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躁鬱無職、SUNABACOスタッフ見習いになる

「それウチでやる?」
なかまこさんからの豆鉄砲を食ったのは、これで2度目だ。

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2023年9月、猫山課長の講座を期に、なかまこさんに起業について相談することを決めた。
今自分が出せるものを全てギガファイル便に詰め込んで、腹を括って送り、アポを取る。

私は、鬱になっても無理なく差別無く社会に戻れる仕組みを、そしてゆくゆくは鬱にならずに済む仕組みをつくりたい。
過去の自分が求めてやまなかったものを実現したかった。

自分に出来ることはもうそれしかないと、ただただ、がむしゃらに走っていた。

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アポ当日。
なかまこさんとカリンさんのおふたりがお時間を取ってくださる事実に、内心バクバクしながら席に着く。さらに途中からあきさんも加わってくださり、思わずスッカラカンの財布からお金を支払いたくなった。

価値が高過ぎる。私からお渡しできるものに見合う対価は無い。
せめて真心と懸命さでお返ししたい、と必死である。

その内、雑談から始まったのに、知らない間に本題について熱く語っている自分に気づいた。
あまりの自然さに、ユーザインタビューやコンサルティングの極みとはこういうものなのだろうかと考える。
おふたりと話すと、自力では出せないものがスルスルと引き出されて気持ちいい。

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そして、このnote冒頭の発言である。
なかまこさんが仰るには、SUNABACOで講師として生活費を稼ぎつつ、SUNABACOのリソースを活用して事業を始めればいい、と。

「そんな良いお話が、あっていいんですか」

だって、私には何も無い。
技術も、経験も、職歴も、自信さえも、何も。
あるのは躁鬱でぼろぼろの心と身ひとつだけ。
信じられない思いで聞き返す私に、なかまこさんは仰った。

「ひとりでやるよりいい。ひとりでは上手くいかない。」

ひとり。
そうだ、私はひとりだった。
それを意識したら迷いが出てしまいそうで、振り切るように無我夢中で走っていた。

事業の協力を約束してくれた人が、名前だけ連ねて経歴の材料にしようとしていた。

「普通以下で終わる」「2年の命」「今は若いから話題性があっていいけど、30歳を越えたら何の価値もない」などと言う人も居た。

親類には「まともな職に就け」と言われた。

これらの言葉が刺さったまま抜けず、反芻してしまっていた。呪詛のようだった。

人が居ても、孤独だった。

そもそも躁鬱を発病した原因のひとつでもあったので、自身の回復のために孤独からは徹底的に目を逸らしていた。

なかまこさんは言葉を続ける。

「僕は30まで死にたい死にたいと思って、神様はなんでこんな罰ゲームのような人生を、と思っていた。でも若林と出会って、若林の言葉で、生まれて初めて生きた。
誰でもひとりじゃできないし、ひとりになっちゃいけない。」

「横展できそうなら独立してやっていけばいい。SUNABACOスタッフたちも、みんなここで飼い殺す気は無いから。でも、しょうもない企業に行かせる気も無い。立派になって巣立ってほしい。」

そう言ってくださったなかまこさんの言葉に対し、できるかな、と私の自信の無さが口をついてこぼれてしまった。

「できるかできないかじゃなくて、やる」
そうカリンさんが仰った。

さらに、なかまこさんが食い気味に
「できるかじゃなく、やらなきゃいけない。俺たちは転けちゃいけない。多分、俺は希望だから。それを常に意識してる。」
と続く。

その通りだ。
私にとっても、同じ障害を抱えて走り続けるなかまこさんは、人生の希望だ。

なかまこさんが双極性障害だと知ったのは、初めてTwitterでお話した時だった。

一般的に、鬱の経験があっても隠す人が多い。社会的な立場がある人なら尚更だ。
鬱は心が弱いとか、怠けや甘えだとかいう考えが根強いこの社会では、それも仕方の無いことだと思う。

それなのにこの方は、顔も本名も知らない初絡みの私に、実名顔公開でカミングアウトした。
これが、私が鳩よろしく豆鉄砲を食った最初の機会だった。

自信の無い私の背を押すように、なかまこさんが言葉をかけてくださる。
「誰でも誘う訳じゃない。僕と若林ふたりの意見がすぐ一致するのも珍しい。」
「それに、あきさんがこんなにハッキリ良いと言うのも珍しい。」
その言葉だけで、私は生きられる気がした。
ドッと血が巡り始めて、身体中が熱い。

おい、死にたがってた私。死に損なった私。見てるか。
あれだけ死ぬ理由ばかり考えていた私が、生きようと思えてるぞ。
責任とか縛りによるものじゃない、能動的な生への欲求がある。あの頃からは考えられない。

その後も私の不安を解すように、代表おふたりからSUNABACOの日常とスタッフさんが入るまでのエピソードが語られていく。

聞き流せないポイントがあり過ぎて、ツッコミに近い相槌を入れてしまう。それでも全然追いつかない。
ちょっと情報量多過ぎます。PDFでください。もしくは書籍化してください。

そうして、気づけば2時間が経っていた。
これからひとまず、お互いの相性を見るためのお見合い期間にしましょう、と話がまとまった。

その夜は自室でこっそり泣きながら、あったことを書き記しつつ、寝落ちした。

次の日の朝、アラームの1時間前に目が覚めた。
いつもなら二度寝を決め込むところだが、血の気が引いて飛び起きる。
昨夜の出来事が、あまりにも自分に都合が良過ぎて、夢かもしれないと本気で思った。
半泣きでスマホを開く。

このお漏らしに心底安心した。

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そうしてこの度、私はSUNABACOスタッフ見習いとなった。
まずはスクールを受講して講師の勉強をしつつ、運営のお手伝い。ゆくゆくは障害福祉事業に携わらせていただく。

見に余る光栄な機会と貴重なご縁に感謝し、期待に応えられるよう励むことを心に刻んだ。

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