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羊のハンドクリーム

「『手ってその人の生活が出るよね、意外と見られてるよね』って友達が言ってさ、それから気を付けてるんだ」
という友人の言葉を聞いて自分の手が気になり始めました。

そしてまた別の友人にそんな話をしたら、その友人も手が気になってきたそうで、このままではあっという間に世界中の人が「ぢっと手を見る」ことを始めるに違いありません。

オーストラリア土産としても有名なラノリンのハンドクリームがありまして。

羊の毛を刈るオジサンたちの手はなぜあんなにすべすべしているのだろうという疑問から生まれた羊の毛の脂のクリームです。
日本でも杜氏さんのしっとり白い手に着目して研究開発されたという化粧品がありますね。
誰が最初にぢっとオジサンの手を見つめたかはともかく、オジサンの手と女性の美容は、山のてっぺんに降る雨粒としょっぱい海の水のようにつながっているのです。

私は元々アトピー体質で、10年ほど前は手が酷いことになりました。毎晩右手で左手を、左手で右手を掻きむしって眠れたものではありません。医者に行ったら「研究材料にしたいから」と写真を撮られるほどでした。

皮膚に問題がある人は、皮膚を見る時間考える時間が長いのです。吉行淳之介の小説を読んでいたら、一つの短編なんて皮膚の克明な描写だけでした。

皮膚は「自分」と「外の世界」の境界線です。「外の世界」に真っ先に触れるフロントラインです。いたましいような、不思議な臓器です。

話をよいしょと「羊」に戻すと、夜眠れなくて羊を数えるとき、2匹目の羊が登場した時点で1匹目の羊はその場からひょいっと消えるのが通常でしょう。

しかし私の場合

「羊が100匹」というときはその場になぜだか100匹全員いる!!

のであります。アタマの中がぎゅうぎゅうで眠るというより倒れそうです。

もっと滑らかな動きをしてほしいです。

アタマの中の羊たち!

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