ダンス素人の見方⑪ Government Alpha+田中直美+今井琴美+白鳥雄也

岩屑流 vol.2
即興者:
Government Alpha (Noise/Electronics)
+
Naomi Tanaka, Kotomi Imai, Yuya Shiratori (Contemporary Dance)
opening / closing dj:jam (地底都市アガルタ)

まさにまさに、これぞアンダーグラウンドという店で、めちゃめちゃカッコいいダンスを見る。こういう場所に自分のような人間が足を運ぶようになるなんて、面白い。

暗い。何が起ころうとしているのか。ダンサーがライトをツケル。音楽が、凶悪だ。インダストリアルっていうんですかね、激烈なノイズ。ところが、どことなくポップで抜けがいい。そしてこの店は音が過剰に跳ね返らず聴きやすい。背の高い女が、長い髪を垂らしながら、手が床につくまで前屈。サダコか。爆音に五体を震わせながら、たまらないように体をうねらす。全身が液状化したように。音楽は四つ打ちにくるかな、と思ったが、よりグチャグチャのノイズへ向かう。暴力温泉芸者みたいなやつ。ダンサーはタッパがあり胸がふくよかなので、身体に量感があるが、外観を上回る強烈なうねりが腹の底からわき起こってくる。しかも勢い任せではなく安定感があり、スケールが大きい。 内奥からわき起こってくる激しい衝動を十全に解き放ちつつ、それが常に均衡を崩さぬよう見事に制御されているのは、心がけているというよりは、身に染み付いた美意識の成せるわざか。ゆえに遅れが生じずに整合と崩落が同時に来る。衝動的なのにスタイリッシュ。切ないような可憐さと貫禄が同居する。彼女の存在によって空間が埋め尽くされていくような強烈なバイブレーション。エロティックというにはバイオレンスすぎるが、バイオレンスというにはエロティックすぎる。

もう一人、髪を結い上げた小柄な女が壁際で、深く腰を落とし、下半身にかけた力を油圧シリンダーのように全身に伝えていく。ロボットのように一見ぎこちなく、しかし関節はなめらかに、ななめにずれ動かし、カモシカのような足を上げる。負荷をかけることで故意に硬直性を生み出しつつ、同時にそれを部分的に溶かしてゆくことで、柔らかくなりかけたバターを押し潰すような感触を視覚的に表現する。ロボットが演じるバリ舞踊みたいだ。

高さと低さ、伸び上がると縮める、解凍と拘縮、対照的な踊り手たちだが、二人とも指先の表現に強く気を配っている点につながりを感じる。そしてもう一人、床を這うように地味に動いているのは細身の男だ。こちらは少し演技性が入っていて、女たちの動静をうかがうような感じ。

三者が交錯して休憩後、セカンドセットはさらに接近した絡み合い。男性もたくましい裸形をさらけ出す。価値判断をわきに置いて、各自がエゴと欲望をありのままに形象化することを目論みつつ、互いのレスポンスを甘受して、また自己の真意を見つめなおす。コンタクト・インプロヴィゼーションの影響がありつつも、常に「見せる」ことを意識して練り上げられた身体のあり方。齟齬と癒着が循環する筋書きのないドラマ。エネルギッシュで官能的であると同時に肉体をまとった仮面芸のように仮構性、ゆえに「期せずして」教訓的でもある。音楽もきわめてノイジーでハードでありながら聴きやすくテンポを感じさせる流暢さ。徹底的に攻めまくるイベントで圧巻でした。

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