第十夜 人面猫
実家の庭で、肩甲骨が筒状になっている奇妙な猫を見た。
真正面から見ると、両肩から鉄砲の砲口が差し向けられているように穴が開いていて、
その穴から向こうの景色が見える。
最初は単なる気色の悪い猫だと思ったが、
よく見ると顔が人間のようになっていることに気がついた。
また、からだは胴長短足で、トロトロしていて、なめくじのようでもあった。
その人面猫は願いを叶えてくれる。
でも、死者を生き返らせることはできない。
私は、二人が死ぬとわかっていながら、
この猫が目の前に現れたとき、二人が死なないように、と願い事をすることができなくて、
結局二人は死んでしまった。
死んでしまってからではどうすることもできない。
私は二人を助けられなかったことを悔やんだ。
しかしその二人が誰だったのかは覚えていない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?