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野口智博の水泳よもやま話;パドル編その1

最近の競泳選手の練習に立ち会うと,漁港とかにありそうな大きな網の目のバッグから,まるでドラえもんの四次元ポケットのごとく,様々な練習用具が出てきます.
私たちが水泳を始めた40年以上前は,こんなに様々な練習用具などありませんでした.
私が通っていた島根大学教育学部附属小学校のプールには,当時木の板でできたビート板が数枚ありましたが,まあ浮かない(笑).プルとか,その板を脚に挟むわけですが,逆に脚が沈んでしまいうまく泳げないというね.まあそんな時代でした.

最近の練習用具,その中でもパドルやフィンは,1980年代に広まると,90年代以降様々な形や材質のものが開発され,2000年代に入るとインターネットを通じて,幅広い地域で市場に出回り始めました.
今回は,パドルに焦点を当てて,その開発の歴史や使い方なども含めて解説していきたいと思います.
1 パドルの始まり
2 日本のパドルの歴史
3 Strokemakerの出現
4 パドルはどう利用されてきたか?


1 パドルの始まり

この動画にみられるように,パドルはそもそも,競技力向上目的で作られたものではありませんでした.水難事故の際に,少しでも効率よく泳いで避難できるようにという目的で,木の板を円形にして,中央の下の部分に親指が入る穴を開けて,いわゆる水かきがわりにしたのが最初で,これを作ったのがアメリカ人のベンジャミン・フランクリンという方です.世界史を知ってる方なら誰もが知る人ですが,パドル制作に至ったお話は,下記に書いてありますのでここでは省略します.後にフランクリン氏はこれらの功績により,ISHOF(国際水泳殿堂)入りされるに至ります.

そもそも,楕円の木の板の穴に親指を入れてクロールが泳げるかと言われると,ほぼ無理ですよね(笑).なので,恐らく遠泳の平泳ぎをより高速化させるためのイノベーションだったのでしょう.ISHOFのPDFにも,「for lifesaving」と明確に書かれています.板状の何かに円形の穴を開けて親指を通して,手の形を安定させクロールなどが自在に泳げるようになるには,この商品が出てくるまで待たねばなりません.

このパドルは,私も指導してきた様々な選手に利用させました.特に,ブラインド(視覚障害)の選手には,泳いでいる途中で外れる心配がないので、そのストレスは随分軽減される便利な用具でした.もともとパドルにはストラップのチューブがなかったわけですが,いつからチューブで手を固定するという発想に至ったのでしょうか?

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