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顧客ニーズの見つけ方とは?片付けたい用事、ペインポイント、インサイトの違いと事例

こんにちは、企画担当の空野です。

弊社は、ノーコード開発とシステム開発の両方の企画、開発・運用まで行っており、その経験からノーコード開発に関する考え方をご紹介しています。

ノーコード開発が身近になったためか、ITサービスやアプリの企画に関して相談を受ける事が増えてきました。

その一方で、ITサービスの企画が難しいというお話もお聞きします。
そこで、弊社のやり方にはなりますが、ゼロからITサービスを企画する方法を説明していきたいと思います。

今回は、まずITサービスの企画を考える時に最初に考える顧客ニーズに関してです。

顧客ニーズは、ノーコード開発に関係なくどんな企画を立てる時でも考え方は同じです。
ただ、ノーコード開発の場合は、従来よりお試し感覚でサービス開発ができるため、顧客ニーズを疎かにしがちなので注意が必要です。

顧客ニーズからなぜ考えるのか?

なぜ企画は顧客ニーズから考えるのでしょうか。
一言でいえば、企画は誰に何をどう売ろうと考えるものであり、「誰が」が決まらなければ、「何を」「どう」売ろうかが具体的に決まらないからです。

例えば、水を売ろうと思っても、水が欲しい顧客がいなければ売れません。
さらに水が欲しいという人がいても、水が欲しい理由は様々です。
薬を飲みたいだけか、喉の乾きを潤したいか、手を洗いたいだけなのか。その理由によって、どんな水を、どう売る(売り方、量など)も変わります。

だから、企画において顧客の理解は一番重要であり、かつ一番むずかしい部分でもあります。
なぜ、難しいのかというと、お客さん自身が商品・サービスを求める時に、本当のニーズを理解していない事が多いためです。

その顧客ニーズを考えるために、弊社では片付けたい用事、ペインポイント、インサイトで考えています。
それぞれの意味は簡単に説明していますので、より気になった方は下部のサイトをご参照ください。
この記事では、事例のまとまったサイトが少なかったので、事例を多めに掲載しています。

顧客ニーズとは?

顕在ニーズと潜在ニーズに分かれます。
表面的に分かっているのが顕在ニーズ。「水が欲しい」というのは顕在ニーズで、一般的に顧客ニーズ、ニーズとして使われています。
ただ、顕在ニーズだけでは、顧客が本当に望んでいる事はわかりません。
先程の例だと「水が欲しい」と言った背景、理由は何なのか?
例えば手を洗いたいためなら、手拭きを渡しても良いはずです。

顕在ニーズの裏に隠れた部分、それを潜在ニーズといい、潜在ニーズの見つけ方として、弊社の場合は片付けたい用事、ペインポイント、インサイトで考えています。(他にもありますが弊社の場合は主にこの3つ。ペルソナや図解を使う場合もありますが)

片付けたい用事(Jobs to Be Done)とは

片付けたい用事とは、あなたが商品・サービスを求めた背景には何かしらの用事(ジョブ)があり、それを片付けるためにその商品・サービスを『雇用』するという考え方です。

例えば、「水が欲しい」という背景には、薬を飲むという用事があり、そのために水を雇用するわけです。
「片付けたい用事」のポイントとしては、その用事はお金を出してでも雇用したいものなのか、どのような用事が存在するのか客観的視点で考えやすくなるので使っています。

ちなみに、「ジョブ理論」という本で紹介されている考え方ですが、『イノベーションのジレンマ』で有名なクレイトン・クリステンセン氏です。
どちらの本もかなりおすすめの本の一つです。

ペインポイントとは

ペインポイントとはお金を払ってでも解決したい悩みのことです。
片付けたい用事に近い考え方ですが、痛み(ペイン)をお金を払ってでも取り除きたいかという視点で、このサービスでお金を払ってくれるかどうかが考えやすくなります

というのもサービス作る時に、これは便利なサービスで儲かるはずと考える事が多いんです。
しかし、そのサービスはただ便利なだけで、企業はお金を払ってでも解決したい悩み=ペインではない場合が多いのです。

インサイトとは

インサイトとは、消費者の購買行動の根底にある、本人さえも気付いていない動機・本音のことと言われます。

他には、「人を動かす隠れた心理」「無自覚な不満」とか、生活者自身が気付いていない「動機に結び付く新たな視点」とも言われます。

定義も複数あり、見つけ方も非常に難しいのがこのインサイトです。
ただ、このインサイトは最近のビジネスにおいて非常に重要になってきています。

まず、なぜ難しいかというと、そもそも本人さえも気づいていない動機、本音=感情だからです。

人は商品・サービスを買う時に、合理的ではなく、むしろ自分でも気づいていない何かしらの感情を満たしたいから商品・サービスを買っています。
最近は、感情を買う傾向が強くなっており、例えば、「誰が」売っているかが大事だったり(インフルエンサー)、「なぜ」に共感したりなど、購買=感情は切れない関係になってきています。

顧客ニーズ、片付けたい用事、ペインポイント、インサイトの例

それでは、それぞれの考え方を例を挙げて簡単ですが解説していきたいと思います。
各質問に対して、顧客ニーズや片付けたい用事(ペイン)、本音とインサイトを考えてから読み進めると理解が深まるかと思います。

なお、インサイトに関しては、隠れた本音とその本音から動機に結び付く新たな視点としてインサイトの2つをあげています。
インサイトに関しては、この両方とも考えた方が分かりやすいので、ぜひ両方とも考える癖を持つといいかもしれません。

なぜファブリーズを欲しくなるのか?

ターゲット:主婦
顧客ニーズ:ファブリーズが欲しい
片付けたい用事(ペイン)
・洗濯せずに匂いを取りたい
・洗えないものを清潔にしたい
インサイト
①本音:部屋を掃除しても、清潔になった実感がなく、達成感がない
①インサイト:掃除した後のご褒美、祝福気分を味わいたい
②本音:友達、お客さんが来た時に何か臭うと思われるのは嫌
②インサイト:気づいていない日常の嫌な臭いを簡単に消せる

ファブリーズはP&Gのマーケティングの事例でよく取り上げられています。
というのも当初はインサイトの設定を間違えて、あまり売れなかったそうです。
その後、デプスインタビュー(一対一で対話するインタビュー手法)などを行い、インサイトを再設定しなおして、大ヒットした商品なんです。

商品の中身は変わっていないのに、インサイトを変えるだけで、商品・サービスが売れるようになった非常に勉強になる事例です。

なぜディズニーランドに大人が行きたくなるのか?

ターゲット:大人(来客の70%以上が18歳以上)
顧客ニーズ:ディズニーランドに行きたい
片付けたい用事(ペイン)
・日々のストレスを発散したい
・ストレス社会から非現実感に身をおきたい
・癒やされたい、元気をもらいたい
①本音:遊園地は所詮子供が遊ぶところ
①インサイト:大人が夢中になれる場所
②本音:いくつになっても自分を大切にしてもらいたい
②インサイト:自分が主役になれる場所、幸福感を味わえる場所

ディズニーランドは、来客の70%以上が18歳以上=大人が行きたくなる場所なんです。しかも、リピート率が非常に高い。

なぜ、これほど多くの大人がディズニーに行きたくなるのでしょうか?
遊園地は子供が遊ぶ場所だという固定観念がそもそもあること、そして多くの人が日々のストレスで、見失いがちな自分が主役になれる、幸福感を味わえる場所を求めているからです。
その日々の感情労働から癒しを得る一つの方法が、ディズニーランドという場所なんですね。

今後は、ディズニーに幸福感を求めるように、ユーザーは商品・サービスから何かしらの感情を得るために、商品・サービスを求める時代になってきています。
だからITサービスであろうと、どんな感情をお客さんに提供するべきか、インサイトが非常に重要になります。

なぜ成功者はフェラーリを欲しくなるのか?

ターゲット:成功者、経営者
顧客ニーズ:フェラーリが欲しい
片付けたい用事(ペイン)
・走っている時のかっこいい音を感じたいから
・注目されたい、モテたいから
本音:今まで人一倍頑張ってきた事を証明したい(認めて欲しい)
インサイト:フェラーリは誰もがあなたを特別扱いしてくれる

いわゆる成功者と言われる人の多くは、フェラーリなど高級車を求めます。
購入する人にもエンジン音や見た目が好きだというので購入する人もいれば、注目されるために、フェラーリに乗っている人もいます(そんな直球な理由な人は稀だと思いますが)。

経営者だから、特に相手を特別扱いすると効果を発揮しますが、経営者に限らず、誰もが日々の人生を頑張って生きています。つまり、誰もが自分を特別扱いされたいと思い、特別扱いしてくれる人やサービスを大切にしようとします。

だから、サービスをお持ちの方は、サービスに貢献してくれる方を、特別扱い(VIPやランク付け等)することは非常に重要になります。

なぜ受験生はキットカットを欲しくなるのか?

ターゲット:受験生
顧客ニーズ:キットカットを食べたい
片付けたい用事(ペイン)
・甘いものを食べて回復したい
・疲れを癒やしたい
本音:休憩の時までも受験のストレスで辛い
インサイト:割ることでひとときのストレス発散の提供
(キットカットが、きっと勝っとうという縁起かつぎとしてのストレス発散提供に)

数あるチョコレートの中から、なぜキットカットが受験生に選ばれるのか?

チョコーレートに限らずですが、多くの種類があり、顧客の好みも様々で、味だけで(片付けたい用事やペインだけで)ヒット商品を作るのは非常に困難です。
そんな中、キットカットは味だけじゃなく、食べる時に得られる感情を提供したことで、大ヒットした事例です。

ITサービスも非常に多くの似たサービスに溢れかえっていますが、片付けたい用事だけではなく、顧客の感情で考えれば、まだまだ魅力的なサービスは出てくるはずです。
しかも、環境の変化で、感情は変わりやすく、その感情を把握し続け、商品・サービスにいち早く反映させる事が重要な時代になっています。
(そのためには高速で開発できるノーコード開発が最適ですが)


なぜ観光地では高い食事やお土産を買ってしまうのか?

ターゲット:旅行者
顧客ニーズ:お土産やそこでしかない高めのメニューを頼みたい
片付けたい用事(ペイン)
・休んで迷惑をかけた事への感謝
・そこでしか買えない限定ものだから
・思い出を残したいから
本音:時間とお金をかけてきている。もう二度と来ないかもしれない。
インサイト:特別な買い物をしたい

旅行に行った時に、お土産や高いメニューを頼んだ事がある方ならイメージが分かるのではないでしょうか。
お土産や観光客狙いのお店は、通常のお店より2倍以上する場合もあります。

なぜ、それでも買ってしまうのか?
その場所に来るまでに、時間とお金をかけて来ており、もしかしたら二度と来ないかもしれない。
その商品・サービスを得られるという限定感、そして選ばなかったという損失を回避したい事から、特別な買い物をしたいと思い、高くても買うわけです

ITサービスでも限定を利用したサービスは多いですよね。
常にお得よりも、人数限定や期間限定などお得を感じさせる事って大切なんですよね。
ちなみに、損失を回避するという、得するより損したくない「損失回避の法則」という心理も働いています。詳しく知りたい方、すみません「損失回避の法則」で調べてみてください。心理は大事です。


なぜ痩せたいのか?

ターゲット:痩せたいと思っている人
顧客ニーズ:痩せたい
片付けたい用事(ペイン)
・オシャレな服を着たいから(好みの服を着れなくなる)
・彼氏彼女を作りたいから
・健康になりたいから
・自信をつけたいから
本音:理想の体形じゃないから物事が上手くいかない(認められたい、見返したい)
インサイト:理想の体形なれば周りの見る目や対応が変わるだけじゃなく、内面も変わる

痩せたいことの、片付けたい用事は多くありますね。
それらの用事を解決する手段も多くあり、その一つが痩せるです。
例えば、健康になりたいなら毎日ジョギングするなど別の方法があります。

一方で、「痩せたい!」と思っている人の中には、特に明確な理由はなく痩せたいと思っている人もいます。
その本音として、理想の体形になれば上手くいくはずという本音が隠されている場合があります。

世の中には多くの不満が溢れているので、その不満を用事・ペインとしてさらに掘り下げるか、感情として掘り下げるかで、新しいビジネスの種を見つけられるようになります。

なぜ檸檬堂を購入するのか?

ターゲット:20~30代の低アルコール好き
顧客ニーズ:檸檬堂を飲みたい
片付けたい用事(ペイン)
・居酒屋に行かなくて自宅で美味しいレモンサワーが飲みたい
本音:居酒屋には行きたくないが、美味しいアルコールを少量楽しく飲みたい
インサイト:自宅で落ち着いて、美味しいレモンサワーを味わいたい

2020年に大ヒットした檸檬堂。
飲みニケーションという時代は過ぎ、アルコールを飲まない層、少量だけ飲みたい層などアルコールに対する片付けたい用事やインサイトは変わってきています。

少量だけ飲みたい層(低アルコール好き)をターゲットに、居酒屋で出るくらい美味しいお酒が、自宅でオシャレに楽しく飲めるという切り口でヒットしたようです。

消費者の趣向は常に変わっていくので、片付けたい用事、インサイトを考えていくと、実はぽっかり空いた市場が見つかる良い事例です。
(低アルコール&こだわりの味のポジション=家で飲むのに店の味(コンセプト))


最後までお読み頂いてありがとうございます。
顧客ニーズは本当に大事で、今回は弊社が使っている方法を事例を交えて説明しました。
もし少しでもご参考になれば嬉しいです。

ノーコード部について

わたしたちノーコード部では、ノーコードでのアプリ開発依頼を承っています。
開発の速さや費用を抑えられる事ももちろん、サービス企画の提案から、コンセプトに沿ったデザインを提供いたします。
・ちょっとしたオリジナルアプリが欲しいけど、大きな予算はかけられない
・アイデアはあるけど、どういうアプリがいいか分からない
・大手企業のPoCやベンチャーのMVPとして、サービスリリースをしたい
など、他にも気になる事などありましたら下記からお気軽にお問い合わせください!

ノーコード部HP(WebFlowで作成)
https://nocode.c3reve.co.jp/

運営会社:シースリーレーヴ株式会社(Wixで作成)
https://www.c3reve.co.jp/

■参考
『ジョブ理論』をやさしく解説、イノベーションには「成功のパターン」がある

新規事業のアイディア:事例に学ぶ「ニーズ」と「ペインポイント」の見極め方

消費者インサイトとは|インサイトを得る方法とインサイト事例

マーケティングにおけるインサイトとは?消費者のニーズを捉えたマーケティングの成功事例

ファブリーズの大失敗とV字回復【コンシューマーインサイトの成功事例(4)】

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