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CAR-T治療後のレパトア解析

<読んだ論文>
Rejeski K, Wu Z, Blumenberg V, Kunz WG, Müller S, Kajigaya S, Gao S, Bücklein VL, Frölich L, Schmidt C, von Bergwelt-Baildon M, Feng X, Young NS, Subklewe M. Oligoclonal T-cell expansion in a patient with bone marrow failure after CD19 CAR-T therapy for Richter-transformed DLBCL. Blood. 2022 Nov 17;140(20):2175-2179. doi: 10.1182/blood.2022017015. PMID: 35776908.

<内容のまとめ>
CD19抗原を標的とするCAR-T細胞療法は複数のB細胞性造血器腫瘍の治療として発展が目覚ましいですが、CRSや神経学的毒性など特有の副作用プロファイルに注意が必要であることが知られています。

さらに、血液学的毒性もまた主な副作用であり、治療後しばらくして長期間問題となることがあります。また、重度の血球減少は感染症や非再発死亡の高リスクとなりうるのですが、CAR-T関連の血液毒性の詳細は明らかではありません。

今回はCLLがtransformしたDLBCLの50代患者をCAR-T細胞療法を行なった後、血球減少が遷延し感染症を繰り返された症例について、治療前後の検体を用いてシングルセル解析とTCRのレパトア解析を行なった報告です。

CAR-T細胞療法前にマルチだったTCRクローンは、オリゴクローナルに変化しており、治療後のクローンは、治療前に主体であったクローンとはほとんど異なっていました。また、CAR-T細胞のクローンだけでなく、non-CAR-T細胞のクローンも増大していました。

GSEAプロットでは、治療後の主体クローンでは、細胞周期に関連する遺伝子の発現が上昇し、逆にアポトーシス、免疫応答、炎症に関わる遺伝子の発現が低下していることがわかりました。

オリゴクローナルなT細胞の増加が、CAR-T関連の血液毒性メカニズムとの関係している可能性について示されました。

<感想>
CAR-T細胞療法は活気的な治療法であり、さまざまな研究開発が今もなお続けられ、今後造血器腫瘍をはじめ、多くのがんの治療の治療の主軸としてスポットライトが当てられ続けられるものと思われます。
CAR-T細胞のレパトアについての症例報告であり、まだまだCAR-T細胞のbiologicalな面の解明が進むものと期待されますね。

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