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感情を押し付けない

「TBS世界遺産」の杏さんのナレーションがとても良いです。この手のナレーションは、変に重々しかったり、感情込めるよりも、丁寧に淡々と話す方が、心に響くんですね。語り手が酔っていると、それがノイズになってしまうのです。

先日、街頭の献血募集の呼び込みで、腰をくねらすくらい懇願的に叫んでいる人がいましたが、なんだかとても安っぽくいかがわしい感じがしました。

また、数年前あるイベントで、東日本大震災の惨状を、写真を見せながらトークするステージを見た時も、感情を込めた抑揚がとても気になりました。語り手から感情を押し付けられている感じというのか、一緒に泣きましょう的な気持ち悪さ。テーマにもよりますが、悲惨なことや辛いことほど、事実を静かに提示して、どんな気持ちになるかは受け手に委ねる方が良いです。

心理学では、映画やテレビを見てすぐ泣く人は、むしろ冷静な人だと聞いたことがあります。泣けるというのは、事実を自分から離して見られるからだと。自分自身が本当に辛く悲しい局面に立ち会ってしまったとき、人間は意外にも涙が出ないものだということです。真偽はよくわかりませんけど、一理はありそうです。

被災地に立ったレポーターに、下手な悲しみの演出はいらないです。久石譲さんが「悲しいシーンを悲しい曲でなぞるようなことはしない」と言いました。

ということで、まとまりがなくなってしまいましたが、「ほら、こんなに悲惨なんです!」とか「可哀そうなんです!」とかの感情を押し付けずに、聞き手の中に生まれる感情を尊重する方が、伝わることがあるという話です。

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