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伝統産業とデジタルを融合した新たな体験コンテンツ

いつの時代も、変革の物語は誰かの夢から動いていくー….

東京は隅田川や台場に浮かぶ屋形船。ARアプリ「お江戸の川遊びへおいでなんし」では、かつての江戸時代の賑わいを再現し、タイムスリップ気分を味わいながら、船上でさらなる非日常感を体験できます。(制作会社:株式会社ジーン)

コロナウイルスの影響により、業界全体は大きく打撃を受け、存続が危ぶまれる状況となってしまった屋形船。

そんな中、江戸時代から続いた東京の文化を守り続けたい。また水上のエンターテイメントとして、もっと屋形船の魅力を引き出せるのではないか。
そんな想いを抱いた弊社代表の藤田は立ち上がりました。

これまでどんな取り組みをしてきたかというと…

・パニック屋形船シアター
屋形船という逃げ場のない空間で繰り広げられる、没入型の体験アトラクション。イマーシブ空間を演出することを目的に商品開発が始まり、松竹お化け本舗合同会社エンピツの劇団フルタ丸との協業。
イマーシブ・フォート東京より先にイマーシブに挑戦!

ハイカラぶね
昔懐かしい空間で、縁日のような雰囲気を子連れで楽しめる。松竹芸能と協業し、芸人の斗澤やすあきさんが司会を務める。

そんな中でも今回は「伝統産業 × デジタル化」を実現させ、屋形船の新たな楽しみ方をつくったARの事例をご紹介します。

ピンチのときこそ“ビジネスモデルを変革するチャンス”に

皆さんは、”屋形船”に対して、どんなイメージを抱きますか?

忘年会や誰かのお祝いごとをしたり、河川で食事や宴会を楽しむ風景を浮かぶ方が多いのではないでしょうか?
そんな屋形船では、2020年に始まった新型コロナウィルス蔓延の初期に、集団感染が発生してしまいました。その後も、飲食や観光業界同様大きな打撃を受けました。コロナ前と比較すると70-90%も予約が減る、という状況が2年も続き、苦境に立たされることになります。

コロナ蔓延の当初より「密閉された空間」という誤まった風評が広がり、予約のキャンセルが相次ぎ、存続も危ぶまれるほどでした。感染者増加の報道の度に、少ないながらも入っていた予約はキャンセルとなる日々を、第6波くらいまでこれを繰り返してきました。

この状況をどうにか打破できないか…。
そう屋形船業界が頭を悩ませていたところ、同じく隅田川の表情が悲壮感漂い、寂しい顔をしていると感じた弊社藤田と出会い、一緒に解決方法を模索をしていくことになったのです。そして、コロナ禍の新しい日常を支援する東京都の取組を活用することで、ピンチをチャンスに変えられる機会を得ました。

現代にいながらも江戸時代の雰囲気を満喫!

そんな中で取り組んだのが、ARアプリ 「お江戸の川遊びへおいでなんし」の制作です。

平安時代から200年もの歴史を繋ぎ、江戸時代に栄た屋形船。このアプリを通して、スマホやタブレットで江戸時代の川の様子や花火を見たり、当時いた魚を釣ったりできるゲームが楽します。実際に目で見て江戸と現代の融合を感じることができ、日本人だけでなく、インバウンドの方にも説明なしで楽しんでもらえる体験として開発されました。

単に制作するだけでなく、お客様に本当にタイムスリップしたかのように楽しんでもらいたい。そして、東京に残る屋形船の価値を紡いでいきたい。
そんな想いを抱きながら、よりヒントを得るために、AR制作会社ジーンの曽根さんと江戸時代の展示がある博物館に何度も足を運び、ついにARアプリが完成させます。

インバウンド再開時を見据えて、 外国人観光客向けのコンテンツを作成

実際に体験していただいた方の写真です。お客様のスマホやタブレットを船から川や湾に向けると、まさにタイムスリップ気分。

黒船来航の翌年の時代設定をしており、江戸の船頭さんや武士、花魁、花火師など合計50パターンの人物が蘇ります。現代の風景と融合し、江戸弁をまくしたてた花魁がこちらに声を掛けてきたり、花火が打ち上がったり。

こんなに沢山いるにも関わらず、実は人物は5パターンほど!
AR制作は金額も工数もかなりかかるため、あえて一人ひとりを描き分けずにすることで、予算を抑えています。これ、実はサザエさんから得たアイディアなんですよ。

また、外国人観光客の受け入れ再開を見通した工夫もつけています。
登場人物のクイズや豆知識をターゲット層に分けて作成し、学び楽しみながら体験できるリーフレットを作成しました。例えば、外国人向けには花魁やたまやの意味など、江戸文化を説明したり。日本人向けには観光スポットや歴史に関する知識を紹介したり。 2021年の7月に制作をスタートしたアプリは、試行錯誤しながら2022年2月に完成しました。

従来とは異なるスタイルで、新たなファン獲得へ

この取組では、質をブラッシュアップするためのテストマーケティング期間を設けています。その一環として、2021年12月と2022年1月には、事業者向け・一般向けに実演テストを行いました。

実際に使用してもらうと、天ぷらにお刺身、花火、といった従来の屋形船にとらわれない楽しみ方は、お客様にとって斬新に映るようでした。ARアプリを入口に敷居を下げることで、日本人の若年層や家族向け、さらには外国人にアプローチすることができます。

令和の時代に突入した屋形船。
守り続けるべき大切な本質を見極めながら、新たな切り口で価値を広げていき、伝統文化を残していく画期的な取組でした!

こちらの動画では、より実践的なポイントをまとめています!

執筆:Storytellerこと、南條佑佳


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