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[番外編]イスラエルの尋問は成田にて

大阪在住の僕は、11時発の便で伊丹空港を発ち、
羽田からリムジンバスを乗り継いで、成田へ。
わざわざ成田に来たのは、
ここからイスラエルへの直行便が出ているから。

空港でバックパック用の鍵とネックピローを購入。
イスラエルのフラッグキャリア
エル・アル航空のチェックインカウンターへ向かう。

その途中、エル・アル航空の成田便就航式の会場が。
式典終了後の余韻が漂う。
今月就航したばかりだもんな。
 
フライト時刻17時15分の2時間前、
15時10分頃にはチェックインカウンターに到着。
北ウィングの一番奥。
到着早々、カウンターに向かおうとするのを制して、
アジア系の男性スタッフが立ちはだかる。
パスポートを見せろと。
eチケットを見せようとすると、
そうじゃなくパスポートだと。
…何かがおかしい。

この奥にあるチェックインカウンターの写真は「上司の男」に消去させられた

ここから、怒涛の質問攻めが始まる。

旅行は何日間の予定だ?
ホテルはどこだ?
帰りの便は?
帰りの便のチケットを見せろ。
なぜエル・アルで往復しない?
安さを求めるなら往復キャセイでええやろ?
仕事は何だ?
テレビディレクターって何をする?
ディレクターはCEOより偉いのか?
具体的に仕事はどんなことをする?
どれくらい忙しい?
会社名は?
社員は何人?

…仕事や会社は、旅行と関係あるの?
聞いては見たけど、
「セキュリティのため」。その一言のみ。

担当する番組のホームページを見せたり、
たまたまあった
自分の名前が出ているエンドロールの画像を
見せたりしましたよ。

そしてまた、旅行の質問に。

なぜイスラエルに行く?
アラブ諸国に行ったことはあるか?
トルコにはなぜ行った?
妻はなぜ一緒じゃない?
いつから旅行を計画した?
なぜパスポートが新しい?
なぜ全ての日程でホテルを予約していない?
日本人なら全て計画的に進めるはずだ。

日本人はみんな計画的?
これには、さすがに
「それは、あなたが勝手に抱くステレオタイプ」
だと反論したり。
それが僕の旅のスタイルなだけなんだけど。

イスラエルのセキュリティチェックが厳しいことは
以前から何となくは聞いていたけど、
離陸する前なのにこれ?まだここ日本だよね?

埒が明かないので、
日本語がわかるスタッフを呼んでもらった。
同じような質問が繰り返される。
 
僕が口走った「イスラエルに行くのが夢だった」
という言葉に引っかかったのか、
通訳役のスタッフも追及を始める。

具体的にイスラエルの何を見たい?
エルサレムなら何を見たい?
行きたいところが決まってるなら、
なぜ計画を立てない?
 
…そんなに尋問する?
堪りかねて言っちゃった。
「自由に旅行するのが許されない国なの?」
 
でも、そういう訳ではないと言う。
 
そして、上司に聞いてくると離席。
その上司は、僕が待たされてる間に
カウンターの写真を撮った直後、
「消せ」と要求してきた坊主頭の男だ。
何か揉めてる?
10分くらい、離れた場所でやりとり。

2人がまた帰ってくる。
two more questions
もうええって。。
 
3泊目以降は予約してないけど、どうするんだ?
そんなん、行ってみないとわからないこともあるでしょ。
行きたい場所が現地で出てきても、
予定ガチガチだと融通効かないでしょ!



…。

ようやく解放。
チェックインカウンターの手続きは、3分ほど。
さっきまでのは何やったんや。

この時点で、時刻は16時を過ぎている。
フライトまで1時間、
この先、保安検査場とかが混んでたら
フライトに間に合わない。
尋問してきた彼らも「急げ」と急かす。
どの口が…。
 
とりあえず、急がないと。
保安検査場はスムーズに通過。
出国審査は全自動。ものの20秒。
 
エルアル航空は、18番ゲート。
無事に到着!
しかしその途端、「手荷物検査させろ」。
…まだやるの?
エル・アル航空のチェックは終わっていなかった模様。

タバコとバラマキお菓子を買いたかったから、
「すぐに戻る」と告げてDutyFreeへ。
戻ると、怒涛の手荷物検査の始まり。

カバンの中を全て開けられ、シャツも下着も放り出される。
買ったばかりのネックピローもこじ開けられた。
スマホなどの小物にも全て探知機みたいなのを当てている。
全てのものをくまなく隅々までチェック。
そして、チェックが済んだら「はい、おしまい」。
荷物の詰め直しはご自身でどうぞ。

…シンプルに気悪いよね。
でも、最後は「Have a nice trip!」だって。
セキュリティ厳しい国だと覚悟しても、
日本にいる段階でこれはちょっと…。

イスラエル大使館が
直行便での観光をオススメしてたけど、
このままでは日本人は寄り付かんね、たぶん。 
 
てか、18番ゲート周辺は、ほぼイスラエル人。
中にはあの小さい帽子「キッパ」を被った男性も。
近くのグループが何か話している。
たぶんイスラエルの言葉。わからん。
 
機内は、プレミアムエコノミー。
国内線のエコノミーよりは少し広いか。
隣は、ぽっちゃりおばちゃん。50代くらい?
着座するなり本を読み始めた彼女とは、
まだほとんど話してない。挨拶程度。
 
機内に日本人らしき姿は見えないなあ。
もちろん?みんなノーマスク。
※2023年3月、コロナ禍はまだ明け切っていない頃。
 
離陸する手前のこの時点で、すでに疲弊困憊。
果たしてこの先どうなるのか…。

不安と期待をない交ぜに、いよいよ離陸の時間。


ちなみに、ベン・グリオン国際空港に到着後の
セキュリティチェックは、
拍子抜けするほどあっさり。
ものの3分程度で通過できました。

この記事は、30代のテレビ制作者である筆者が、ガザでの戦闘開始から遡ること半年前の2023年春、イスラエルとパレスチナを一人旅したときに書き留めたノンフィクション日記です。
本業では日々のニュースを扱う仕事に関わり、公正中立を是としていますが、この日記では私見や、ともすれば偏見も含まれているかもしれません。
それでも、戦争・紛争のニュースばかりが伝えられるこの地域のリアルを少しでも感じてほしいと、自身の体験や感情をありのままに綴ります。
いつかこの地に平穏が訪れ、旅行先として当たり前の選択肢となる―。
そして、この日記が旅の一助となる日が来ることを信じて。

TVディレクターのおちつかない旅 筆者

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