あにの ホームステイの話
みなさん前回のおとおとの話をお読みいただきましたか?
ツライですね。
ひたすらツライばかりの話でしたね。
当時高2だったあには、反抗期をこじらせていて(なんならその後25年近くこじらせたままですが)家族のこういったイベントには基本不干渉だったのですが(なんか最近色々荒れてるなーとは思ってた)まさかこんなことになってたとは。
しかし考えてみてください。
アメリカでレストランチェーンを経営をする家の御曹司が、いきなり極東の島国に放り出されて、彼から見たら犬小屋のような家の、鳥籠のような部屋を割り当てられ、ほぼ英語力ゼロの家族と暮らす羽目になったわけですから。それは007ばっかり見ちゃいますよ。私だってそんな目にあわされたら、多分毎日釣りバカ日誌ばっかり見てしまうと思います。寅さんでもいいですよ。
そんなワールドワイド引きこもりなボブですが、あにの言うことはよく聞きました。家の中で唯一まともなコミュニケーションが取れ、なおかつ当時中学生であっただろうボブにとって高校生の兄というのはやはり一目置く存在だったのでしょう。
あとは一緒に近くのレンタルビデオ屋さんに007を借りに行くついでに、二人でアダルトなコーナーをうろちょろすることで深まった絆もあるかと思います。
そんなボブ。実は日本でのホームステイは2回めだったそうで。
お前毎年夏休みにこんな極東の島国で山ごもりみたいな生活させられてんのかよ。どんだけ普段親に心配掛けてんだ…と思ったりもしましたが、ある日気分転換も兼ねて1日だけ前年お世話になったお家へ行くことになりました。
母はこころなしかホッとしたような顔をしています。ボブもいつものムッツリムッチリ顔がこころなしか朗らかになっています。
「とゆうわけで、その日は他の人は予定があるから、あにがボブを駅まで連れて行ってね」
なんですと母上!?
高2の夏休みという人生の中で一番輝いている時期の半日を、このムッツリムッチリメリケンに費やせと言うのですか!?
あにの抗議の声は父に握らされた交通費5千円と「おつりはとっとけ」の声であっさりと静まりました。人生の中で一番輝いている時期を過ごすのには、おこづかいはとても大事なのです。
かくして家から乗り換え1回特急で4駅先にある地方都市まで二人で向かうことになりました。
しかし当時から時間読みの甘いあに。しかも高校生のメイン移動手段は自転車です。電車に乗ることなどほとんどありません。
遅れてしまっては先方に申し訳ないとかなり余裕をもって家を出たせいで、かなり余裕をもって到着してしまいました。
しかしここで喫茶店などで時間をつぶすわけにはいきません。なぜなら今は2名パーティ。コーヒーなんか飲んだらジャパニーズ円を持っていないボブの分もあにの支払いになってしまいます。
夏の駅前のベンチでじっと待つことに。
「アニサン、マダ?」
「マダ」
「アニサン、ノドカワイタ」
「いいかボブ、日本には『MOTTAINAI』という言葉があってだな」
「ニホンゴワカラナイ…」
「コッチキテ2シュウカンダロ、イイカゲンオボエロ」
多摩の地方都市の乗換駅で、ハートフルな国際交流が続きます。こころなしか家にいるときよりも多弁(主に不平不満)なのは、この後会う去年のホストファミリーと会うのが少しは楽しみなのでしょうか。
まあボブにとってはこっちの犬小屋からあっちの犬小屋に移動するだけの気分でしょうが、それでも少しでも我が母との軋轢で溜まったストレスが和らげばよいのですが…
少々とはいい難い時間がすぎ、待ち合わせの時間が近づいてきたので、二人で改札へむかいます。
するとこちらのぽっちゃり米国代表を見つけて、小柄なおばちゃんが近づいてきました。
性根は悪くても多少外聞を取り繕うことは出来るあには、にこやかに手を振り話しかけます。
「こんにちは。ボブのホストファミリーの方ですか?」
「いいえ、私は家族じゃなくって家政婦で」
家 政 婦 ! ?
まさかこの日本に家政婦という職業が現存していたとは。
当時は秋葉原に世界初のメイド喫茶ができるすこし前。反抗期と一緒にオタクもだいぶこじらせていたあに、メイドさん(小柄なおばちゃん)との初遭遇です!
そうよね。アメリカからホームステイの受け入れをするとか、そこそこ以上のお金持ちの仕業よね。
なんだかとても悲しい気持ちになったあにをよそに、ボブはうきうきを改札を抜け、メイドさん(小柄なおばちゃん)とともに夏の立川の街へと消えていきましたとさ。
あにとはじめてのメイドさん(小柄なおばちゃん)の話でした。
追伸
色々とアレだったボブですが、レストランの息子だけあって料理の腕はたいしたもので、彼が作ってくれたハンバーガーは今でもあにが食べたハンバーガーの中でベスト3に入るうまさでした。
追伸その2
前回のおとおとの話に「うちも似たようなことがありました」とコメントをくれたPochipicoさん。ありがとうございました。
よくよく記事をみてみると金髪細身巨乳とか、全然似てないわ!って兄弟で血の涙を流して悔しがっております。
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