探偵じゃないグッドガールの行きつく先――「卒業生には向かない真実」まで読んだ話

つい最近、ホリー・ジャクソン『卒業生には向かない真実』を読了したので感想を書く。物語の核心を突くネタバレはしないが、察しのいい人が読むとちょっと危ないかもしれないので、注意。
どちらかというと、読み終わったあとの人が「そうだねー……」って思いながら読む用の文章な気がする。


1作目『自由研究には向かない殺人』でピップのファンになり、2作目『優等生は探偵に向かない』のラストでとても悲しくなり(でも面白かった)、今作を手に取った。

世界が変わってしまった

2作目を経て、完全にピップが健全でない状態にあることが序盤からわかって、悲しくなる。1作目のいちばん最初、シン家を訪ねてきたときのピップとの落差にすでに泣きそうになった。

彼女はあの件がトラウマになっていて、幻覚や幻聴、不眠に悩まされている。それを克服するために「白黒はっきりつく事件」を自分の手で解決して、探偵のようなことはもうやめようとしている。きれいな終わり方を求めている。幕を引いて新しい生活を始めたいと思っている……。

愛されて育ってきたティーンの優等生が、自分の腕の中で人が傷ついて死ぬところを目の当りにしたら、平常心ではいられないよね……。しかもピップ自身はそれを自分のせいだと感じている。自分の手は血で汚れていると思っている。頭のいい子だから、いろんなことを考えてしまう。
その心理描写がつらかった。
探偵じゃないただのグッドガールには重すぎる事件を扱いすぎてしまった。人より少し好奇心と行動力があって頭がよかっただけで、ピップはぜんぜん探偵に向いてはいなかったんだよな……。

今作は本当に、これまでとは世界が変わってしまう話だなと思った。ピップの様子とか、あの人の裏側の事情とか、第1部の最後とか……。

ずっと重苦しい空気が漂った作品だった。3はどちらかというとミステリー要素よりも「血にまみれながら難事件を解決してきたふつうの少女はどうなっていくのか」を描いている気がした。「ミステリーが読みてぇんだよ!」って人にはあまり向いてないのかな?
私はミステリーを読むときには謎を解かず、サスペンス的な楽しみ方をするタイプなので楽しめた。

ピップの幸福を求めてやまない

最後まで読んで思ったことは、「ピップ! 幸せになれ!!!!」だった。ラストのメッセージはちょっとわくわくした。どうかラヴィと仲良く、最高のコンビでいてくれよな……。

彼女の本当の幸福を思うと、もうピップの物語は終わりで良いなという気持ちもある。もちろん続きが出たとしたら(ないと思うけど)喜んで読むけれど。

いまは前日譚の『受験生は謎解きに向かない』を読もうとしているところで、登場人物紹介でもう膝から崩れ落ちた。

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