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大阪デクショナリー2

大正区、港区、西区の大阪西部エリアを中心に、年に2回発行しているフリーマガジン「Lifes」の中で連載している、絶滅して欲しくない大阪弁を思いつくまま紹介しているマイ“デ”クショナリーです。


【あ行】

足早いわ
思っていた以上に食べ物が腐るのが早い様。
小学生の頃、夏休みに祖父母ん家に行った時「なんで、夏場の味噌汁てこんなに足早いんやろ」と、祖母が言っていた。意味がわからず尋ねると、夏場は朝作った味噌汁を放っておくと夕方くらいにはもう傷んでたりするからこう言うのって教えてくれた。大人になり、夏場、豆腐の味噌汁を作った時、そのままにしておいたら夕方には腐っていたことがあり、このことか!と合点がいったことがある。

アテ
酒の肴のこと。

酒に充てるものが次第にアテと呼ばれるようになったそうな。
実家が居酒屋を営んでいたので昔からご飯のおかずはカウンターに並んだ大鉢に盛られた酒の肴、いわゆるアテやった。数並ぶ中でも好きやったのがししとうとちりめんじゃこの炒め煮とスモークサーモンを刻んだものとみじん切りのさらし玉ねぎを和えたもの、そしてなすとそうめんのたいたん。
ししとうとちりめんじゃこの炒め煮は、甘辛い味がご飯にぴったり。スモークサーモンと玉ねぎはクリスマスの時だけ出してたもの。個人的には、なすとそうめんのたいたんは見た目は悪いしそうめんはクタクタになってたけど、冷蔵庫でキンキンに冷やしたのを食べるのが大好きやった。いまだに自分でも作る。そう考えるとマイオカンの味はアテしかないな。

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ええし
いい家庭環境に育った子のこと。

祖母は市内のホテルが好きでロイヤルホテル(現リーガロイヤル)に小学生だった僕をよく連れて行ってくれていた。今思うと祖父に対しての言い訳がわりに孫を同伴させていたように思う。ティーラウンジで僕にはケーキを食べさせてくれ、祖母は友だちと話を弾ませていた。その時に「あんたももうちょっとええしのとこに生まれてたら、毎日でも来れたのに」とか「あの子、ええしのとこの子やわ」とホテルロビーを歩く家族連れを見て言ってた。ええしは蝶ネクタイをしてるというのが祖母の基準やった。僕もそれが頭に焼き付いてるので蝶ネクタイしてる子を見かけると、ええしと即判断してしまう。自分はええしやったかと言うと超リトルええしやったと思う。

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【か行】
かしわ
中部地方、西日本で鳥肉のこと。

昔はよく食べられていたかしわという鳥の種類だけを指していたそうで、関東から北は軍鶏だったらしい。昔、友人から「ちょう!かしわしがみに行く?」と言われたことがあり、なんのことやろと尋ねたら「吉野家は牛しばくって言うんやったらケンタッキーは骨つきやからかしわしがむから。知らんかった?」と、さも当たり前に言われてびっくりした。その言い方は僕らの周りでは定着しなかった。

コンババ
根性が腐っているという意。

根性ババ色が略された言い方でババとは関西ではうんこのことを指し、根性がうんこ色してるくらい汚いことから言われてる。先日、ちょっと小洒落たバルで隣で飲んではった女子会グループ。いない女子のことで魔女裁判。1人の女子が「あの子ほんまコンババやろ」と発言し、なんとも懐かしい気持ちになった。

【さ行】
さら
新品のこと。

子供の頃、正月になると下着や靴下は新調するのが習わしだった。「さら着たら一年ピーンとするやろ」と父親が言うてた。商売人はなんかそういうことでメリハリを付けていたようだ。自分もいまだに新年は新しい下着を身につけないと気持ちが落ち着かない。

知らんけど

ある意味、無責任ですよの逃げ言葉。

語尾にこの言葉をつけることによって、自分の発言に確信はないよ。でも正しかったらラッキーやし、間違ってても許してやーという保険語。「あの映画おもんないらしいで、知らんけど」「ミシュランの星付いたみたいやけど、そない美味しないみたいやわ。知らんけど」と、自分の発言を他人事のように変化させるのである意味便利で卑怯でもある。

せえない
やった甲斐がないの意。

ラジオを聴いていた時、久しぶりに「せえない」という言葉を耳にした。リスナーからのグチを読むコーナーで「なんぼ料理の本買うたり、ええとこ食べに連れてってもいっこも料理が上達しない妻に幻滅します」といった内容におっちゃんパーソナリティは「これはせえないわ」と、しきりに言うてた。相手の女性パーソナリティは「旦那に作りたないからちゃいます?料理作ることにせえないんですわ、この奥さん!」とピシャリと反論していた。

【た行】
天かす
天ぷらを作った時に出るかす。

西日本ではこう呼ぶことが多い。関東以北では揚げ玉と呼ぶことが多い。立ち食いうどんなどで天かす入れ放題の店が好き(現在は難しいけれど)。シンプルなかけそばを注文し、まずはそのまま。でもって、味を変えるために天かすを入れるとグッとコクが出る。でも、その店で出た天かすを使っているのを使っているのはなかなかないので希少。

【な行】

ねぶる
舐め回すの意味。

ただ舐めるのではなく隅から隅までくらいのとことん舐めるという感じ。「飴ちゃんねぶり」「そんな汚いとこ、ねぶりないな」とペットの犬や猫に言ったり。この言葉はおばちゃんがよく似合う。

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【は行】

フレッシュ
コーヒーに入れるミルクやクリームのこと。

昔から関西ではフレッシュ。70年代、メロディアンという八尾の製造メーカーがコーヒーフレッシュ(メロディアン・ミニ)という商品のCMで一気にこの呼び名が広がった。小さい頃はこのポーチョンタイプのを水で薄めてミルクや~と飲んだりしたけど当然、大量に使わなければミルクっぽくならないのですぐにやめた。

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法善寺横丁
千日前にある水掛け不動さんを中心にした飲み屋エリア。

昔は劇場などもあった場所で今は観光スポットして賑わっている。四半世紀ほど前、横丁の片隅に松葉というスナックがあった。中から三味線の音が聞こえていた。何度か前を通り過ぎたものの好奇心で思い切って入った。おばあちゃんがふたりでやっていた。二十歳過ぎたばかりの若造にお酒の飲み方や、お座敷の艶笑芸を教えてくれた。三味線は流しの人やった。そんな匂いは今はこの横丁にはほとんど感じられなくなった。

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【ま行】
松屋町
おもちゃの問屋街として有名なストリート。

雛人形や五月人形もここに来れば揃った。そして夏前になると花火だらけになった。父親がよくここで珍しい花火を買ってきてくれたことも懐かしい。今は以前ほどの賑わいはないけれど、当てもんを購入したいときはここにくれば間違いがない。

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【や行】
やいと
お灸のこと。

小さい頃おねしょをすると、やいとするでと言われた。悪いことして外に放り出されるよりはマシかなと思って父に一回やってとお願いし、もぐさをヘソの下あたりに置き先行で火をつけてやいとをやってもらったことがあった。もぐさの匂いはなんとも言えない香りで嫌いではなかった。そのうちへその下がだんだんと温かくなって、「まだ我慢せえよ」という父の声に我慢をし、結局熱過ぎて火傷をし田みたいで、母に父は怒られていた。おねしょはしばらく治らなかった。

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【ら行】
『ラブアタック!』
1975年から1984年まで朝日放送で放映されていた視聴者参加型公開バラエティ番組。

ひとりのかぐや姫を巡って大学生が様々なゲームに挑戦し、かぐや姫への告白挑戦権を獲得するという内容。まだ大学生が元気な時代。さらに大学自体が緩い時代。幼少の頃に見ていて大学生って楽しいんやなあと思った。これに出ていた大学生のひとりが後に小説家として活躍する百田尚樹であるのは、ラブアタック!あるある。


【わ行】
わややがな
どうしようもないという意味。

「株で大損した、もうワシわややがな」「今までせっかくやってきたやのに、わややがな」という諦めの極致みたいな時に使う。枯れた顔のおっさんが使うとなんともぴったりな言葉。

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