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同人誌の装丁覚書② カラーの綺麗な緑陽社

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同人誌の装丁覚書(マガジン)

はじめに

前回、初めて「装丁についてきちんと考えて印刷所に同人誌印刷を注文する」体験をしたわたしでしたが、それから1年以上同人イベントに参加する/同人誌を印刷することはありませんでした。依頼原稿は受けた気がしますが……。環境の変化(仕事における責任が急に重くなった・スケジュールが常にカツカツ状態・現場のプロパーのチクチク言葉への疲弊etc)が原因で、当時はとにかくオタク趣味において受け身であることしかできなかったように思います。

そんな仕事で疲弊しきったわたしの下に舞台刀剣乱舞の新作情報が舞い込みます。

依然として刀剣乱舞というコンテンツを楽しんでいた私ですが、原作ゲーム以外だとミュージカルや舞台のメディアミックスで描かれるパラレルワールドとしての物語が大好きでした。
特にストレートプレイの脚本・演出はわたしの大好きな舞台『TRUMP』シリーズと同じ末満健一さん。そして、初演であった虚伝・燃ゆる本能寺ではわたしの推し刀剣男士であるへし切長谷部が出演しています。わたしはこの虚伝の末満さんによる推し刀解釈があまりに好きで好きでたまらず、また舞台に彼が上がるなら必ず見たいと思っていました。

新作は、どうやら黒田家にまつわる歴史改編についての物語らしい。キャストには当然推し刀がおり、彼と腐れ縁である日本号や博多といった黒田家ゆかりの刀剣男士が多く出陣するのだという。それを知ってから、わたしは決意しました。「ぜってえ末満さんの黒田を浴びる前ににほへしを書く」と……。

一宿一飯の恩義を忘れぬもののふのように、わたしもまた同人オタクとして一カプ一感情の恩義を忘れないでいたい。(訳:一つ推すと決めたカップリングが自分にくれた様々な感情に対し、せめてもの礼として物語を捧げる行為のこと。耳無遠子独自言語。)末満さんというすばらしい作家の描いたキャラクターの物語の如何に関わらず、わたしはわたしの創作をしてみせる。その後で推し作家の推し刀カップリングを浴びて、色々と考えたいから……。そう思ったわたしは、新作舞台が始まる12月初旬の同人イベント(確かこの次の週から東京公演が始まるとかぐらい)に申し込みました。

しかし、勢いと締切だけはあるものの肝心の装丁が全然思いつかないニャ~ン。

2017年10月13日 15:18:47
にほへしの装丁全く思いつかん BL向いてない

こんなことを書き残しているので、思いついていなかったのでしょう。正直自分もどんな風に悩んだのかぼんやりとしか思い出せません。前作と同じく夢が拘わる話なので、心象風景っぽい……はかなげな……イメージを持っていたような気がします。そうしてイラストを描いてくれたみそらさんに要望を伝えつつ、ウェルカムポイントを併用すれば少部数でもギリギリ使える印刷所さんがあるらしいよ! と聞いたこともあり、緑陽社を選択しました。

仕様

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▼本の仕様(A5/全86ページ)
セット:小説本セット
表紙:季節の特殊紙B紙 OKムーンカラー ホワイト F-170 PP加工なし
本文紙:クリーム書籍用紙72.5kg
遊び紙(前のみ):クラシコトレーシング星くずし 41kg ホワイト
イラスト:みそらさん

実物写真

印刷するとこんな感じです。

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CMYK変換せずRGBデータ入稿しても、そのRGBの鮮やかさを損なわない美しいカラー印刷が得意なイメージの印刷所でしたが、これは本当にその通り。すごく表紙が綺麗に印刷されていて感動しました。
OKムーンカラー ホワイトが黄みがかったきらきらした特殊紙である分、印刷のインクは青系の載り方が印象的でした。PP加工はしていませんが、紙自体がどちらかというとマットな質感がある気がします。OKムーンカラーの輝く粒子が非現実感を醸しだし、白いカーテンが覆う背景=心象風景を際立たせていると感じました。

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裏表紙は何故か暗く映ってしまうのですが、大体二枚目が実物の雰囲気と似ています。藤棚の下に棚引く薄紫~青の光の帳が本当に綺麗に発光している……。表紙より裏表紙の方がデータで見たときのイメージに近かったかも知れません。発光といってもギラついた太陽の光ではなく、月明かりのような淡い光です。

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クラシコトレーシング星くずし。パウダーがランダムにかけられたような、カーテン越しに奥の様子を見るようなイメージです。今回作中で「星」について語る部分があったこと、ジョ伝の副題が「三つら星刀語り」だったこともあり、星くずしを選べてよかったなと思います。

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本文組版。紙はプリントオンの泡クリームキンマリ72.5kgとほぼ変わらず。捲りやすく綺麗な本文用紙です。
段組は今思うと逆に余白を取り過ぎに見えます。字の大きさは普通ですが、もう0.5pt上げてもよかったかも。多分この当時一太郎2017所持者なのですがWordで編集していたので詳細はよくわからないな……(今上PCにWordは未インスコ)多分筑紫Aオールド明朝pr6Nを使用しています。
個人的にサイズ感の問題でA5同人誌よりもB6、A6文庫を愛しがちなので今後はあまり刷ることがないと思うのですが、刷る時は組版をもっと美しくしたいところです。

感想まとめ

・前回の本とはまた違う、特殊紙を用いた夢の表現ができて満足
・RGB再現を謳うだけ或るクオリティ
・ただし少部数しか刷らない人間にとっては割高なのでなかなかお世話になる機会がなさそう……

以上です。この後後日談的な本を地元の縁あって株式会社栄光に依頼したこともあったのですが、そちらについては装丁のこだわり等語れる部分が殆どないため割愛します。次はまたプリントオンを使用して本を出しているので、そちらの紹介をしたいところです。

サポートが何なのかわかってないですが、していただいたらメチャメチャ感謝します。