもなく、大学に合格が決まってからは毎日思う存分惰眠を貪っておりました。
 そんな息子を見かねたのでしょう。ある日母がこんなことを持ちかけてきました。

「大学始まるまで暇でしょ? ちょっとタカヤマさんのところでバイトしない? 1日1万出すよ。」

 ほう。バイトと称して何かお手伝いでもさせようということでしょうか。ニギリの母が1日1万とはずいぶん奮発した話です。タカヤマさんとは母の前職からの友人。そのタカヤマさんのところでバイトということは、まあ家庭教師とかそんなところでしょうか。あに青年も春からは大学生。きっとあれこれお金も必要となってくるでしょう。今のうちにちょこっと小遣い稼ぎは悪い話ではありません。つい話にのってしまいました。

「じゃあ行くよ!」

 といって連れてこられたのは、市内某所警備会社事務所。

「タカヤマさん今ここの警備会社で事務やってるんだって」

 ダマサレタ……

 ちょっとしたお手伝い程度のつもりが、まさかのガチバイト。しかも初バイトで警備員って、お母様、あなたの息子どう見たってそんな肉体派バイト向きではないでしょう……

 とは言え母はすでに事務所に入り旧友のタカヤマさんと楽しそうに井戸端会議をしております。乗りかかったバスではないですが、ここまで来て逃げ帰るほど親不孝者にもなれないあに青年。その場で所長と面接をうけ、程なく採用決定。
 DVDによる研修では警棒の使い方、有事の際は犯人制圧よりも自身の身の安全を最優先することなど、これから行われる危険な任務にたいして身が引き締まります。
 制服の貸与までされ、制帽、帯革、モールを付けると少しテンションが上がります。
 ザ・ガードマンあに隊員の誕生です。BGM

 そして流れるように翌々日の現場入りが決まります。
 あに隊員にまかされた任務、それは……

工事現場の交通整理!


 おい、さっきの研修DVDの内容、どこいった。
 まあ30分前まで自室でゴロゴロしたおしていたヒョロガリ大学生予備軍にそんな危険な任務が割り振られるわけはなく、そもそもショッピングモールの駐車場警備や工事現場の交通整理が主な業務の会社なようでした。


 で、初日。
 場所は急行で一駅離れた、地方都市。
 任務の内容はマンション建設現場の交通整理。
 天気は雨。


天気は雨


 暖かくなってきたとは言え、まだ3月。

 装備は通常業務用制服と、コンビニで買ったペラッペラのレインコート。


極寒


 もう朝からガタガタと体の震えがとまりません。シバリングというやつですね。体中の筋肉が震えることで少しでも体温をあげようとする、自己保存機能。
 ただ立ちっぱなしというだけでもキツイのに、小刻みとはいえ熱を得るために体が震え続けるのですから、体力はみるみるうちに消費されていきます。オタクをこじらせて純文化系な高校生活を送ってきたあに青年。お昼休憩の頃にはもう限界です。

 プレハブの待機所で母の持たせてくれた冷たい手弁当を食べるあに青年。頭の中ではどうやって逃げるかでいっぱいです。
 45分の休憩時間はあっという間に過ぎ去り、現場へ戻るあに。だるまストーブで温めた体の熱はあっという間に失われ、再び始まる体の震え。

 北海道の方では寒いことを「しばれる」というらしいけども、それの現在進行系で「しばring」とは、世の中の言葉には意外な共通点があるなぁ…なんて考えていた時、あに青年、ふと気づきました。

 まあ寒いのは辛い。

 でも寒いから辛いのではなく、体が震えることで全身に溜まっていく疲労が辛い。

 手足は冷たい、痛いを通り越して、すでに感覚がない。

 

……まてよ?

 感覚がないのなら、このさい手足のことは忘れてしまえばいいんじゃなかろうか?

 震えるのが辛いなら、震えるのをやめればいいんじゃないか?

 そもそも自分の体です。コントロールできないなんて道理はないでしょう。


 右手をあげようと思う。


 右手が上がる。


 左手をあげようと思う。


 左手が上がる。


 体の震えを止めようと思う。


 体の震えが止まる。


 完璧です。
 体の震えさえ止まってしまえばあとは平時とかわりありません。
 寒いといえば寒いですが、まあこれは夏場にエアコンを効かせすぎたと体に言い聞かせれば、むしろちょっと贅沢な職場環境だと思いこむことができます。
 そう。
 精神が肉体を凌駕してしまえば、物理的に肉体を破壊する二重の極みにも耐えられるようになります。肉体がどんな苦痛を受けようと、頭がそれを苦痛と思わなければオールオッケーなのです。斎藤一も安西先生もそう言っています。


 あに青年、寒さを克服。


 すでに新選組にかぶれていたあに青年は、赤色誘導灯を帯革に差し、誘導に従わないクソ車を頭の中で鬼武者したりしながら、無事その日の現場をあがるのでした。

 まあ警備のバイトは翌4月には辞めてやりましたけどね!





 季節はすすんで秋。肌寒い季節になってきました。
 友人たちと作ったフットサルサークルの活動も走り回る時間よりも暖を取る時間のほうが長くなる季節ですが、寒さを克服したあに青年にはなんでもありません。
 そんな時、プレイ中、ふと腕にかゆみを感じました。
 かきかき見てみると、なんだかぽっつり赤く腫れています。
 季節外れの……蚊かな?
 気にせず遊びを続けます。
 今度は太ももがかゆい……?
 見るとポツポツとと赤い斑点。
 ……なんか毒虫の大群にでもやられたか!?
 よく見ると反転は両腕、両脚、首周り、顔、全身に広がっています。
 そして一つ一つの反転がみるみる大きく広がり…合体!
 気がつくと体中が薄ピンクに腫れ上がり、魔人ブウ(悪)のようになっています。

 診断結果「寒冷蕁麻疹」

 ああ、体が発する自己防衛機能を意志の力で抑え込むと、今度は意思の介在できない形で、体は自分を守ろうとするんだなぁ……。

 あにの、人体の不思議の話でした。

 この後数年は夏冬関係なく体が冷えると蕁麻疹がでて、プールに行くのもバイクに乗るのも大変だったなぁ…


追伸
言うまでもありませんが、今回の話は完全にあにの経験と推測によるもので、なんの医学的根拠もありません。寒い時は暖かい格好をする。できれば寒い思いをするようなところには行かない。これがなによりです。

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