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小市民のささやかな抵抗

京都水族館近くの

JRの高架下から続く離合にて。

狭く短い見通しの悪い上がり坂を

ゆっくり前進していくと、

下りのクルマがどんどん下りてくる。

それでも上りのこちらが優先なので

そのままゆっくり進むと、

新たに頭を突っ込む

1台のクルマと鉢合わせになった。
 


相手側は、道を上り切ったところに

設置してある上りの車に配慮した

一旦停止用のコンクリートの張り出しに

頭をねじ込んできているので、

そこでお互い動けなくなっている。
 


手のリアクションで

バックするように促すが、

全く動こうとしない。

おかしいな、と思ってたら

サングラスをした痩躯で丸坊主の

いかつい男がクルマから下りてきて、

怒り顔でこちらに近づいてくる。
 


「なんじゃい、わしに下がれてか!

後ろつまってんのや!

お前が下がらんかいや!」

 

あかん、こわすぎる〜!

 

確かに上り坂の途中なので、

後続車は見えなかった。

クルマをバックすると、

男は小走りでクルマに戻った。
 

下りてきたそのクルマの男と

すれ違いざまに

開けた窓どうしで顔を見合わせた。

くそう。

こちらは悪くないんだから、

せめて相手の顔に目を逸らさず、

確認ぐらいはしとかなきゃ。

 

「にいちゃん(ニヤリ)、

後ろにクルマが続いてへんかったら

バックしとったんやで♡」

 

ごめんともすまんとも

言わないけど、それで納得できた。

にいちゃんと呼ばれるで歳では

ないけれど、

こういう人でよかった。

キレたら手の付けられない

もっと危険な人だって

世の中にはいるだろうし、

運転中は不測の事態に、

常にいつでも遭遇する可能性が

あるという事だ。

 

同じく、水族館近くの

「拳ラーメン」さんにて。

 

見た目そのままの危険信号を放つ

その【但馬牛肉担々麺】は、

舌に刺す様な痛みを伴わせるほどの

はっきりとしたパンチが効いている。

一瞬、「ヤバい!」と思いつつ、

食べ進めていくと担々麺には珍しい、

但馬牛の牛骨スープのまろやかさが

顔を覗かせ始め、こういう一面のある

一杯でよかったな、と納得する。

む。これって離合のスキンヘッド

そのままではないか。

 

「にいちゃん(ニヤリ)、

また会うたな♡」

 

だから、にいちゃんじゃ

ないっつーの。

水族館近くでは、何かが起こる。

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