DXで温かみのある、顧客の本音を引き出すツールとは
弊社は、「わたしたちが未来を創造する」というコンセプトを掲げ、持続可能な価値を生み出すことを意識し活動しており、地域や事業者様と共創しながら、事業開発や課題解決の支援や仕組みづくりをしています。
オーバーツーリズムに直面していた合掌造り集落として有名な岐阜県・白川郷のライトアップイベントを「完全予約制・イベント有償化」という斬新的な切り口で設計・戦略・運営を行い、課題解決に導き、2019年「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー」の地方創生大賞を受賞しました。
観光イベントや施設運営に関わることが多い中、マーケティング戦略において、従来のアンケートでは顧客の深層心理を探ることが難しいという課題を感じていました。
新規事業のPDCAサイクルが、ホンネPOSTの導入前後でどのように変化したのか。
3つの導入事例について紹介していきます。
ケース1:浅草 屋形船での新商品ツアー開発
お客様の"生の声"で見落としていた隠れニーズに気づく
顧客アンケートについて感じていた課題
ホンネPOST導入前はGoogleフォームやsurveymonkeyなどのアンケートツールを利用していました。ただ、集まる意見は表面的な回答が多く、お客様の「思い」や「感情」を深く知ることまでには至っていませんでした。
スタッフがお客様の声を現場でヒアリングすることも多々ありましたが、聞ける範囲・内容に限界がある上、聞く人によって解像度にバラつきが生じてしまいます。アンケートの目的は、顧客視点を知ることでサービス改善にどのように活かしていくかが大切です。
良いサービスを創るためにも、より効率的に顧客心理を知り、深掘りできる方法はないかと考えていました。
ホンネPOSTを知ったときの印象と導入した決め手
お客様の本音を引き出す「心にフォーカスしたサービス設計」に温かみを感じました。テクノロジーを活用したツールは、技術的なポイントが強調されがちですが、ホンネPOSTは「感情」に焦点を当てているため、顧客の深層心理を探るだけでなく、事業者と顧客の心も繋ぐことができると確信しました。
特に新規事業においては深層心理に至る顧客ニーズを把握する必要があり、その点に難しさを感じていたため、まずは屋形船の新たなサービスのお披露目会兼試乗会でホンネPOSTを導入することに決めました。
導入して得られた結果
初めてホンネPOSTを利用したのは、『お江戸の川遊びへおいでなんし』という当社開発のARアプリを活用した試乗会イベントです。伝統文化である屋形船とAR技術を活用し、アプリを通じて約150年前の江戸時代の川辺の様子を楽しめます。
ホンネPOSTを導入した結果、参加者の約半数の170名から累計577件もの回答が得られました。
内容も平均56文字・最大400文字を超える回答があり、具体的な内容からサービス改善につながるヒントが多くありました。回答を見て驚いたのは、「こうしたらもっと良くなる」といった、前向きで具体的な提案をしてくださる声がたくさん寄せられたことです。これは従来やっていたアンケートにはあまり見られない内容でした。不満をもつ内容でも否定ではなく、このようなポジティブな提案が多かった理由は、回答方法がLINEということも関係あるのではないかと思います。
日常で使っているLINEで行うため、いい意味でアンケートっぽくなく友達に送るような感覚で気軽にメッセージを書いていただけた印象です。また、ホンネPOSTは従来のアンケートのように決まった質問を一方的に聞くのではなく、お客様が感じた本音を自由に記述してもらうように設計しているため、運営側がハッと気付かされる見落としていた意見が得られました。
印象に残っている声や具体的に改善につながったもの
1つめは「ツアー中の船内ガイド」に対する意見です。屋形船の豆知識・歴史知識を踏まえた解説や、ARアプリの楽しみ方の紹介などが欲しいという多数の声がありました。そのおかげで、ガイドの力量や親しみやすさが顧客満足度に大きく影響することに気づき、別のツアーでは松竹芸能のお笑い芸人の方に司会を依頼しました。その結果、ガイドの説明や話術のレベルが上がり、お客様の満足度も高く、心に残るツアーになったと感じています。
【 実際にPOSTされた声 】
2つめは、ARアプリの技術面への意見です。好意的な意見も多かった一方、記念撮影時のカメラ機能の不具合や、魚釣りゲームに関する具体的な要望などが多く寄せられました。
【 実際にPOSTされた声 】
その他の意見として、スカイツリーの前で停船して写真が撮れる時間をとっていたのですが、それに対して「角度がずれていて綺麗に撮れない」という声もありました。
【 実際にPOSTされた声 】
こういった内容は運営側では気づきにくく、お客様の隠れたニーズを把握できる意見が多く寄せられました。試乗会のタイミングで多くのフィードバックがもらえたため、事前に改善して本番のリリースに臨めたのが良かったですね。
ケース2:震災機構・浪江町立請戸小学校
一人ひとりの想いや意見と向き合うような感覚
―その後、「浪江町立請戸小学校」でもホンネPOSTを利用いただきました。導入前の課題や導入の経緯を教えていただけますか?
福島県浪江町(なみえまち)に位置する請戸(うけど)小学校は、東日本大震災発生時に在校中だった児童・教員全員が、津波被害から無事避難できた奇跡の学校として知られています。倒壊を免れた校舎に刻まれた脅威と、全員が避難できた経験を伝えるため、現在は震災遺構として被災当時のまま保存され見学が可能です。私たちは浪江町から業務依頼を受けて、情報発信や現場活動を支援しています。
請戸小学校では訪問者の声を聞く方法として、自由にメッセージが書けるノートを置いています。多くの応援メッセージが記載されていますが、施設に関する要望などはほとんどありません。また、メッセージを記録に残すため、スタッフの方がノートを文字起こししてタイピングする作業も発生していました。
ノートの場合、書く時間がなかったり、他の人に見られることを懸念して躊躇ったりする人が多いのではないかと仮説しました。そこで、ホンネPOSTを活用して、いつでも匿名で感想を送れるようにすることで、訪問者の率直な声を集めることにしました。
―どのような声が集まったのでしょうか?意見をもとに実際に改善したことはありますか?
約2ヶ月間で116件の声が集まり、内容も平均120文字、最大731文字と具体的な感想が多く寄せられました。具体的には、訪問者自身が過去に経験した震災の記憶を振り返ったり、「自分たちが被害を受けていないからこそ、経験した方々から学ぼう」「友人や家族に伝えます、また来ます」といった声などが寄せられたりました。運営側としても、当時の記憶を風化させず、訪問した方々の防災意識を高めたいという震災遺構としての目的が伝わっていることを確認できました。
【 実際にPOSTされた声 】
訪問者の割合は個人で来られる方が7割、団体の方が3割です。団体の方々は修学旅行や企業研修などで訪問するケースが多く、個人に比べて目的意識が違うこともわかりました。この結果を踏まえて、館内案内用のリーフレットを一新し、訪問者に「何を感じてもらうか」に焦点を当てたり、当時の情景が思い浮かぶような内容を挿入したり、メッセージ性のあるものに変更しました。
「阪神淡路大震災を経験していて、ここに来たことでまた身が引き締まりました」など個人の体験を書いてくださる方も多く、「これほど熱量の高いメッセ―ジを送っていただけるのか」と驚くことが多かったです。訪問者も感じたことをどこかに吐き出したい気持ちがあり、その役割をホンネPOSTが担っていると感じます。アンケートとして回答を集計するというより、一人ひとりの想いや意見と向き合っている気持ちになりました。
―運営事業者の方からの反応はいかがでしたか?
これまでのノートに比べて、LINEで送れるホンネPOSTは時間の制約がなく、具体的で詳細な内容やリアルな声が聞けたという意見もありました。
ケース3:葛飾区柴又 寅さんサミット2022
紙で時間的制約がある中で、質問事項のアンケートだと"その場しのぎな回答"しか集まらない
―「寅さんサミット2022」でも、ホンネPOSTを利用いただきました。導入前の課題や導入の経緯を教えていただけますか?
寅さんサミットは、「日本の原風景を守り、後世に伝える」をテーマに、映画『男はつらいよ』で登場した全国各地のロケ地から18の自治体が柴又に集まり、各地が大切にしている原風景や文化芸能、グルメや特産品を楽しめる柴又の一大イベントで、2015年から毎年行われています。
柴又観光協会・帝釈天参道商店街組合の方に話を聞いた際、「寅さんを知らない若者の姿も増えてきているが、彼らが何を目的に来ているのか理由が掴めていない」「観光客の声に耳を傾けてニーズを掴み、柴又の観光戦略の打ち手に活かしたい」という想いを聞き、寅さんサミットにおける観光客の効果測定の支援をさせていただくことになりました。
例年サミットでは、葛飾区観光課で紙のアンケート調査(Webと併用)が実施され、約20個の質問に回答すると寅さんの記念グッズがもらえるというものでした。過去のアンケート結果を見たところ、イベント自体に対する改善点や今後に繋がるデータが少ない印象をもちました。加えて、紙のアンケートでは集計作業が膨大のため完了まで3〜4ヶ月もかかっていました。今回は、例年の観光課のアンケート調査と並行して、ホンネPOSTを導入させてもらいました。
-- どのような声が集まったのでしょうか?
2日間で345件の回答が集まり、内容も平均75文字・最大532文字で様々な声が寄せられました。7割は好意的な声で、残りの3割がリクエスト・不満という感じですね。例えば、福引を楽しみに来るお客様が例年たくさんいるのですが、抽選券の取得方法やルールが分かりにくいという意見が多数ありました。
感情分析ダッシュボードのイメージ。ホンネPOSTで集まったお客様の声は、「好意的」「改善の余地がある点」ごとに分類され、多い要素から順位化されて表示される。
【 実際にPOSTされた声 】
また、メイン広場が柴又駅から少し離れているので迷ってしまったという声や、会場全体が広いため、全体の詳しいマップや案内が欲しいという声も多数ありました。
これらは私たちも感じていたことでしたが、お客様の"生の声"を聞けたことで改めて課題が明確になりました。また、このイベントでは多くの寅さんファンの方が自前の寅さん衣装で会場内を歩いています。その光景に対して、「寅さんのコスプレをしている方を見かけると満足度が大きく上がる」という声が意外に多くあることに気付きました。
振り返りMTGでは、来年は寅さんコンテストやコスプレをしてくれた方に商品の割引をするのはどうか?というアイデアも出ましたね。
【 実際にPOSTされた声 】
こうした意見は、これまでのアンケートでは出てこなかったものでした。
フリーコメント欄は用意していたものの、ほかの質問事項が多くアンケートに答える時間が取りにくいので、適当な回答になっていたのだと思います。このイベントに限らず、一般的なアンケートで起きがちな課題です。
また、ホンネPOSTは3日後には分析データが出て、1週間後には振り返りミーティングを実施できました。従来のアンケート集計に数ヶ月かかっていたことを考えると、非常に早くて驚きました。
-- さまざまなイベントでホンネPOSTをご利用いただいています。どのような事業者さまや利用シーンに合うと思いますか?
私たちが利用した経験をもとにお話しすると、3つあります。
1つめは、新たな商品・サービスの市場価値を測るためのテストマーケティングやイベント、プレローンチの段階で導入することは向いていると思います。完璧に作りこむ前にお客様のリアルな声を商品・サービスに反映することができると感じました。
2つめは、お客様からの声を随時受け取ることができるため、ファンマーケティングに活用することです。時間をかけて書いてほしい感想を集めたり、匿名のままで返事を出せたりする中で、事業者側は顧客の声に応じて返信ができます。請戸小学校のように、想いを自由に綴れる場所として活用したり、地域や施設、事業者を応援したいというニーズともマッチします。
3つめは、紙のアンケートを実施している事業者さんです。
ホンネPOSTはLINEを利用しているので、回答する場所や時間を選びません。イベントの帰宅後でも感想を書くことができます。
また、集計・分析を効率良くできるため、新しい施策やサービスローンチのスピード感を上げたい事業者さんにも良いと思います。ホンネPOSTは従来のアンケートの意義を問い直すサービスだと思います。アンケートは結果を次の施策に生かすための手段であるはずが、アンケートで回答を集めること自体が目的化してしまうことが多いからです。
―他に「ホンネPOSTのここがいい!」というポイントがありましたら、教えてください。
温かみだと思います。
日常でも利用するLINEで手軽に送れる良さがあり、UIに手紙の要素が入っているため、手紙の魅力とデジタルの便利さが融合しています。
私見ですが、ホンネPOSTに書き込んでくださる方は、一度書いてから書き直したりしているんじゃないかと思うんです。最初は「すごくよかった」とシンプルな感想を書いたけど、「いや、この内容で送るのはな」と思って書き直す。手紙を書くときに、下書きを書いてあっても書き直したりするのと同じ感覚です。そんなことを繰り返す内に、書き手の気持ちがだんだんと熱を帯びてきて、深層心理に迫るメッセージが送られるのではないかと思います。
ーありがとうございました。藤田さんが大切にされている「目の前のお客様に徹底的に集中しよう」という言葉が印象的で、ホンネPOSTの取り組みにおいても、お客様の声を1つ1つ丁寧に読み解き、あらゆる角度から顧客ニーズを分析し、すぐさま改善実行に繋げる行動力を発揮されていました。「顧客起点でPDCAを回す」ことを体現するNOFATEさんが手がける事業も是非楽しみにしています!
引用元:https://lp.honnepost.com/case/nofate
*本記事は、株式会社はこぶんによる「ホンネPOST」にて取材・掲載された内容を元に記載しています。
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