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大阪デクショナリー4

大正区、港区、西区の大阪西部エリアを中心に、年に2回発行しているフリーマガジン「Lifes」の中で連載している、絶滅して欲しくない大阪弁を思いつくまま紹介しているマイ“デ”クショナリーです。


【あ行】
あんじょう

ちゃんと、上手に、うまい具合にという意。

辞書ではあぢ(味)よくが変化していったと書かれてありました。
小さい頃、「あんじょうしいや」、「あんじょう帰りや」、「あんじょう直しや」「あんじょう食べや」などと祖母は「あんじょう」が口癖のように孫の僕に言うてた。「はいはい」と二回返事すると、「返事は一回にしときなはれ」と言われたもんやった。今思うと孫を思う心配と優しさの固めたのが「あんじょう」という言葉なのかもしれない。そういやオール巨人の曲で「あんじょうやりや」という男女の別れの曲があるのだけど、これが名曲。

NSC

吉本総合芸能学院(ニュー・スター・クリエーションの略)1982年、新人タレントを育成するために創立させた養成所のこと。

現在は大阪の他に東京、福岡、沖縄にある。
1期生はにダウンタウンやトミーズ、ハイヒール、吉本新喜劇の内場勝則らがいて現在は40期生が卒業し、それぞれ芸人として頑張っているが、と、同時に40期までくれば全員が全員舞台で活躍するわけもなく、そのほとんどは卒業しても活躍の場を見出せず、足を洗っているのが現実。それだけに実はNSCに通ってました、NSCに通ってた奴が友達におるという声を聞くことが多々あります。で、通っていたというご本人とそのことについて話したりすると、得てして言葉を濁したりしはります。

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お好み

お好み焼きのこと。
関西人はお好みで話が通じます。それぞれ好きなお好み焼きがあるとは思いますが、基本は豚玉やと思います。それも脂身が多めの薄いベーコンのようにカリカリになるような豚バラ。これを鉄板に敷いてじっくり油を出している加減を見ながらカップに入った粉やキャベツを練り、一気にその上にジャッと流し、形を整えながら焼く。あとはしばらく蓋をしたりして焼き上げ、ひっくり返してさらに焼き、ソースを塗り、マヨネーズ、青海苔、鰹節でフィニッシュ。この間にしっかりと豚バラから出た油やうまみは生地の中に染みている。あくまでも豚バラはダシの代わりと思っているので、高級品種の豚に走りがちな風潮はちょっと残念。

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【か行】

海遊館

1990年に開館した天保山にある水族館。
そのネーミングのきっかけには上沼恵美子が大きく関わっているというのは本人もテレビで時折語っているので周知の事実かも。とにかくそれまで日本にあった水族館のイメージを根底から覆した画期的な空間で、ジンベエザメはここの目玉で名物で大人気。個人的な楽しみ方はクラシックやヒーリング系の音楽をイヤホンで聴きながら巨大水槽でボーッとする事。ただただ癒されますが、あまりにも心地よくて何度か居眠りしたこともあります。

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気にしい

気にする事。
ちょっとした事を言われても気にしいで、いつまでも気にしいやった僕には、その気にしいのそぶりに気づかれて「あんた気にしいやな!いつまで気にしいなんよ」と友だちから言われるのが好きではなかった。気にしないよりも言われたことに少しばかりは気にしいになってもええやん、気にしいなんやからとしゃあないやんと半ば開き直って気にしいになってたこともあった。今はすっかり気にしいではないと言いたいところやけど、相変わらず気にしいで、こうやって書いてる文章に気にしいという言葉がいっぱい出てきてることに、とても気にしいでいる。

【さ行】

さいぜん

さっきの意。
若い世代では使われなくなってきた絶滅しそうな言葉の一つ。「さいぜんまでいてはったのに」「さいぜんからせんど言うてんのに!」「さいぜん、ちょっとお宅へ寄せてもらいましてん」などいかにも関西のはんなりとした響き漂う言葉。

シュッとしてる

清潔感あふれる、かっこいいという様
おばちゃん用語とでも言うのだろうか。おばちゃんのお眼鏡に叶った人を見ると枕詞のように発しはる褒め言葉。言葉だけでそれぞれのシュッと感がイメージできるのでざっくりといい男という情報が共有できる都合のいい言葉。他に太った人には「ガッチリしてる」。おばちゃんの理解の範疇にない人には「個性あるなぁ」というバリエーションも。

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せんど

何度もの意。
前記した「さいぜん」と良く使われていたりした。この言葉も絶滅しそうな言葉だと思うので大切にしたい。「せんど通ったわぁ」「せんど電話かけさせてもろたのに」「せんど会うてるがな」と、ちょっと恩着せがましく聞こえるのが特徴。

【た行】

探偵ナイトスクープ

大阪にこの番組ありと言われる朝日放送系列で1988年より放送されている人気長寿番組。
優秀な探偵たちがダウンタウン・松本人志局長の元、様々な視聴者からの依頼に応えるというバラエティ番組。前局長は上岡龍太郎。二代目は西田敏行は2001年より就任。長い歴史の中で、数々の奇跡の展開を迎える神回が存在。個人的には電子レンジでゆで卵を作る回は忘れられない。

チリンチリン

自転車のベルのこと。
ママチャリにつけられている注意用のベルだが、おばちゃんが乗る自転車ではハンドカバーの中に隠れていることが多く、カバーの中から鳴らされると音がこもりがちで聞こえにくい。あと、漫才師時代の若井みどりは、相方のこづえにチリンチリンみたいな顔してと揶揄されていた。最近はおしゃれチリンチリンが幅を利かせており、昔ながらのチリンチリンは実は少なくなっていると知り、若干のショックを受けている。

【な行】

女系家族

作家・山崎豊子が1963年に発表した小説。
女系が続く大阪・船場の老舗問屋の養子婿が死んだことで巻き起こる娘たち、愛人、叔母の遺産相続争いを描いた作品で、これがめっぽう面白い。最後のどんでん返しは溜飲が下がるとはこのことかと体感したくらい。さらにこれが大映で1963年に映画化されており、これがプログラムピクチャーとしても素晴らしく、京マチ子、鳳八千代、高田美和の三姉妹に若尾文子の愛人、浪花千栄子の叔母、鍵を握る大番頭の中村鴈治郎、遺産を狙って京マチ子に近づく田宮二郎とクセもの揃いが金の匂いに群がるキャラクターを秀逸に演じ絶品。のちに米倉涼子で現代に時代を現代に、舞台を東京の日本橋に移してドラマ化したけれど、やはり物足りなかった。お金の話は大阪弁(正確には船場言葉)でやりあったほうがいい。

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【は行】

はばかりさん

ねぎらいの言葉の意。
正直、上方落語の中でしか聞いたことがない気がする。だけどこの言葉のなんとも言えない大阪らしい含みは愛すべきだなと思う。「おおきに、はばかりさん」というセットで言われると仰々しくもなく、かと行って軽んじてるわけでもない絶妙な感謝の意思が伝わるのだ。

パインアメ

パイナップルの味と輪切りの形を模したキャンディのこと。
大阪は天王寺に本社があるパイン株式会社が1951年に発売。今も人気のロングセラー商品。パインアメ、大阪の子ならほとんどが知っているキャンディ。パイナップルの缶詰やリアルパイナップルをなかなか食べることのできなかった世代にとってはきっとこの味がパイナップルだとマーキングされてる方も多いかもしれない。パインアメの穴の部分に舌先を突っ込んで徐々に穴を大きくして味わうのがパインアメあるある。

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【ま行】

萬田銀次郎

天王寺大原作、郷力也作画による「週刊漫画ゴラク」にて連載中の人気漫画「難波金融伝 ミナミの帝王」の主人公。
漫画よりも竹内力が萬田に扮した映像版がおなじみ。1992年より2007年までVシネ、映画版を含めて60作品GA製作され、竹内力の代表作となっている、1作目から見ていくとどんどん顔が変わっていくのがわかり、回を重ねるごとに銀次郎と竹内が完全に同化しているのがわかる。2010年からは新シリーズとして千原兄弟ジュニアが萬田に扮している。道頓堀の大黒橋はじめ、今は無くなってしまった90年代の大阪ミナミの風景が映像として残っているのが貴重。さらに香ばしいゲスト出演の芸人や役者陣にも今見るとワクワクする。

みさき公園

大阪泉南郡岬町にあり、2017年に開園60周年を迎え、2020年3月に閉園してしまった。
遊園地だけでなく動物園と水族館、夏場に開かれる大型プールも併設されていて、ひらかたパークと並んで根強く関西人に愛されていたレジャー施設。ちなみに開園以来走流続けているジェットコースターがあり、西日本では最古、日本でも浅草の花やしきのものに次いで二番目に古いそう。アニメ映画「じゃりン子チエ」にもテツとよしえ、チエの3人が遊びに行く遊園地として登場し、帰りの南海電車の場面は屈指の名シーンとして語られている。

もみない

物の味のないと言う意。もむないとも言う。
きゅうりとワカメの酢の物が出されるとこの言葉がいつも頭に浮かぶ。小さい頃、食卓に並んだこの酢の物を食べた父親が「この酢のもんもみないなぁ」と感想を言うと母親が立腹。「それやったらこれでいいやろ!」とポン酢をドボドボと。それで言い合いになった光景が焼き付いているからだと思う。今考えると塩もみしたきゅうりを一回水で洗い、その水切りが足りなくてきっともみなかったんやろなぁと推察される。
最近、カップ焼きそばを食べたときにその言葉が浮かんだ。湯切りが足りなかったせいだった。やはり水切り、湯切りはしっかりしたいもんだ。

【や行】
安モン

安く手に入ったもの、安く見える様。
関西人、特に大阪人は安もん自慢をすると言われる。「これなんぼやったと思う?」「1000円?」「ブーッ!300円でした!」「いやほんま?見えへんわ~」のやり取りで一喜一憂するおばちゃんのやり取りはリアルに目にする光景。いかに安く手に入れたか、私は買い物上手かというのが大阪人にとってはある意味ステータスになる。しかし、ことブランドもので安モン自慢をするとその立場は一変する。「いや、このヴィトンのんええやん!」「せやねん。なんぼやと思う?」「17~8万?」「ブーッ!1万5千円で買うてん」「え~ニセモンやろ」「ちゃうよ信用できる子が正規のルートで安してくれてん」という安モンからのニセモン、パチモン攻防となる。しかもそういうレッテルを貼られるとその人自体が「安モンの子(人)」と表現されたりする。安モンの塩梅を知らないとエラい目にあう。

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よろしゅうおあがり

ごちそうさまに対するアンサー言葉
諸説あるけれどお粗末様でしたという意味が強い。礼儀にうるさかったおばあちゃんが「ごちそうさまでした」というと必ず言うてくれてた。この響きがなんとも好きで、子ども心に全部残さず食べたことでエラくなった感じもして。これを聞きたくておばあちゃんのご飯を食べたかった部分もある。

【ら行】

ランディ・バース

元阪神タイガースの内野手として6シーズン在籍し、今なお阪神ファンから愛されている外国人プレイヤー。

現在はオクラホマ州議会の民主党の上院議員を務めているそう。阪神時代は掛布雅之、岡田彰布とともにクリーンナップを形成し、阪神21年ぶりのリーグ優勝へ貢献、導いた。
個人的に好きなエピソードは本名はバスなのだけど、もし故障したり怪我したりすると新聞では阪神バス故障などと書かれることを危惧してバースにしたという話。

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リッチやん

小金を持ってるの意。
中学生の頃、ツレが「今日はおごったるわ」と学食でパンを買ってくれたことがあった。その時、一緒にいた友人が「どないしたん?リッチやん」と言ってた。それまで「金持ちやなぁ」と言うことはあるけれど、使ったことのない表現だったので新鮮だった。「リッチ」という響きがアメリカ的でなんかちょっとカッコよかった。今もおっちゃんおばちゃんたちは使っているけれど、「リッチ」のイメージの地位はだいぶ低くなったような気がする。「バブルやわぁ」という表現も一時代築いたけれどどこか儚く、ちょっと小馬鹿にしてる感じがする。今は「セレブやわぁ」がよく使われてるが、こちらは妬み、嫉みが感じられる。



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