見出し画像

【読書感想文】「箱」著・磯貝剛さん(少しネタバレ注意)

もしかしたらちょっとネタバレになってしまうかもしれないので、未読の方はお気をつけください。
先に「箱」をお読みになってから、この感想文に目を通していただけたらなと思います。

磯貝剛さんが執筆した「箱」はこちらから。


磯貝さんはとても素敵な絵を描かれる方で、あとがきでも述べられていましたが、最終話に出てくる絵のためにお話を書かれたとか。

まず、読んでいた時の率直な感想を。

「小春、あともうちょい頑張れ!!」

小春の気持ちはすごくよく分かるんです。
触れたい、求めたい。でも怖いから諦める。
それは自分の為でもあるし、相手の為でもある。
でも相手の為というのは言い訳で、結局は自分を守る為で。

そんな小春の為に咲が献身的に尽くします。
不器用ながらも、小春が喜んでくれるならと。
咲の考えの通り、あともう少しなんですよ。小春が求めているものを手に入れるまで。

だけどそのもう少しが大きな大きな壁で。
その壁を乗り越えたり壊す勇気を持つのが怖いのは、私も一緒だなって。
ただ壁を見上げて終わってしまうんです。

いや、小春は小春なりにものすごく頑張っていました。
あれだけのトラウマを抱えながら、あともう少しのところまでいけたのだから。

咲は自分の母親と小春を重ね、失う恐怖を常に抱いています。
失わない為には自己犠牲も厭わず、物事を客観的に見ることができる常識があるにも関わらず、失うことになると途端に盲目的になります。

この咲の気持ちも分かってしまって、自然と二人と自分を重ねながら読んでいました。

そして最後。
二人と自分を重ねていた私は、報われたと思ってしまいました。
確かにまだ乗り越えるチャンスはあったかもしれない。
でも、多分それはないなって。
二人と(特に小春と)自分を重ね合わせていた私は、きっと逃げ続け自分を追い込み続けるだけで。
闇の中を彷徨うだけなんです。

だから、最後に睦夫と触れ合うことができたこと。
それを咲が叶えたこと。
バッドエンドのようなハッピーエンドだなと。

そしてね、初めの方にも書きましたが、最終話に出てくる絵の為にこの「箱」は存在しているのです。
その絵がまた惹きつけられるもので。
実際にこの手で触れてみたいなって思ってしまいます。

お金払いますんで、私の絵も描いてほしいなぁ。
貧乳で左胸に手術痕がある裸体で、葛藤しているような女を。
本気でお金払いますので。

読書感想文ですが、最後は私のエゴで締めます。

磯貝さん、素敵な作品をありがとうございました。
他の作品も楽しませていただきます。


この記事が参加している募集

note感想文

読書感想文

生きる糧にさせていただきます。サポートのおかげでご飯が美味しい。