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地域密着型イラストレーターの歩み(実体験編)

千葉県流山市に住んでいるイラストレーターのノグチノブコです。
WEBや紙媒体でイラストやマンガの仕事をするかたわら、地元・流山市でもクリエイターとして活動をしています。

流山の在住歴は12年ほど。
夫の実家が流山市にあるという理由で引っ越してきました。私にとっては縁もゆかりもない街でしたが、気がつけば市内でも割と名前を知られている側の1人になっているのかなと思います。

お店に行くと顔見知りの人がいることが多かったり、「もしかしてノグチさんて、あのノグチさんですか?」と初対面の方から声をかけていただくことも多かったり、それぐらいには知ってもらえてるところまで来ました。

これまでやってきた活動を振り返る意味も込めまして、どうすれば地元で仕事につながるのかまとめてみたいと思います。

だが、しかし!
あまりにも長くなり過ぎたの前編と後編を分けました。
前編は、私のこれまでの体験とどうやってゼロから今の位置まで辿り着いたのかをご紹介します。

私はこういうものです

これまで私がやってきた流山市内での活動の一部をご紹介します。

「みりんちゃんとこぼれ梅」キャラクター制作

流山市はみりんの名産地なのです。
江戸時代、流山で「白みりん」と呼ばれる透き通った琥珀色の美しいみりんが造られてました。
そこから現在に至るまで、流山ではみりんが造られています。

女の子の方は「みりんちゃん」明るく元気な流山みりんの化身です。一応12歳くらいを想定してます。髪の毛はみりんをイメージした琥珀色、羽織や髪飾りはみりんのメイラード反応(経年により色が赤黒くなる現象)を起こした時の色をイメージしました。

みりんちゃんの隣にいるもこもこは「こぼれ梅」。
こぼれ梅とは、みりんを絞った時の搾りかす(酒粕のみりんバージョン)の呼び名です。江戸時代に人々が散りこぼれた梅の花に似ている!と言ったことからこの名前がついたとか。風情があります。

みりんちゃんの誕生については後述しますが、流山商工会議所の有志メンバーによるプロジェクト「みりんde繫盛実行委員会」から生まれたキャラクター。この委員会は2018年にスタートし、4年にわたり、3回の印刷物を発行しました。


一番最初に制作した「やっぱりみりんdeしょ・2019年」

『マンガ・流山みりん物語』の制作

先ほどのみりんちゃんを主人公に据えて、流山みりんの歴史をマンガにした『マンガ・流山みりん物語』を制作しました。
このマンガはクラウドファンディングで資金を調達するところからスタート。
2020年2〜3月に資金調達し、無事に目標達成。
そして2020年4月から11月末までのほとんどの期間をこのマンガの制作に費やしました。
完成したマンガは、市内の小中学校の学級文庫に1冊ずつ寄贈し、クラファンの返礼品となりました。

その後、流山市の教育委員会からもご好評をいただき、学校で使ってもらえることに。現在は市内公立小学校3年生の授業の副読本として使われています。

流山市立小学校150周年記念キャラ・ミリュー

市立博物館のパネル展示

流山小学校の創立150周年記念のキャラクター「ミリュー」のプロジェクトに携わりました。
このキャラは私が考えたわけではなく、学校内でキャラクターコンテストを開催し、大賞を取った当時小学5年生の女の子が書いたイラストを元に、キャラクターらしくデフォルメし、 動きをつけたり表情を変えるといったことを担当しました。

完成した時は150周年の記念品としてノベルティグッズがたくさん作られました。
地元のパン屋さんではミリューの焼印を押したパンが販売されたり、子どもたちのランドセルカバーにもなっていました。

今でも時々、ランドセルカバーをつけた子がいるのを見かけるとちょっと嬉しく思います。

市内のクリエイターと連携してマンガ入りチラシを制作

より仕事的な側面でいうとマンガ入りチラシのご依頼もあります。

Myla・流山くらしアンバサダーのチラシ(表面)

こちらは流山市の不動産会社・株式会社Mylaさんの広告マンガ制作。
このチラシは、私はクライアント様との打ち合わせからストーリー制作、絵コンテまでを担当し、作画は市内在住のイラストレーターの女性にお願いしました。

他にも、
・私立幼稚園の学園案内やおたよりちょうを制作
・フレンチレストランのドレッシングや濃縮シロップのラベルを制作
・ガス会社のチラシ制作
・音楽教室のロゴイラスト制作
・接骨院のチラシやロゴイラスト制作
・ペットショップのロゴイラスト制作
他いろいろ

改めて振り返るとご縁をたくさんいただきました。
こんな感じで流山市の活動をしています。

地元で仕事を受けるようになったきっかけ

1、病気発覚して入院&会社解散、そして無職に(2016年)

流山市に引っ越してきた時は会社員でしたが、体調を崩して入院することになり、同じ時期に勤めてた会社が解散。突然無職となってしまいました。
そして20代前半の頃に挫折をしたマンガやイラストの仕事をもう1回やりたい!と思ってイラストレーターとして再始動しました。

このあたりのことはこちらの記事をご覧ください↓

前職は営業事務。
前職からのお客はいません。
知り合いからイラストの依頼を時々受けましたが、営業活動は皆無です。
準備も何もやってない状態でイラストレーターを再度目指すことにしたので、当然ながら仕事はありませんでした。
そんな私を見かねてか、優しい知り合いが名刺を発注してくれたりはしましたが、まあ無職ですよね。

そんな時期、家にこもっていてはますます貧弱になってしまう。
体力増進も兼ねて、散歩と言う名の街歩きを始めました。
市内をじっくり歩いたのはこの時が最初でした。

うろうろしていると、会社員時代には見逃していた個人のお店があちこちにあることに気づきます。思い切って入ってみると、個人店はチェーン店にはない独特の雰囲気があります。ここで得た感覚を何かで表現したいなーと思い始めました。

当時、アメブロとか個人ブログが人気だった時代。
お世話になった知り合いからコンサルタントを名乗る人物を紹介され、その人から「イラストと交換にあなたのホームページを私がコンサルしてあげる」といわれたため(そこでのコンサルはほとんど意味をなさなかったけど)私はイラストの仕事がほぼゼロだけど自分のドメインを取得していました。

持て余していた自分のホームページを活かすためにも、街歩きをしたことを何かイラストでも使って書いてみるか〜と思い立ちました。
そして、ちょっと気になるお店に足を運んでは食事をして、イラストをつけたブログを書き始めたのです。

2、自称ブロガー時代(2016〜2017年)

ブログをコツコツ書いていた最初の動機は
住んでいる人達と交流したい!でした。

街歩きは楽しいけどこの街には友達が一人もいない・・・。
同年代の友達ができたらもっと楽しいのに。

声をかけるなら市内の人が見ている場所がいいな、と思ってFacebookにある流山市のコミュニティ「流山市オススメのお店・スポット情報」の当時の管理人さんにオフ会の告知をしてもいいかと問い合わせてみました。

すると管理人さんから、
「オフ会はいろんな人が来るから、 あなたの思ってるような人じゃない人も来るかもしれません。今度ゴールデンウィークの時に流山おおたかの森駅前でやるイベントに顔を出してみてはどうでしょうか?市内に住む女性たちが出店するイベントですよ」

というような返信をいただきました。
なんという丁寧なフォローアップ。管理人さんありがとう。そしてオフ会をやるよりも手っ取り早そう。
ということで、そのイベントに顔を出すことにしました。

そしてゴールデンウィーク、言われた駅前広場へ。
たくさんのテントが並んでいます。テントの下では幅広い年代の女性たちがそれぞれ自分のブースを持って、小物の販売や自分のサービスを紹介していました。

彼女たちの1人に声をかけたところ、詳細を聞けました。

「私たちは流山市が主催している『女性向け創業スクール』の卒業生です。
今日は卒業生たちがリアルでお客さんとやり取りをする初めての場なんですよ」

そんなスクールがあるとは!
するとこの人たちは自分で商売をしている人なのか。
まさに私も地元で何かをしたいと思っていたし、これは受講したいぞ。

入りたいと思った時点ですでに次の期が始まってましたが、講師の方にお願いをして編入させてもらいました。
この時が地元で仕事をしようと思って動き出した最初だと思います。

3、イラストマップを描いてみた(2017年)

無事に創業スクール生となれた私。
まさに同世代である30代が多めの期でした。
みんな流山市で自分のビジネスを立ち上げる夢を持っていて、子育て中の方ばかりなのにすごい活動量です。

ある時、創業スクールで繋がった仲間たちと街の情報共有したいな〜と思って、これまで集めてきた情報をイラストマップにしてみました。

こちらは2024年版です

できたマップを自分のFacebookと、先述の「流山市オススメのお店・スポット情報」にも投稿。
するとちょっとしたバズ状態になったんです。

当時のコミュニティでは100いいねついたら相当すごい状態だったのが、たしか300いいねぐらいつきました。たくさんの好評コメントもつき、反響にびっくりです。

この反響はなかなかすごいことじゃないか?と思った私。そしてすみません、ちょっと唐突ですが、この出来事をプレスリリースにまとめて記者クラブに送ることにしました。

実は私、仕事がない期間にウェブマーケティングの会社を経営している知り合いの社長の元で手伝いをしていました。その際にプレスリリースの作り方を1年ぐらい学んでました。
当時教わったプレスリリース作り、自分のやってることにも使えるかも?ということでこの機会に試してみることにしたのです。

WordでA4の用紙を作成し、イラストマップを載せて必要な情報を文書にまとめて、新聞記者のいる松戸市役所の記者クラブに持参しました。

するとさっそく、東京新聞の新聞記者さんから連絡が!

そして私は人生で初めて新聞の取材を受けました。
この取材を受けたことをFacebookに載せて告知し、私はちょっとだけ周りから「すごい」と言われる機会を得ました。

少し流山市の中で知名度が上がった出来事だったと思います。

4、商工会議所に入会し、流山みりんの活動がスタート(2018〜2022年)

創業スクールは約3ヶ月で終了。
卒業プレゼンが終わった後はすぐに商工会議所への入会の話が出ました。この流れは元から意図されていたんでしょうね。

その際に、商工会議所の会員たちで進めている新しいプロジェクトに誘われました。
流山市はみりんの街、みりんをつかった飲食店やスイーツのことを市民にもっと認知してもらおう!という企画です。

「ノグチさんのイラストマップ見たわよ。ぜひ私たちのプロジェクトでもマップを書いてよ」と。

イラストマップの効果は絶大でした。
私自身もっといろいろ活動してみたいなと思っていたので商工会議所への入会を決め、せっかくだしプロジェクトにも参加することにしました。

この時、流山とみりんについての知識は正直ゼロ。
やっていくうちにどうにかなるかとのんびり構えていました。
そして実際にプロジェクトが動き出した時に最初に頼まれたのがキャラクター作りでした。

「かわいいキャラがいるといいなと思ってたの」
「名前はみりんちゃんとかいいんじゃない!?」

何もない状態ですでに名前だけが決まっていたみりんちゃん。
キャラクターデザインはこれまで経験がなくて初の試みです。
そもそもみりんについて何も知らなかったので取り急ぎ勉強せねば。

そんな突貫工事で出来上がったのがみりんちゃんでした。

一番最初に描いたみりんちゃん。今と顔が違います。

キャラもできたということで、次は本編である流山みりんを盛り上げる制作物を作ることになりました。メンバー7名のうちデザイナー1名(創業スクールの同期生)、イラストレーター1名(これは私)。
制作物は2人で作ることになり、手探り状態で流山みりんグルメガイドブック「やっぱりみりんdeしょ」を制作しました。
そしてみりんちゃんはこの冊子のメインキャラクターとしてデビューすることができました。

やっぱりみりんdeしょは4年間かけて実施したプロジェクトで、2019年・2020年・2022年と合計3回フリーペーパーを制作しました。

ちなみにこの頃のみりんちゃんは今よりいじけっぽくて暗いキャラ。

当初は表情が暗いみりんちゃん

5、『マンガ・流山みりん物語』のためにクラウドファンディング実施(2020年)

商工会議所のメンバーと始めたプロジェクトでは”みりんのメニューや商品を通じて街を盛り上げる”という商業的な目線で実施していました。

しかし、モノゴトには歴史というものがあります。
流山みりんの歴史についてはチーム一同ほとんど理解できていなかったので、流山みりんの歴史に詳しい川根正教先生をお招きし、講義をしていただきました。

・・・難しかった!

講義を受けた後、
チームメンバーから言われたのが
「流山みりんの歴史をマンガにしたらいいんじゃない?」

流山みりんの歴史をしっかり扱っている書物は、講義をしてくださった川根先生の本一冊のみ。マンガにしたものは1冊もありません。
川根先生の本もすでに絶版となっていてなかなか手に入りにくい状態でしたし、歴史書というジャンルに属している書物で、かなり難しい内容です。

川根先生の書いた本を私が理解&咀嚼して、子どもも読めるようなわかりやすいマンガにしてみたらどうか?
と提案されたわけです。
カンタンにいうなよ〜!と思いましたが、たしかに、あると皆喜んでくれそうです。

そんな話が上がった矢先、流山商工会議所でクラウドファンディングを応援するイベントを実施することになりました。
なんというタイミングの良いことでしょうか。この企画に乗っかれば資金調達ができるかもしれません。

私自身、それより数年前に一度クラウドファンディングを実施したことがありました。
その際、計画を立てたり支援のお願いをするのが大変でへとへとになった記憶があります。

しかし今回は商工会議所が応援してくれる。
前回より楽にいけるのではないか?
いっちょ『マンガ流山みりん物語』の制作費はクラファンで集めてみるか!
軽はずみに引き受けてしまいました。

当時のクラファンの画面

いざ蓋を開けてみると、
複数プロジェクトの資金調達バトルみたいな状態、応援というよりはチキンレースみたいな、想像と全然違うヒリヒリした企画でした。
クラファンに関しては立ち上げから制作までの全ての期間が激烈に大変でしたが、それを語ると大幅に脱線するので今回ははしょります。

というわけで、なんやかんやでお金も集まり制作を終えて、『マンガ・流山みりん物語』は無事に完成しました!


6、『マンガ・流山みりん物語』完成!小学校の副読本になる(2021〜2023年)


マンガ・流山みりん物語の表紙

無事に『マンガ・流山みりん物語』完成!

年始からクラファンの準備で完成したのが12月、約一年間にわたってのプロジェクトが幕を閉じつつありました。
しかしゆっくりしてはいられません。その後すぐにプレスリリースを作って松戸の記者クラブに持参しました。

流山みりんを扱ったマンガということで、地元の情報を大切にする新聞記者さん達はすぐに目をかけてくれました。
主要新聞社すべてから取材を受け、記事にしていただけました。
またちょっとだけ取材が来るイラストレーターとして知名度が上がったと思います。

そして完成したマンガは流山市の教育委員会に持っていきました。
とても気に入っていただけた上、なんと
「2022年度から公立小学校の3年生の副読本にさせてください」とご相談が!

制作を始めた当初はここまで広がることは想定していませんでしたが、約1年かけて取り組んだプロジェクトでしたので、ぜひ多くの方(特に子ども達に)に読んでもらいたかったので願ったり叶ったりです。

7、そして今に至る

みりんちゃんの活動の話が続きましたが、私の流山での活動はこのような経緯を経て今があります。

現在ご依頼をいただいているのは、市内にある私立幼稚園の50周年記念誌用のマンガ制作。これまでの幼稚園の歴史や創設者の人となり・園の考え方を40Pほどのマンガにまとめています。

みりんちゃんの活動では、X(旧Twitter)をメインに、イベント出店で声をかけてもらえたら出動するスタイル。

みりんちゃんのXアカウント(@mirinkoboreume)

みりんちゃんに関しては、近々、少しがんばらないとならない出来事が起こるのですが、そこに向けて水面下での準備も進めています。

具体的な仕事の入り方は後編に

文字多めなところ、ここまでお付き合いいただきありがとうございました!

後編では
・具体的にどこ経由で仕事が入ってくるのか
・地元で仕事をすることの良かったこと、気をつけたいこと
・ご質問いただいた内容(Xで質問を募集しました・お寄せくださった皆さんありがとうございます)

を答えていきます。

以上、流山市からお届けしました。後編もお楽しみに!


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