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たそがれ祐天寺

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学生の時に東京に出て来て初めて住んだ町が「祐天寺」。 渋谷から3つめの駅というきわめて至便な立地でありながら、ひとたび駅前に降り立つと、思いのほか小振りなロータリー、駒沢通りに続…
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#関口和之

青可荘203号室、思い出が染みついた部屋

青山学院大学2年生から約5年間、サザンでデビューしてからもしばらく住んでいたのが祐天寺駅近くの6畳一間の下宿でした。半畳のキッチン付きで風呂なしトイレ共同、階下には大家のおばあさんが障害者の娘さんと二人暮らししていました。 1万5千円という格安な家賃と、祐天寺駅から徒歩3分という立地の良さが気に入って引っ越したのですが、学校のある渋谷から10分ほどという便利さのせいか、訪問者はひっきりなしでした。最高滞在人数15人という記録も作ったその六畳間にしょっちゅう出入りしていたのは

祐天寺の観光名所、鉄道とカレーの店「ナイアガラ」

 祐天寺という駅名は駒沢通り沿いに建つ、享保8年に開かれた浄土宗の寺院、祐天寺が由来です。しかし、祐天寺観光名所ナンバーワンはどこか?聞かれたら、それは祐天寺ではありません。おそらく祐天寺住人の10人中9人が「ナイアガラ」と答えることでしょう。祐天寺に来たからには一度は立ち寄らなければいけないお店、それがナイアガラというわけです。  銀座「ナイルレストラン」から提供される香辛料とギーを基にしたというカレーはしっとりと優しく、今となってはあまり出会わない味かもしれません。僕は

来々軒の中華丼

青山学院大学の学生だったころ、Kという先輩に頼まれて、なけなしのお金を貸したことがありました。金額はたぶん5千円くらいだったと思います。月々の仕送りが3万円だった僕にとってそれがどれほどの大金であったか、そして貧乏学生の典型だった僕にお金を貸せというのだからそれがどんな先輩かは容易にわかっていただけるかと思います。そして、ほどなく僕を打ちのめすバッドな情報が・・。彼はどうやら借金を踏み倒すことで有名な男だったのです。当然のことながら僕はお金を貸したことを後悔する日々を送ること