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ウロウロ探し物をするひとたち。そこ、うちの庭なんですけど。

そんなことではないかとニラんでいたのです。

裏に住むギリシャ人のおばさんが泥棒に入られたそうで、うちにやってきて言うことには

「ボールが庭に入ったから取らせてくれって言われて庭に入れてあげてさ、私が部屋でテレビを見てたらいつのまにか部屋の中に入り込んでたの!何してるのって咎めたらテーブルの上のものをとって逃げて行った」

「あんたたちも気をつけるのよ」

そう、泥棒はボールを持っているのでした。

10年以上前に泥棒(と思われる人)がうちの庭を歩いていたことがあります。

その人も

「ボールが庭に入っちゃってさー、あ、でも見つけたから大丈夫だよぉ~」

とぺらぺらッと言って(こちらに質問する時間を与えず)、手に持ったボールをにこやか見せて「じゃあね!」と爽やかに立ち去った。

ワタシも思わず反射的に「良かったね!」なんて手を振ってしまったんだった。

あやつ、泥棒だと確信しました。

通りと前庭を隔てているうちの門は、大人の胸の高さくらいあるのです。そこはいつもしっかり錠をかけているのです。

門の横にブザーがあって、訪問者はそこを鳴らします。応答がない場合、普通の人は「留守だな」と思って帰ります。

泥棒は「留守だな」と思って、敷地の中に入ってきます。

その泥棒は門を飛び越えてうちの庭に入り、思いがけず家の中に私がいたので、「ボールの言い訳」を披露して、またその門をひらりと飛び越えて出て行ったわけです。

褒めるのは不本意ですが

泥棒は身体能力に優れています。日々、塀を飛び越える訓練をしています。ジャンプ力が高いです。逃げ足も速いです。

ひとたび泥棒の立場に立ってみると「探し物中」という設定は、マスターキーのようにすこぶる便利です。

私は、日本にいる間、マンションでしか暮らしたことがありませんでした。

ちなみにこちらで「マンション(mansion)」というと「豪邸」の意味です。だから自分で「私、マンションにしか住んだことないんだよねー」なんて言う人はいません。私くらいです。しかも2LDK・50㎡のマンションですから、相手は凍り付いてミッキーマウスみたいな笑顔になる。日本のマンションは、こちらでは「アパート(apartment)」です。

メルボルンに移住して、生まれて初めて、一軒家に住みました。

一軒家というものはこんなにも

ありとあらゆる出入り口から

ありとあらゆるものが

飛び込んでくるのだ...!

と衝撃を受けました。

マンションの部屋は基本、入口は一つです。それが「最後のとりで」です。そこだけ死守すれば何とかなります。マンションの4階に住んでいたら、普通、ボールなんか飛び込んでこないです。もしボールが飛び込んでくるとしたら、ちょうどオリンピック選手が近くで練習していたので、とかそういう状況です。

今住んでいる一軒家には、裏口がある。勝手口がある。窓からだってガチャンと割って入ろうと思えば入ることができる。どこからでも入れる。どこからでも!

この前、朝起きてドアを開けたら、知らない人がいました。

その人は、うちの前庭で、中腰というか前かがみになって、コンタクトレンズを探すみたいな姿勢(今はいないですね、そんなひと)でうろうろしていました。庭仕事している風には見えない。うちの庭だし。見るからに怪しい。中腰なのがおかしみがある。悪い人じゃない気がする。

聞くと「うちの猫みませんでした?昨日の夜帰ってこなくって」。一緒に「ピーター」を中腰になって探しました。

そのほかにも、

「散歩中はぐれちゃって」犬を探す人がくる。

「うちの郵便物がそっちに紛れ込んでないか?」と手紙を探す人がくる。

道路工事の人が「お宅の水道貸してください」とくる。

「うちのおばあちゃんが隠れてるかもしれないから庭を探してもいいか」という人もいた。

マンションの4階のベランダには犬も猫も来ない。おばあちゃんも迷い込まない。

最近近所で泥棒被害や車上狙いが増えているので気を付けなきゃと思って、「ボールを持っている人」に眼を光らせているんですが、うちの近くには公園があってドッグランもあって、みんな手に手にボールを持ってるのです。眼が光りっぱなしです。

この前見回りに来た婦人警官と立ち話をしていたら、曰く

「空き巣というのは入ってから2-3分で出ていくので、短い時間でも戸締りに気を付けたほうがいい」。

しかも、空き巣たちは冷蔵庫のものを食べたり、トイレに入ったりする人たちも多いらしい。

2分でそれができたらいいよね、朝なんてゆっくり寝てられるよね、「空き巣すごいよねー」「ほんとすごいねー」。

この警官と私じゃ、絶対空き巣なんて捕まえられっこないです。


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