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下鴨の白いヤツ

1000頭に1頭、ものすごく臭う
豚に当たる事があり、
業者ですら気づかないその匂いを
嗅ぎ分けられるようになった、
とご店主の井居さんは仰る。

毎日毎日、素材との格闘の中で
常人では窺い知れない努力を
続けてこられた賜物というよりも、
仕事と向き合う男の孤独さ、そして
哀愁を感じるのは同世代故だろうか。

老い鶏で深みを、
小ぶりの豚骨でコクを、
鬼が目利きした鶏豚骨な一杯は
恐ろしいほどニュートラルで、
獣系のラーメンらしさを残しながらも
嫌なクセなど微塵も感じさせない。

その中でも自分は、
下鴨の白いヤツ、ソルト・ガンダムと
勝手に名付けた白い塩ラーメンに
かれこれ十数年以上恋してる。
一番人気ではないけれど、
在るようで無かったここだけの味に
毎回癒され、腑抜けにされ、
殺られ続けている(笑)

同様にラーメンと肩を並べる焼き飯も
ほとんどの方がセットで注文、
ガッコン!ガッコン!と厨房の奥から
小気味よい鉄のビートが聞こえてくる。
今や息子さんとふたり鷹の井居さん、
こればかりはと自慢の腕を振るう。

客の顔を見渡すと、みんないい顔している。
多分、自分も同じような顔をしているはず。
”魂” を感じたのなら、笑顔で返す他ない。

【いいちょラーメン 塩ラーメン】

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