見出し画像

『マニュアル』というコトバの捉え方。○?✖?

昭和世代の私にとって、「時代が変わったなあ」と思うコトバのひとつに『マニュアル』があります。以前は”ネガティブ”なイメージが強かったコトバですが、最近だと”ポジティブ”な場面でも使われることも。時代の流れ、環境の変化、いろいろな要素によって変化してきたコトバの象徴のようにも思えます。改めてこの「マニュアル」について考えてみます。


「マニュアル人間」=イケテない人を揶揄するコトバだった。

その昔、昭和40年代から50年代。ちょうどマクドナルドが日本で展開を始めた頃、この新しい「文化」に対して反応したコトバのひとつが「マニュアル」です。その調理方法や接客方法に新しいシステムが登場しました。マニュアルどおりに進めれば「どんな人でも」一定のサービスレベルを実現できる、誰がどこで働いても「同じように」サービス提供ができるようになりました。当時の社会環境からすると画期的な変化で、それまでの「徒弟制度」のような古い文化が一気に少数派になってしまった変換点でもありました。

一方で、「どんなひとでも」「同じように」できる、ということは早々にマイナス面も露呈します。有名な笑い話に、こんなのがありますね(どこかで聞いた話かと思います)。

A君は、ホームパーティの準備で今夜集まる10人分のハンバーガーとポテトを一人で買いに行きました。カウンターで「ハンバーガーセットを10セット」注文すると、店員さんはこう言いました。
店内でお召し上がりですか?お持ち帰りでしょうか?

マニュアル「ではない」文化で過ごしてきた私たちにとっては、この「異文化」に対するヤッカミみたいなものもあったのでしょう。この時期、「マニュアルに書いてあることしかできない」タイプを、「マニュアル人間」という(ネガティブな)表現をしていたことを覚えています。


「手順書」という意味での、「マニュアル」

昨今は、この「マニュアル」というコトバ、特に企業においては、手順書、ハンドブック・手引き、といった意味合いで使われることが多いかと思います。「マニュアル人間」とはまったく反対で、存在する・準備していることが必須、になっています。
前に書いたマクドナルドと同じなのですが、「どんな人でも」「同じように」業務ができることを目的としています。業務マニュアル、操作マニュアル、周りを見ても「マニュアル」が多く存在していますよね。そしてこれらは、あることが「あたりまえ」で、けしてネガティブな印象はないと思います。

この変化は何が要因になっているのでしょう。例えば企業側から考えても、以前と異なり、従業員の流動性が高まっていることや(転職などで担当者が変わる、意図的にジョブローテーションが実施される、など)、デジタル化・システム化の概念が強くなってきて、「読めば一定レベルの業務ができるようになる」こと、つまり「効率化」という意味合いで揃えているのかもしれません。


「マニュアル」をどう使うか、どう作るか

以前は、「師匠」(あるいは上司)から、マニュアルではなく実際の現場を通じて学んできたものが「まとまった」ものがマニュアル、とも考えられます。体系的にまとめられていれば、仮に担当者がひとりになってしまう事態にも対応できますし、新入社員が独り立ちするのも短時間で実現できるのかもしれない。
...「昭和世代」の私は、この「肯定的なマニュアル文化」は違和感を感じてしまう世代です。上司や先輩から教えられるものは、マニュアルに書かれているものだけではなく、その態度だったり、振る舞い方だったり、相手との会話内容だったり、(逆に)手の抜き方だったり、あしらい方だったり、とコトバにならないものがたくさんあると思っています。おそらく「マニュアル」に慣れた世代も同じだと思うのですが、その「マニュアル外」の要素から何を”盗む”か、が自分の成長に寄与する要因だと思うのです。

一方、マニュアルを作る、というプロセスは、それなりに有意義に思います。これまで「属人的」だったものを誰かに伝えていくのは、整理することにもなるし、改めて「こうしたらよかったのかも」と、もう一歩改善できる点が見つかることもあります。

「読む」側は、マニュアル「だけ」で完結しない、ということを理解してほしいと思います。確かに「一定レベル」までは行きますが、そこから先、「マニュアルに書いていない」ことを受け入れる容量は残しておいてほしい。そこがあってこそ「マニュアル人間」を超えられるのです。


デジタル化が進み、「指示書」「プログラム」という考えのもと、システム的な思想が強くなるとさらに「マニュアル」が重宝される傾向は変わらない(もしくは加速する)と思われます(だから「マニュアル=違和感」なんて言っていてはダメなんですが...)。
一方で、そんな「マニュアル社会」が進んでいくほど、「マニュアル外」=規格外のタイプがもてはやされることも増えてきそうです。例えば、”二刀流の日本人メジャーリーガー”なんかはその象徴かと。そういう「希少」な人が魅力的に見える、なんだかいったりきたり、ですね...


最後、昭和のオジサンが、直近で気に入らない「マニュアル」対応をひとつ。

飲食店にて。
席にあるオーダー用のタブレットが調子悪く店員を呼んだところ、タブレットを交換してくれました。交換したときに来てくれた店員にそのまま注文しようとしたら「タブレットからお願いします」と.....

せっかくその場にいるんだから聞いていってよおおお

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?