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ワンピースを着た女

洗濯が終わる15分前に柔軟剤を入れに行かなければならない。厚い雲に覆われた朝の空は暗く、外はほんの少しだけ涼しい。一人暮らしになって洗濯する回数が減ったのに、こんな日に限って、曇りがちであるなと感じる。

ロックを解除し、柔軟剤を入れた。残りの時間を待たなければならない。コインランドリーの特徴ある臭いから逃れるようにして、外にある椅子に座った。通勤中のサラリーマンや登校中の小中学生たちが忙しなく右から左へ流れていく。思考は停止中で、ぼーっと流れを眺めていた。

ふと、彼らの行く方向とは逆に進んでくる綺麗な黒髪の女性に気づいた。同じ夏を過ごしているとは思えないほど肌が白く見える。猫背で背が丸まっており、下を向いていて表情はわからない。白いワンピースの華やかさはすっかり消えて、少し夜の香りを纏い、くたびれているように見えた。

ゆったりと、彼らの間を抜けて、私の少し前を過ぎ去り、消えていった。一日を始めようとするもの、一日を閉じようとするもの、そのコントラストに心が奪われ、去りゆく姿を眺めていた。

昨日に閉じ込めてきた何かが、夜を越えてこの世に生まれてしまったような気がした。

小さな頃は、一日一日で何かを覚えて帰ってきた。何もしてない日は無かった。しかし、今では過ぎる時間に身を任せ、共に流れていくような生活を送っている。時折、振り返ると、何も積み上げていない日々に気づく。後悔の念に苛まれる前に、感情を押し殺して眠る。翌日には、忘れている。

ずっと心の片隅に抑えていた感情が湧いてきた。

気づけば、洗濯は終わっていた。干し終わったら、今日は文を書こうと思う。

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