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データ活用のために勉強した本_2022

この1年で読んだ本の紹介シリーズ4回目。今年のnoteはこれしか書きませんでした。申し訳ない。
でもその分、今年はいっぱい本を読んで勉強しましたのでここで放出しておきます。(ただデータ関連はほとんどなかった。タイトル詐欺ですごめんなさい)

1. 最強の教養 不確実性超入門

去年の終わりから読んでいた本。不確実性とか、ランダムとは、とか、ランダムっぽく見えるんだけどランダムではないものというのはどういうものか、といったことが書いてある。超入門というタイトルの通り、あくまで教養として不確実性を紹介し、ビジネスでもこういうときに表れますよ、という形で紹介されたように感じた。自分はちゃんと学んだことがなかったのでそれだけでも勉強になったが、ビジネス的なそこからのノウハウや学問的な話を求める方にはちょっと中途半端に見えるかもしれない。


2. The Art of Marketing マーケティングの技法

パーセプションフローモデルでおなじみ音部さんの新著。マーケターの端くれとして読んどかんとと思い購入。パーセプションフローモデルの作成、導入、運用について書かれた実践書という感じ。セミナーなどでは何度も聞いた気もするがどうしてもエッセンスという感じになる反面、こちらの書籍では社内の置かれた立場や企業のステージによって気をつけるべきことなど触れられており具体的。必要な時に適宜振り返りたい本。


3. はじめてのUIデザイン 改訂版

1年くらい前にKindleで10円とかだったので買っといた。読むものがなくなったタイミングでようやく読んでみたものの、「はじめての」の名が示す通りUI関連の用語解説集という感じだった。Web業界に入ってきた新卒の企画職とかが読むとコミュニケーションが捗るかもしれない。


4. カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

カスタマーサクセスが今後SaaSビジネスを成長させるうえでの課題だなと思ったので、メンバーからの薦めにより購入。教科書的なものが読みたいとオーダーしてみたら、まさに教科書という本を紹介してもらいました。Goodjob!
カスタマーサクセス職だけでなく、カスタマーサクセスの組織を作りたい、組織にカスタマーサクセスの概念を根付かせたい管理職にとってもおすすめ。全てのビジネスはSaaS化し、カスタマーサクセスの概念が中心になっていくことを考えると、つまり全てのビジネスマンにおすすめ。


5. THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

ずっと解説記事ばかり読んで読んだつもりになっていたのですが、さすがにそろそろSaaS事業を運営してるなら原典を読んどこうということで購入。事前の想像とはちょっと違って著者の自伝風味なところがあったが、章立てとしてはきちんと整理されているので読みやすい。多くの人に指示されているだけあってセールス組織を構築、運営するなら一度は通ってみて損はないと思う。


6. 他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論

組織のポテンシャルをもっと引き出したいなあと思っていた時期であり、同僚の薦めにより購入。次の本ともかぶるところが多いが、どのように上司と部下、組織をまたぐようなコミュニケーションを前向きに進めていくかということのエッセンスがちりばめられている。人と人の間の溝、それをナラティブの共有によりどう乗り越えていくか。上司が部下に歩み寄るだけでなく、部下側も上司と前向きにコミュニケーションを取るためのヒントが書かれているため、組織のどちらの層でも役に立ちそう。


7. 職場が生きる 人が育つ 「経験学習」入門

組織のポテンシャルを引き出したいシリーズ第2弾。「経験学習」というワードから「少ない経験から多くの学びを引き出す方法」かと思って読んでみたらちょっと違った。でも成長とは何か、そのためにどのような経験が必要か、経験から学びを得るためには何に気をつければいいか、ということが理論から実践まで書かれている。メンバー育成に悩む若手のマネージャーにおすすめ。


8. 実務家ブランド論

ダイキンでブランディングに携われてきた片山さんの著書。その名の通りとても実務寄りというか、概念としてのブランドではなく、事業や仕事においてブランドはこういうもの、こうするべきという形で事例多めで明快に語ってくれるのでとてもわかりやすい。知られないと意味がない、知られたうえでそこに想起されるイメージがブランドである、という感じで理解しているが、ブランドというのは企業側ではなく消費者側から見て考える必要があるという当たり前のことを考えさせられた。良著。


9. HARD THINGS

社内でおすすめ書籍になっていたので読んでみた。ノンフィクション小説でした。ちょっと違うか。知識とかではなく事業を興し、育てること、その途中に出てくる困難を如何に乗り越えるか、先輩から覚悟を学ぶという本。Not for me.


10. 「ついやってしまう」体験のつくりかた 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ

社内のおすすめ書籍第2弾。元任天堂のゲーム企画開発の方の本。ユーザーが思わずやってしまう行動、楽しんでもらうためにはどう設計すべきか、何が妙なのか、という点をわかりやすくゲームの事例で解説してくれる。ゲーム好きとしてはたまらんし、きっとゲーム好きでなくても伝わる。マーケティングとかプロダクト開発に関わっている人は読むと良い。


11. PLG プロダクト・レッド・グロース「セールスがプロダクトを売る時代」から「プロダクトでプロダクトを売る時代」へ

今年の良著TOP3に入る。SaaSビジネスを運営する上で一つの型を身に着けたいと思いPLGについて勉強。考え方から事例、数値、組織作りに至るまで網羅されており教科書としてすごく良かった。部署内でも複数人にお勧めして買ってもらった。
あらためてハイライトしといたポイントを読み直してみてもまだまだ学びが深い。この1年でいろいろ取り組んできたつもりだが、まだまだできること盛りだくさん。SaaS最高。教科書でもありSaaSビジネスの奥深さを気づかせてくれる一冊とも言える。

ちょっと飛んだ話になるが、昨年紹介した「キャズム」、前述の「カスタマーサクセス」、そしてこの「PLG」の3冊でSaaS事業、プロダクト事業を運営するためのエッセンスが網羅的に盛り込まれており、マーケット、プロダクト、カスタマーサクセスの3者の関係性について整理できると、「事業を成長させるとはどういうことか」といった問いに答えられるようになると思う。少なくとも自分はこの一年で事業というものの解像度が上がった。事業、楽しいですね。


12. 失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織

組織のポテンシャルを引き出したいシリーズ第3弾。組織がテーマになっていますが、データ分析をどう活かすか、という側面もあるので組織内データ活用の啓蒙本と言ってもいいかもしれない。失敗を科学し、原因を特定し、再発防止策を練る、という現在の企業組織においては当たり前のPDCAサイクルですが、できる組織とできない組織がある。その違いはどこにあるのか。しっかりと失敗を科学できない組織はいくらでも失敗を繰り返す。厳しい指摘がいっぱいありました。でも事実ですね。
以前、AI研究の偉い方に言われて心に残っている
「成功と失敗、ではなく、実験と学習、と物事を捉える組織が成長する」
という言葉を思い出しました。


13. 未来を共創する経営チームをつくる

組織のポテンシャルを引き出したいシリーズ第4弾。自分も担当事業の経営層の一人として、この自分の所属する経営チームをもっと強くできないかと思って読んでみました。前半は経営チームだからこその課題、全員が優秀でありこれまでの自負がある、それがエゴにつながる、という観点から。後半は徐々に経営チームに限らず、組織をより強くするための約束事、会議の進め方、参加する一人一人のマインドセットの在り方について解説しているため、経営層だけでなくチーム、組織という観点でも役立つフレーズが満載です。目次を読むだけでもエッセンスが抽出できるので、必要そうな部分だけ選んで読んでもよいかも。


14. 地理学で読み解く流通と消費: コンビニはなぜ集中出店するのか

流通業の方々とお仕事をすることも増えてきたので、業界に対する基礎的な知識を増やしたいなと思って購入。こういう特定の現象を特定の学問で読み解く系の本は大好物です。日本という国土の形、性質から始まり、都市が今の場所にいかにして発展していったか、国土開発と人口移動に伴って流通業がどこにどのように伸びていったのかということを業種別などで紐解いていっています。狙い通り、その業界で働いたことのない私からすると各業界の基本的な歴史に触れることができ大変参考になりました。また、海外を旅行したりするとよく感じる、国土という変更の難しい究極のハードが生活や文化、経済といったソフト面に与える影響も改めて感じました。海外行きたい。


15. 数値化の鬼 ーー 「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法

初心者向けかなーと思いつつ、今後は初心者向けにわかりやすくデータ活用を伝える言葉を自分も習得していかないといけないと思い購入。しかしながら、読んでみるとちょっとこの本はいただけませんでした。数値化、すなわちデータ収集やそこからの比較、予測を活用していこうという趣旨なのですが、ぜんぜんデータが出てこない。なぜそれが有効なのかという根拠がほぼほぼ著者の主観によるもので、個人の感想かなと思ってしまいました。not for me.


16. ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣

Voicyでいつも楽しませてもらっているたいろーさんが紹介していたので購入。習慣とはなにか。習慣化することがいかに結果に結びつくか。習慣はどのように育むべきなのか。といったことをわかりやすく解説しています。マーケティングやカスタマーサクセスというビジネス分野においても、いかに顧客に自社サービスの利用や購入を習慣化してもらうか、というのは大きなテーマになるかと思いますので、そういった観点で理論と実践を程よいバランスで学び、習慣化のテクニックを自分の仕事に結び付けたい人にはお勧め。実際私も自身が管掌しているカスタマーサクセス部門の戦略に習慣の仕組みを反映させてみました。良い。今年の良著の一つ。


17. データで強くなる! バスケットボール最強の確率

スポーツアナリティクスをいつかやってみたいと思っているので、バスケットボールのデータ分析のやり方、活かし方を勉強するために購入。基本的にはバスケットボールの分析に関する専門書なので、ビジネスに活かせるエッセンスはそれほど多くない。ただ、スポーツアナリティクスにおいては当たり前かもしれませんが、試合の勝利に紐づく重要なKPIは何か、そのKPIを動かすためのプロセスKPIは何か、という指標間の関係整理は面白かった。いわゆるMMMにも通じるなーと思った。また、バスケットボールだけに限らずですが、事象と情報の関係性、データとは何かという構造、概念について解説されたピラミッドの絵は非常に勉強になりました。その絵を参考に私なりに再解釈して、データ分析とそこからの施策の関係性を整理した図にして最近イベントなどで紹介させてもらっているので参考までに貼っておきます。

「データで強くなる!バスケットボール最強の確率」小谷 究/木村 和希 日東書院本社
 を参考に著者作成

この図をもとにデータ分析がなぜ重要か、何に有効なのか、何に気をつけなくてはいけないのか、という話を展開できます。ご興味ある方よろこんでお話ししますのでお声がけください。


18. 投資思考

投資は無知、苦手なので苦手意識を払拭するために購入。「マーケットは常に正しい」って良い言葉ですね。投資的な用語を中心に章立てされており、ふむふむと思う点も多かった。ただ、全体的には著者の方の体験を中心とした自伝のような読み物となっていて、教科書好きの自分にはあまり向いていなかった。not for me.


19. OPEN(オープン): 「開く」ことができる人・組織・国家だけが生き残る

抽象化することで、あらゆる組織やビジネスに活用できる考え方、オープンであることの戦略的な強みを歴史や実験などから解説している。人は新しいものに触れると基本的にはびっくりして拒絶反応を起こすようにクローズになる。ただ、そのままクローズを貫く組織は生き残れず、むしろその変化を新たなイノベーションとして受け入れられるオープンな組織だけが生き残れる。という趣旨。ゼロサム的な競争思考のビジネスは自分たちが一時的にシェアを取ったとしても長期的には衰退する。本来はプラスサムを目指し共創思考でビジネスを展開することが長期的な発展につながる。という思想はずっと持っていましたが、この本を読んでさらにその方針が強化されました。界隈と協力して市場を創造するためにがんばる。


20. 因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか

友人のアナリストの薦めにより購入。ただ難しかった。ぜんぜん理解できなかったので書評もできない。本筋の手前にある因果推論ではないものとして確率や統計についても触れられているがそこは理解できた。限界。もう少しちゃんと知識をつけてからもう一度読みたい。


21. “未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?

今年の私の中でのマーケティングの教科書No.1。顧客理解ではなく未顧客理解。つまり、まだ買ってくれていない将来の顧客を分析、想像し、理解することでビジネスを成長させることができる、という話です。この基本的な考え方自体は私もいろんなイベントなどで重要性を訴えていまして、自社の売上データなどから見えるのはあくまで既存顧客。そこだけを分析していても顧客は増えない。新規顧客を増やしたかったら市場にいるまだ顧客ではない人を調べて理解しましょう、ということを言っております。本著ではそんな私の掛け声レベルのものをより具体的に、複数の論文を引用しながら、マーケティングの手法として未顧客を理解、アプローチするための進め方を教えてくれる。読みやすく、理解しやすく、扱いやすく、かつ信頼できそう。教科書として超絶おすすめ。


22. 星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則

プライベートで星野リゾートのホテルに泊まることがあったので購入。教科書経営で知られる星野社長が書く教科書ってどんな感じなのだろうと思って読んでみたが、内容としては星野さんのマーケティングの考え方や会社として向き合ってきた事例、そのときにどの教科書を参照して判断してきたのかといった流れ。追加で読んでみたい教科書がいくつかできたのでありがたかった。教科書経営、自分も実践していきます。


23. 国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源

今年のラスト。まだ上巻のみですがいったんコメント。昔に読んだジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」に対するアンチテーゼのような内容。「銃・病原菌・鉄」は大陸の形や寒暖差といった環境要因によって文明の興亡が起こるという主張ですが、本著は環境がまったく同じような隣村であったとしても文化レベルや制度に大きな違いが発生することがある、その理由は何か。といった展開。
結論としては大きく2点で
・一部の権力者に利益が還元されるような収奪的制度の元ではイノベーションが起こらず衰退する。挑戦の結果が自身や社会全体に還元されるような包括的な制度が発展に不可欠である。
・ただし、包括的制度と中央集権は必ずしも矛盾せず、むしろ権力が分散しすぎた組織においては力の方向付けや分配などが機能せず烏合の衆となり成長できない。包括的かつ一定の中央集権がイノベーションに必要。
と理解しました。
読んでいて思ったのは、これって強いスタートアップ的な組織のことを言っているのかな、ということです。強いリーダーシップを持つ創業者や強烈なビジョンを中心とした一定のトップダウン的な中央集権と、ストックオプション的な分配の仕組みとフラットな組織構造を想起させます。成長していくスタートアップの組織が事例として良い組織として紹介されることはよくありますが、こういった歴史的、文化的な観点から説明されると根拠がより強化されたような気がして良いですね。勉強になりました。


数としては23冊。今までになく量は読めましたが、意外と身になった知識が少なかった。そろそろちょっと気になる程度の本を読んでも学びが少なくなってきたようです。むしろアウトプットを増やすべきか。来年は少し絞り込んで「教科書」「教養」の2点に方向性を絞り込んでいきたい。

教養と言えば、本以外のインプットは増えました。散歩の時間を有意義に使うために耳を使うようになり、VoicyとPodcastを聞くようになりました。コテンラジオ最高。

また、ここ数年言い続けている自分の目標である「日本をデータドリブンにする」ために、「自分」が何をなすべきか、どこを担当すべきかの解像度が少し上がった年でもあります。事業でもそれ以外でもその方針に沿って動いていきたいと思います。そのための仕込みも既に始めていますので、来年は大きなリリースを最低2つくらいはできるようにこだわっていきたいです。

転職して2年。ようやくいろいろなことが見えてきて、攻めも守りも大きな手が打てるようになってくる頃合いですね。データ分析もマーケティングも好きですがあくまでドメインの一つであり、自分は事業が好きなんだということも定まってきました。来年もより一層「ことに向かい」、データと事業の力で日本を前に進められるように励んでいきたいと思います。


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