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初対面の人に香港に連れていかれそうになった話

ベリーダンスにハマったことがある。

3か月間、週に5日せっせと通った。巣鴨の地蔵通り入口の近く、ガモネーゼファッションをそろえる洋品店の二階に「スタジオナナ」という教室があった。

歩いて10分で行けるので毎日通った。
母は「あんたそんなにぐるぐる腰回したら身体に悪いよ・・・」と真剣に心配した。

教室で一緒の女性が「ワタシとび職なんです」と言った。
女性のとび職って珍しいね。と思ったら「飛び職」=「フライトアテンダント」だった。

ひとりだけ男性もいて、その人はまるでジーザそっくりだったのでみんなで「スーパースター」と呼んでいた。

メルボルンに来てからもすぐ、ダンス教室を探した。カルチャースクールのようなところで「ベリーダンス」と、あとついでに民族ダンスっぽい教室に申し込んだのだが、そこにいる人はみんなロシア人のお婆さんで、全員で輪になって哀愁漂う民族音楽に合わせて盆踊りのように踊った。おばあさんたちは親切で、彼女たちと世間話をするのはなかなか面白かった。

そこに日本人のひとがやってきた。旦那さんが日本人学校の先生だという。その人に連れられて、「お茶の先生」と言う人に会った。そうか、こうやって日本人社会に足を踏み入れていくんだ。

旦那さんがレストランを経営している女性と知り合いになりました。その人は茶道の先生もしていて、日本人コミュニティでも顔が広い人でした。

お茶の教室を見学して「それではさようなら」と玄関で靴を履いていたら、じっとこっちの顔を見て

「わたしね、あなたを香港に連れて行こうと思うわ」と言った。

ほ、香港?

なぜ香港。

しかも連れて行ってくれるって。
「人身売買」という物騒な文字がアタマに点滅。

あれ?もしかしてオーストラリアと香港ってめっちゃ近かったんだっけか。ショートカットで行けるんだっけか。

あー、でもあんまり家を空けるわけにもいかないので・・・

とかなんんとかゴニョゴニョ言ってその場を退散したのでした。

何か月か経ってから「香港」というのはメルボルン郊外にあるアジア系スーパーマーケットだと知りました。

今や友人と「ちょっと香港寄ってくる」「あたしもいくー」などと会話しています。

これいいかもな。

スーパーに国や都市の名前つけるの。
「今日はフランス行ってくるざます。」とか「ほな大阪にちょっと」なんてね。

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